氏本農園・祝島だより

万葉集に詠われ歴史豊かな自然あふれる、万葉浪漫の瀬戸内海「祝島」での暮らしを氏本農園からお伝えします

営農歳時記

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『収穫の秋』

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 今夏、氏本農園は旱魃の影響をまともに受けた。
サツマイモはマルチフィルムの後処理(焼却)の環境負荷を避けるためマルチ被覆をしていなかったので壊滅的だった。

 そんななか豚が引っ越していなくなった放牧地では、豚が食べ残した種から自然発芽したカボチャやトマトが旺盛に生育し、見事なカボチャが収穫どきを迎えている。
 完全な無農薬、無化学肥料栽培というだけでなく、農業機械を使っていないので化石燃料にも全く依存せずに育った完全な有機野菜だ。
 本来は間違いなく豚の側に優先収穫権があるのだろうが、我が家の食卓向けだけでなく、いつも我が家にお刺身などの差し入れをしてくれる近所の漁師さんにおすそ分けすることにして罪悪感を薄めて収穫することにした。

 一方、我が家の庭の渋柿が2年ぶりにたくさんの実を着けた。
昨年はたったの4個しか実が着かなかったので、柿木の働き振りはすごくメリハリがきいている。
練塀蔵の建築と同じ時期に植えたと聞かされていたから樹齢は100年以上経っているのだろう。私が物心ついたときにはすでに今の樹姿だった。

 頻繁にそばを通るタミちゃんが「今年は他の家の柿の木はほとんどが裏年で、柿が少ないけえ渋を抜いたらよう売れるで」と貴重な島内市場動向を教えてくれた。
 熟すまえにもいで茎を抜き、抜いた穴から一滴ほど焼酎を注いで数日間寝かせると渋が抜けるのだが、島のオバチャン10人に聞けば10通りの渋抜き方法があって、混乱してしまう。

 問題はしっかりと渋が抜けるかどうかだ。
上手く抜けなかった場合は、タミちゃんから「4年も農業大学に通っちょったのに、柿の渋もよう抜かん」という評価を、次の渋抜き機会が巡ってくる表年の2年後まで甘んじて受ける覚悟をしておかなくてはならない。

 収穫した実を数えると250個ほどあったので、日頃何かとお世話になっている方々におすそ分けするには十分な数だ。

『朝くん』

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 朝くん、「はじめ」くんと読む。 胡桃沢朝くんはチェーン・ソーを担いで祝島に渡ってきた。
祝島の対岸、上関原発建設予定地である田ノ浦湾の埋立て阻止行動を祝島の住民とともに続けているシーカヤック隊つながりだ。
 愛知県で父親と林業を営んでいて、農閑期を利用して祝島や田ノ浦の実情を体験するとともに、原発に依存しない一次産業を活かした祝島の暮らしづくりに少しでも役立ちたいと、やってきてくれた。
 
 滞在中、雑木に覆われてしまった耕作放棄地の再生に取り組む氏本農園の家畜たちのことを聞きつけて、3日間手伝いをしてくれた。
 雑木が生えたままでは地表まで太陽光が届きにくく、土地の生産力が上がらない。 雑木を伐採することで地表にさまざまな植物が生えてきて生産力が回復し保水力も改善する。
 伐採した雑木はヒジキをゆでる際の薪になるので、島のオバンたちからも感謝される。

 朝くんは、国内の林業が衰退することに危機感をもっていて、新しい林業経営を模索している。
祝島滞在中、毎晩我が家の練塀蔵で酒を飲みながら、家畜の林間放牧など畜産を組み合わせた新しい林業経営の可能性などに話が弾んだ。
 上関原発問題のおかげで、祝島ではこんな活きの良い若者との出会いに恵まれる。

『口蹄疫問題と離島』

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 宮崎県は今回の口蹄疫発生で、肉牛生産の根幹を支える種雄牛のほとんどを殺処分せざるをえない痛恨の極みに至ってしまった。
この事態を受けて隣の鹿児島県が喜界島などの離島地域に基幹種雄牛を緊急避難させたことは「離島」の持つ価値を再認識させる出来事だ。

 私が離島で放牧畜産に取り組んでいるのも、海で隔離された離島の不便さと表裏一体の家畜衛生面の安全性や、島内の農水産業副産物など未利用資源を飼料として利用することによる、資源循環も含めた安心感などが大きな理由だ。
 鹿児島県のとった種雄牛の避難措置は我が意を得た思いがするし、口蹄疫が終息してもずっとその島で放牧しながら種雄牛たちを島の草資源で元気に育ててやってほしい。

 離島の農水産業は、その高コスト体質や生産効率の悪さなどの欠点で生産物の市場評価が削られてしまいがちだ。
 しかし離島型生産の大きな価値は平時の不便さを逆手にとって積み重ねてきた、工場的生産に比べて完成度の高い地域内循環性や生物多様性(生態系)に支えられた安全や安心なのではないだろうか。

 産業に限らず暮らしも、平穏が続いているときは離島の不便さや運賃コストなど負の面に多くの目がいきがちだ。 利便性を高める究極の手段として、ついには橋までかけてしまう。
 あげくの果て、住民が願いもしない不都合なモノまでその橋を行き来して、橋のなかった離島時代には予想しなかった問題を地域が抱え込むことになる。

 例えば我が上関町に関して、長島が上関大橋で本土と直結したことで人口は増えるどころか流出は加速し、その尻拭いとして今度は上関原発を誘致し、その結果長期にわたって地域社会の分裂という深刻な問題を抱え込んでしまい、便利さゆえの閉塞感にもがき苦しんでいる。

