しばらく氏本農園ブログの更新ができずにいた。
この間いろいろな方が祝島に来られ、ついでに我が家の放牧豚を見学し、そしてこいわい食堂で昼食をとってくれた。
そのうちの何人かは私的居酒屋空間の練塀蔵で楽しい杯を酌み交わしたが、その余韻を大切にしたかったのだ。
印象深かったのは2組の外国からのお客だった。
おひと方は、デンマークのサムソ島のゾーレン・ハーマンセンさん。
サムソ島はデンマーク国内はもとより世界に先駆けてエネルギー自給を達成した北海に浮かぶ離島で、そのプロジェクトリーダーが農民のゾーレンさんだ。
自然エネルギー100%プロジェクトをスタートさせた祝島の参考になればと環境エネルギー政策研究所(ISEP)代表の飯田哲也さんの配慮で実現した来島だったが、今や時の人で大忙しの飯田さんとは別に、一晩早くゾーレンさんはISEPスタッフ本城さんの案内で先行して来島された。
おかげでその晩は練塀蔵でワインを飲みながら、ゾーレンさん、本城さん、こいわい食堂小女将(こかみ)の太佳ちゃんと私の4人で、ゆっくりと歓談することができた。 言語力がもっとも怪しい私に合わせたゾーレンさんの平易な英語と、本城さんと太佳ちゃんの随時通訳サポートのおかげで、あたかもぜいたくな個人レクチャーのようだった。(ほろ酔いのツーショット)
ゾーレンさんが何度も強調したのは、ライフスタイルを転換させるプロジェクトに取り組む際の、パラダイム・シフトとプライミングの大切さだ。
パラダイム・シフトは何も大げさなものではないが、現在の社会で支配的な思考体系や行動様式からの転換は、柔軟な頭脳と健全な批判精神が必要だ。
例えば、祝島では薪で風呂を焚いたり、こいわい食堂のようにかまどでご飯を炊いたりする家が少なくない。 島民がそれを時代遅れと恥ずかしがるのか、持続性のある先進的な生活様式と思うかで、そこから先の島興しの行動が大きく変わってくる。
プライミングは、地域住民に対して説明や学習を重ねて意識を醸成していくといった意味に私は受け取った。
薪で焚くお風呂の温かさや歯釜で炊いたご飯の美味しさをみんなが自覚し口にできるようになったとき、島の暮らしは新しい輝きを発するようになるだろう。
島民は薪を焚いて大釜でゆでたヒジキの美味しさにはすでに自覚と自信を持てているのだから、その理解はさほど難しくはないはずだ。
パラダイム・シフトもプライミングも地域社会が小さければこそ取組みやすい。
もうひと方は、フランスの映画監督ジャン・ポールとベアトリスのジョーさん夫妻だ。
「未来の食卓」というドキュメンタリー映画で、南フランスのバルジャックという小さい村の学校給食や高齢者用宅配食の有機食品への切り替えの取組みを通して農業・食と環境や子供たちの健康との関係を描いて、フランスではオーガニックブームを起こし、日本でも大きな話題になっている。(ジョー監督が太佳ちゃんにプレゼントしてくれたサイン入りDVD)
ジャン・ポールさんのクルーは「原発と遺伝子組み換え(GM)食品」をテーマに次作を考えていて、その一環で祝島に取材に来たのだった。 原発とGM食品をセットに捉える視点に独特の感性を感じる。
放牧豚の取材をきっかけに、こいわい食堂の地産地消メニュー(と全ての食材の生産者を記した御品書も)を気に入ってご夫婦で連日ランチを楽しんでくれた。
食事中の会話で、組織の小ささ(企業も地域社会もしかり)の利点に言及した。
それは前作「未来の食卓」実践の舞台が小さな村であったことからも明白だ。
村民の6割以上が所得税免除の低所得者が占める経済的には貧しいところが上関町と重なる。 そんな山村で村長は地域社会の小ささを活かして、有機農法への転換で村と子供の将来を切り開いていこうと、母親や慣行農法の農家たちと積極的に対話を重ねていく。
ひるがえって見て、上関町の政治的リーダーたちの思考や言語力のなんとお粗末なことか。
先日開催された上関町議会6月定例会の一般質問で、上関町周辺の自治体(議会)で「上関原発凍結の意見書」議決が増えていることについて、柏原町長は「地方自治のルール」という表現で上関町の政策選択に他市町村が干渉することに不快感を示した。
その答弁を引き出した質問は原発推進派の議員によるもので、彼らを支持する有権者グループもまた「上関原発に反対するヨソ者は来るな」と書いた大きな立看板を町内の幹線道路沿いに建てている。
自ら対話を拒み孤立化していることに気づいていない。
せっかくパラダイム・シフトやプライミングを実践しやすい、サムソ島やバルジャック村と似た小さな自治体なのに、自らが変革の機会を放棄し、未来への扉を閉ざしているとしか思えない。
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