氏本農園・祝島だより

万葉集に詠われ歴史豊かな自然あふれる、万葉浪漫の瀬戸内海「祝島」での暮らしを氏本農園からお伝えします

営農歳時記

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 今年はビワの障害果が多く商品率がかなり低くて、ビワ農家は苦しい状況だ。 4〜5月の暖冬の影響らしいがそのメカニズムは解明されていない。 これで上関原発が建設されれば、大量の温排水で海水温が上昇するのは確実だし、地域の温暖化に拍車がかかるなら、ビワへの深刻な影響が今から懸念される。
 またカラスの食害も例年以上に多い。 氏本農園のビワもカラスの食害や子豚の出産で、まともな収穫はできずに終わりそうで、例年のように通販のご案内はできなくなった。
 
 結果的に商品として出荷できないビワの実が、豚たちに食べさせてと、毎日大量に提供される。
提供してくれる農家のオバチャンたちは「豚ちゃんたちが食べてくれるけぇ、棄てんで済み助かるで」と、商品にならない口惜しさを胸に押し込めてはいるが、私としては複雑でとても素直に喜べない。

 そうしたヒト側の思いにはお構いなしに豚たちは大好物の差し入れで大喜びだ。 とりわけ、子豚を出産したばかりの母豚には甘い水分たっぷりのビワは願ってもいないありがたい差入れだ。 おかげでその後の子豚たちの成長も順調である。
 また昨年生まれの純祝島産放牧豚もビワをたらふく食べながら生活して昨日出荷された。祝島の恵みをお腹いっぱいに食べて、自分自身も祝島の恵みが身体の隅々まで詰まっているような放牧豚なのだ。 

 こんな豚たちのおかげで飼い主の私までもいろいろな豚グッズのプレゼントをいただく。
先日は金子シェフの奥様のノリコさんや友人のテラダさんから豚や牛の形のクリップが届いた。
 書類をクリップする側だけでなく、クリップされた書類を受け取った側もきっと微笑みがこぼれてくるにちがいない。
 プレゼントをしてくれる方の細やかな配慮とともに遊びココロも伝わってきて、うれしさだけでなく何だかとてもリラックスしてくる。

 また豚の親子を島外から見学にきてくれたキムラさん(お母さんと娘さん)からは豚がデザインされた風鈴をお土産にいただいた。
 さっそく練塀蔵の入り口に吊り下げてみたが、雰囲気的にもぴったりで、涼しげで澄んだ音色だ。
軽やかな音色は、放牧豚たちの泥まみれで重量感のある雰囲気とイメージは合わないものの、とても耳に心地よい。
 練塀蔵への出入りの際にわざと頭でぶつかっては鳴らして音色を楽しんでいる。

それぞれのみなさん、どうもありがとうございました。

『子豚の去勢』

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 生まれて10日が過ぎ、親子ともに健康に生活しているし、好天が続いているので、雄子豚の去勢をした。
一人で去勢作業ができるように、漁師さんからもらったタコツボを改造した自家製の去勢台を使っている。
 
 小さくても初乳からの免疫力や殺菌力が持続している間の方が安全だという子豚にとっての都合のほか、時期が遅れるとこの去勢台に収まらなくなるし、なにより捕まえるのが難しくなってくるというヒトの側の都合もある。。
 ただ、子豚は仰向けにされて4本の脚をゴムひもで縛られるので、おとなしくというわけにはいかない。
母乳の不足を補うために子ネコ用の哺乳ビンで牛乳を与えていたが、この去勢作業によって、雄子豚と私の信頼関係は一時的に崩れてしまう。
 母豚も子豚の異常なワメキ声に落ち着かないので、エサ(今の時期は傷ビワ)をたくさん与えて気をそらしておく。

 去勢作業自体は1頭で10分もかからないし、痛さも含めて去勢のダメージはそれほど無いようだが、作業中ずっとワメキ続けるので、そちらに体力を使ってしまい、いつもは早送り映像を見るようなチョコマカした動きの子豚も、さすがに去勢直後は活きが下がる。

 母豚も解放された子豚の臭いを嗅ぐとお尻あたりの消毒薬(イソジン)臭が強くて、いつもの子豚の臭いと違うため怪訝そうにしている。
 しかし翌日には子豚はもう哺乳ビンをせがんで寄ってきて、子豚たちの過去を引きずらない性格が好きだ。

 一方、未熟で母豚から離して人工飼育している2頭は、我が家の庭で放し飼いされていて、もっぱら犬のマキが子守役を務めて、私は農作業で家を空けているのだが、入れ替わり立ち代りにいろんな人たちがやってきて可愛がってくれている。
 ここ数日やってきたオバチャンたちに流行っているのが「どっちが親豚に間違えられるじゃろうかゲーム」らしい。
 地べたに並んですわって、子豚が母豚とまちがってオッパイを探しに鼻で突っついていった方が勝ちなのだが、勝った方、負けた方どちらが喜ばしいのかはよく判らないゲームだ。
 負けたオバチャンが勝ったオバチャンを「わしの太ももよりあんたの太もものヤオい(柔らかい)感触が親豚の腹のようなんじゃろねぇ!」と讃えていた。