 口蹄疫問題を機に、改めてみんなで「離島」について考えることは、これからの日本にとって得るものが少なくないはずだ。

『口蹄疫問題』

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 宮崎県の口蹄疫問題が深刻さを増してきている。
飼育している牛や豚全頭を殺処分せざるをえないことは、法に則った措置とはいえ、飼い主やその家族、従業員にとって断腸の思いだ。
 程度の差こそあれ家畜への愛情がなければ畜産業には従事していない。 経済的なダメージもさることながら殺処分による精神的ダメージはずっとトラウマのように尾を引くはずだ。

 軽々しくは言えないことで慎重に確かな根拠を示す必要があるので、あまり報道されてないが、そもそもの感染源や感染ルートが気になる。
 突然に宮崎県で口蹄疫ウィルスが新たに発生・誕生したのではなく、ウィルスの型は香港や韓国で既に発生しているものと同型らしい。
 いつ誰(何)が宮崎県に口蹄疫を持ち込んでしまったのか。

 10年前にやはり宮崎県と北海道で発生したときは、肉牛の飼料として輸入した稲ワラが被疑者だったが、結局は断定に至らなかった。
 一般市民からすると、作付け制限するくらいお米を作っているはずの日本がどうして稲ワラを輸入するのか不思議かもしれない。

 国内の水稲の収穫方法は生産コストを下げるための作業効率化、機械化によって、実だけ採集しながら同時に茎は刻んで田んぼに撒き散らしていく方法が多くなった。
お米は作っても肉牛用飼料になる稲ワラが必ずしも生産されることにはならないのだ。

 稲作農家を単純に非難できる話ではない。肉牛農家のために稲ワラを残す作業体系にして稲ワラを生産しても、輸入稲ワラの方が安いので買ってもらえない。 稲作農家に輸入稲ワラと同等の、自分の労賃が出ない価格の国産稲ワラ生産を強要することはなかなかできない。
 肉牛農家側にも、輸入牛肉とのコスト競争、国産牛肉の価格低迷など飼料コスト節減のためには、より安い輸入稲ワラを使うという言い分が出てくるだろう。

 平穏に情勢が推移しているときは確かに経済的には最適の選択が可能だろうが、異常事態が発生したとたん社会全体が大きなダメージを受けてしまう。
 今回の口蹄疫でいえば、全頭と畜の補償金数百億円は肉を食べないベジタリアンも含め消費者全体が負担する。 また補償を受けても生産者の精神的なダメージが癒えるわけではない。 畜産を主産業とする地域の住民も大きな痛手を受けることになる。

 自らの経営(暮らし)を守るために世界全体を市場とみなす、いわゆるグローバル思考が不可欠との主張が大企業を中心に主流を占めているが、それだけの視点でグローバル化を強め、足元(国内)の「つながり」が希薄になれば、地域社会の豊かさを支える真の暮らしの安全性や安心感が損なわれていく。
 口蹄疫に関して言えば、この「つながり」とは、稲作生産者と肉牛生産者といった生産者同士のつながりとかというより、もっと根源的には生産者と消費者のつながりではないだろうか。 

 上京した際の勉強会(農水省OBのM氏主催)メンバーのお一人、現役農水省課長S氏の先日のメールには「世の中が不透明化するほど、身近な資源をキチンと使い、しっかりした生活を構築することの大切さが増している」とあった。
 食の分野に限らず、電気などエネルギーも含めた暮らし全体に言えることだ。

 口蹄疫問題からグローバル思考〜グローバリゼーションの光と陰が見えてくる。 

『放牧牛の出荷』

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 放牧豚の陰に隠れて目立たない存在ではあるが、氏本農園では牛たちも重要な役割を担ってくれている。

 足が短い体型や鼻耕といった豚の特異な能力は、耕作放棄地の地面を掘り返すのに適しているが、上に伸びた雑木の葉や葛(くず)の葉を始末するには哀しいかな届かない。
 その点で鼻先が柔らかく鼻耕といった習性は持っていないが、足と首が長い牛は豚の届かない地上部の雑草の処理を得意としているので、耕作放棄地対策としては豚と牛は互いの長所を活かして相互補完できる関係なのだ。
 
 その牛たちの1頭、ジャージー種のオスが今回出荷されていった。
茶色の体毛や大きな目が印象的なやんちゃ坊主のような風貌で、毎日差し入れを持ってゆく島民の固定的ファンが何人もいた。(島内には多数派豚ファンと少数派牛ファンがいる)

 生後直ぐに、小さくて家畜市場で買い手がつかずに島にやってきたこの牛を、私は最近まで「チビ」と呼び続けていたが、実習生の太佳ちゃんが、私の不在中に「ジャック」という今どきの若い女性らしい愛称をつけ、帰島してみると「ジャック」が既成事実化してしまっていた。
 ジャージー種で「ジャック」という呼び名は「チビ」より確かにカッコいい。 最後はこの名前でみんなに見送られていってよかった。

 ジャックの牛肉はヒレ、ロース以外の部位は放牧豚のお肉と合挽きされてソーセージやハンバーグ用挽肉などに加工され、島の朝市などで島民の前に再登場する予定だ。
 ロースの一部をタタキにしてみたら、実習生の太佳ちゃんは「わたし、お肉はほとんど食べません」と言いつつ完食した。


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