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 好天の23日をもって、出産から5日目の子豚たちに豚田兵トレーニングを開始することにした。

 この間、出産の翌日と翌々日に他の子豚の半分程度の体重しかなかった虚弱な子豚2頭が、初乳を飲ませるため母豚と一緒にしている間に、母豚の下敷きとなって短い生涯を終えて14頭になってしまった。
 初乳を飲ませないと免疫が移行せず早晩死んでしまう可能性が高いし、初乳を飲ませようとすればこのようなリスクが伴うので、如何ともしがたい。
 
 第1クルリは200kgくらいに体重が増えたとはいえ、1頭の母豚の乳量でこれだけの子豚を満足させられるのは到底無理だ。
子豚たちはすぐにオッパイを欲しがって四六時中母豚にまとわりつくので、母豚も心身ともに安まるときがないだろう。
 子豚たちは乳首をさがして母豚の後ろ部分にまとわりつくので、ついつい踏んづけられもしてしまう。
現在、踏んづけられてビッコをひいている子豚と小さくて虚弱な子豚の2頭は、母豚と離してミルクだけで私の手元において人工哺乳で育てていて幸いにも元気だ。

 母豚の第1クルリに従って放牧地に初出動した子豚たちはさっそく母豚を真似て鼻耕をするものの、すぐに飽きて寝てしまう子もいる。
まだ当分はオッパイを飲むか寝るかの生活が時間の大半を占める時期なので無理もない。

 放牧地で泥まみれの母豚の乳首にむしゃぶりついているこれまた泥まみれの子豚の光景は放牧豚の代表的な光景だ。このような子育て環境で、これまで1頭も下痢をしたり体調をくずしたりする子豚はいなくて、われわれヒトの衛生概念は吹き飛んでしまう。
 そんな講釈はさておいて、子豚たちのいっせい討ち死に的昼寝姿は無条件に心をなごませてくれ、いつまで見ていても飽きない。

近くの耕作放棄地では1月下旬生まれの先輩子豚たちが一人前の豚田兵として元気に頑張っている。

『2度目の出産』

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 第1クルリが昨年に続いて2度目の出産をした。
 予定日ぴったりの未明から早朝にかけて4時間ちかくを要したが、全頭生きて生まれてきた。
最初のお産との違いはなんと言っても生まれた子豚の頭数で、最初のお産頭数5頭だったのに16頭も一度に生まれてきた。
 最初の授精は私が人工授精したが、今回は今冬に県畜産試験場から払い下げをうけた若い種雄豚による自然交配によるものだ。

 前回より大きいお腹だったので、大事をとってキシタさんの使わなくなった納屋を分娩房代わりにした。
 放牧飼いの場合、お産の直前には乳腺が腫脹して乳頭が赤くなるだけでなく、イナワラや枯れ枝を屋外から引き込んで分娩用のベッドを作り始めるので、経験の浅い飼い主には判りやすくてありがたいサインだ。

 お産に立ち会っていると、これでもかこれでもかと分娩が続き、早く生まれてきて身体が乾いてきた子豚たちは次々に母豚の乳首を見つけて吸い付いていく。
 後に生まれる子豚ほど体格も小さく、体重も軽くなってゆく一方で、母豚の乳首の空きも少なくなって心配だ。 
クルリの乳首は16しかないので「もういい加減にしないと乳首が足りなくなるぞ」と本気とも冗談ともつかない声掛けをするが、なかなか打ち止めにならない。
 最初の方の子豚は出生体重が1.5kgくらいだったのに、最後の方に産まれた子豚は700g程度と体力差が開いてきて、母豚にそのまま付けていても乳首争奪戦に負けるのは明らかだ。

 飼い主としても、保父となって小さな子豚たち数頭には人工哺育の覚悟を決めなければならないのに、その心構えも哺乳ビンも用意できていない。 子牛用哺乳ビンは手元にあるが、子豚よりも哺乳ビンの方が大きい。

 あまりの頭数に、識別のため子豚の背中にマーカーで通し番号を書いていったが、無意識に不吉な「13」を欠番にして番号をふったようで、結果的に17まで数字がいったため、面食らっていた私は十分な再確認もせずに最初のうちは17頭だと勘違いしていた。

 祝島という離島のすばらしい点の一つは、子豚用の哺乳ビンをどうするかなど、ありえないような相談も含めて、もろもろの相談窓口となるタミちゃんという存在だ。
 朝5時というのに携帯電話に即座に応答してくれて、「待ちょりませぇ、ネコ用の哺乳ビンを見つけて持って行っちゃるけぇ。」と素晴らしいアイデアを思いついてくれて、10分足らずで哺乳ビンを届けてくれた。しかも牛乳つきで。

 その際に当然の成り行きで、お産の顛末とあわせて17頭生まれたという勘違いの話しをしたのだが、そのタミちゃんはもう一方では「島内口頭かわら版編集長」の要職についているため、島内全域に「氏本の豚が17頭の子豚を産んだ」という誤報が瞬く間に配信されてしまった。

 後刻タミちゃんに16頭だったことを訂正報告したが、それ以降のタミちゃんコメントは「氏本の息子は畜産大学まで出ちょるのに、若葉マークの若い種雄豚より種付けが下手くそで、数も10以上はまともに勘定できんのじゃぁ」という散々なものになってしまった。

 そんな頼りない飼い主を心配しつつ、続報の取材も兼ねて「子豚はちゃんと育ちょるかねぇ」とタミちゃんは毎日何度となく顔を出してくれるし、そんな飼い主なら自分の食べる仕度もできんじゃろうからと、お刺身などを差入れしてくれるので、ますます頭の上がらない存在になってくる。

 結局、子豚たちは母豚の初乳効果が大切だという専門家のアドバイスで、2群に分けて母豚に付け母乳を飲ませたり、母豚から隔離して人工哺乳したりという半日交代の生活を送ることになった。
 また、枇杷の収穫が始まっったこともあり、タミちゃんの広報効果もあって例年以上に傷ものの枇杷が、母豚の産後の体力回復用にと寄せられていて、母豚にとってはすこぶるありがたい差し入れとなっている。
 
 このようにして豚の親子はタミちゃんはじめ島民の温かい応援のおかげで順調な産後の経過をたどっていて、早くも2日目にして子豚たちは母豚の食べている枇杷にちょっかいを出してきている。

『中国・寧夏』

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「祝島だより」が半月ちかく手つかずになっていた。
縁あって日本国際協力財団のお手伝いで、中国内陸部で内モンゴル自治区の下に位置する「寧夏(NINGXIA)回教自治区」にしばらく渡航滞在していたためだ。
 寧夏回教自治区といっても説明がややこしくなるので、私の知人に急な連絡ができて「中国内陸部にいるので連絡がつきにくい」と留守番電話に伝言しておいたら、広島県あたりの山間部だろうと思っていたそうで、やっかいだ。
 そういえば「中國新聞」の名を出すと聡明すぎて「China News」と勝手に勘違いしてこんがらがる人もいて、「国内紙の」という形容詞をつけたりもする。

 正確な用務は「寧夏回教自治区牧畜農家支援プロジェクト」という。 寧夏の回教徒の多い地区の経済的な底上げを肉牛生産によって支援するというのが目的だ。
 現在の祝島での取り組み自体が島民の経済的精神的自立をめざしていて、自分たちが完全には自立できていないのに何で他人の自立支援なのかというジレンマがあった一方で、北海道在住中に経験させてもらった際の授業料をまだ十分には社会に還元していないだろう、というご指摘も何人かの先輩からいただいていた。

 引き受けた一番の理由は結局のところ、「社会主義市場経済」という超柔軟な概念を生み出し「経済特区」を作って飛躍的な経済成長を続けている現実路線の国とその国民への個人的好奇心だったといっていい。
 そしてその現実路線のもと経済成長の過程で国内的格差〜内陸部と沿岸部の地域格差、農村部と都市部の経済格差〜が深刻化していると報道されている。
 内陸部で農村部の寧夏回教徒の農村にはそれらの格差が重層的に押し寄せていることが推測された。それは今の日本でも祝島を含む過疎地域が直面している格差と同質もものではないのかと思った。
 社会主義国か民主主義国かを問わず市場経済を標榜する宿命なのだろうか。今の祝島が所属する上関町はその経済格差につけ込まれる形で上関原発建設問題に揺れている。

 確かに地域間格差は経済格差を生み、それが住民間の富裕層と貧困層の所得格差につながっていることはよく指摘されるが、金銭的貧困と精神的貧困は必ずしも一致しないことは、祝島の人々の暮らしが実証している。
 そしてたかだか一週間程度でしかなかった今回の寧夏滞在でも、特に回教徒農民の生活に祝島島民の暮らしと同じ趣(Taste)が伝わってきた。これから年数回の頻度で寧夏を訪れることになるが、祝島と重ねて見ることが増えてきそうな予感がする。

 寧夏での見聞録はおいおい祝島だよりに載せることとし、先ずは帰朝報告とします。

そうそう、留守中の豚や牛の世話は島内仲間のクニヒロくんやヤマトくんが親身に世話をしてくれて、隣のハヤシさんのオバサンには「長ちゃんがおらんときのほうが豚も牛もよう肥ちょるで」と言われた。 実はこんなことをきっかけにして家畜の飼育仲間を増やしていこうという下心がないわけでもない。


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