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クリスタルな氣分

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 ついに満を持して、ピアノアーティスト 内藤優花音さんによる、珠玉の作品6曲を入れた初めてのCDが完成しました。まずは、心からお喜びを申し上げます。

 「クリスタルな氣分」と題されたアルバムには次の曲が並んでいます。
  ・月明かり
  ・銀河に架ける橋
  ・悲愁円舞曲
  ・憧れに目を向ける
  ・雪
  ・虹の彼方へ行きたい

 タイトルのとおり、月の光、銀河、憧れ、雪、虹など煌めくものが題材として取り上げられています。悲愁は心の煌めく想い?
 いずれも自然や古い記憶のエッセンスからインスピレーションを得て造り出された
曲とのこと。どの作品からも、あるがまま、感じたままの気持ちが伝わってきます。
 その気持ちは、ジャケットの、青空を映し出した水たまりのように、作曲者がふと感じた凜とした空気感、そのときの息を呑んだ瞬間の気持ちであり、それが、クリスタルに閉じ込められ、聴いた瞬間に私たちの目の前で解き放たれ、広がるのです。

 たとえば、最初の「月明かり」が鳴り始めると、私たちはもうすでに月の光が降り注ぐ世界にいます。(人によっては月の妖精の姿まで見える世界かも…。)
 クリアな音の粒が舞い降りる中で浮かび上がってくる、どこか懐かしく、忘れていた思い。それが、心に、淡く、優しく届きます。

 優花音さんが「人が感動するとき、人は神に、宇宙につながっているのではないかな、ということ、そのとき、私達の魂は「透明」になっていると思う。透明ってことは「自」と「他」の境がなくなるってこと」と言われるように、このアルバムを聴くと、いつのまにか、境界が消え、開かれた世界の中にいる自分、クリスタルな氣分を共有している自分に気がつきます。特に、ブックレット中「銀河に架ける橋」の詩を読むと、曲とともに、自己と銀河がひとつになる想いまで感じることができます。
 こんなふうに、スッと心に入ってきて、受け入れやすいというのは、描かれる世界が、私たちのいる世界と同じものだからだと思います。ただ、描かれる世界は、都会の喧噪や余裕のない仕事の波に呑み込まれていて、私たちは普段気付かないのです。しかし、そこには、実は美しさや感動があるのです。

 もうひとつは、すぐに心に飛び込んでくる簡易平明なメロディにあります。
 複雑で音の洪水のような曲が氾濫している現代、これほど簡潔で澄明なメロディラインが生まれてきたことは奇跡のようでもあります。
 このアルバムには、かつて、モーツァルトが晩年に達した音世界のような、古典的な均整と調和のとれた至純の味わいがあります。
 メロディについて、優花音さんは、「木々の微妙なディテールをボーっと眺めていると、これまで気づかなかった色合いや質感に驚くことがある。そこから派生する感覚や感情に目を向ける、昔の思い出がふっと思い出されることもある、最近の出来事について、思いを巡らすこともある。そんなことをしているうちに、メロディが閃くことがある。(中略) 閃いた曲って、ファースト・インプレッションがベストだったりする。」と言われていることからも、おそらく、作曲者に脳裏に閃いたメロディは、原初の魅力を損なうことなく、純度を高め、磨き上げられたのだと思います。

 「銀河に架ける橋」でも、メロディは、歌詞をつけてもいいくらい、歌心に溢れています。ピアノ曲というと、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、さらにはシューマン、ショパン、ドビュッシー等々数多くの作曲家の作品が思い浮かびますが、優花音さんの曲は、そのどれとも異なる個性を持っています。だから、作曲家の誰々風という言い方が当てはまらないようなオリジナルな魅力があります。
 それは、私たちが住む世界と切り離せない喜びや哀しみの糸が織り込まれているからだと思います。日本の情緒、情感と切り離せないところで生まれてきた曲だからでしょう。
 それから、この曲以外でもそうですが、随所に聞き取れるのは、響きと響きの絶妙な間というか、休止の見事さです。この音のない部分にも、描かれている空間の広がりと思いの深さをふっと感じます。

 優花音さんのブログを拝見すると、作曲者の思いとともに、曲の生成過程が克明に記されていて、心に降りてきた曲が、姿かたちを成し、曲に昇華していくまでがとてもわかりやすく、惹きつけられます。
 「悲愁円舞曲」もその記事の中で登場してきた曲のひとつでした。当時、曲の持つ、ドラマ性、懐古的なイメージ、情感豊かな楽想は、このタイトルにぴったりだと感じられました。ワルツというとショパンなどの曲を思い浮かべますが、どこの国にも生まれてこなかったオリジナルな曲という意味合いもあって、円舞曲というタイトルこそ相応しいと思えます。

 「憧れに目を向ける」は、少し趣がかわり、ブリリアントなフレーズと優花音さんの演奏の妙技を楽しめる曲です。煌めく音の連なりは、憧れという光源が発する光の象徴でしょうか。人それぞれ様々な人生を辿る中で現れては消え、また現れる憧れという存在。それは、人の原動力でもあります。この曲はその憧れとそれに目を向けようとする主人公の歩みを温かく見守る優しさや決意を感じさせる素敵な音の詩です。
 何より、曲を貫くワルツ調の流れが前向きさを感じさせてくれて秀逸です。

 「雪」は、魅力的な曲の詰まった当アルバムの中でもとりわけ大好きな曲です。
 この曲は、パステル画のような淡い作品ですが、そこに込められた繊細な情感の豊
かさ、隠し味的なエスプリ(霊魂を感じることも含めて)、響きの妙、魅力的な世界観、そっと囁かれるような想い、光と影の交差等々、古今の大作曲家の名品にも比すべき究極の完成度です。ピアノの音色で時空というキャンバスに描かれた素晴らしいアートです。
 
 「虹の彼方へ行きたい」も簡易平明、童心を綴ったような曲で、古典的な均整と調和のとれた至純の味わいがあります。そこに、ロマンティックな香りや哀しみのエキスが微妙に塗されていて、アルバム最後に配するに相応しい出来映えの曲です。
 全体通して感じられる絶妙の間、語り口、歌心の素晴らしさはここでも随所で感じられます。決して性急でない曲は、心の襞にふれるような優しさを内包しています。

 聴いてきて、作曲家のアウトプットが、こんなにストレートに心へ到達するのであれば、「あるがまま・感じたまま」はまちがいなく、聴かれるすべての方にも届くことと思います。ひとつのコンセプトのもとに纏められたアルバムの写真、ブックレットのイラストや詩も、6つの星の輝きとともに永く心に留まるものと思います。

 前に、優花音さんの演奏会では不思議と心と身体が軽くなる体験をしましたので、
このアルバムが手元にやってきたことを思うと、何かとても嬉しくなります。
 聴くほどに、きっと、これまで自分が抱いていた “気” が、タイトルの字のように
 “氣” にかわっていくだろうと思えるからです。 

この記事に

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    このアルバムのPR動画を見てきました。ファブリスさんの適切なご解説に大首肯です。自然からの素朴な音のスケッチ、確かに「洪水のごとき音の氾濫」の中で光っているように感じられました。

    私も「雪」が一番いいなと思いました。

    [ 佛生山孝恩寺 ]

    2018/6/27(水) 午前 5:28

    返信する
  • favrissさん

    深く鑑賞してくださった上、ブログ記事にまで書き起こしてくださり、ありがとうございます!
    とってもとっても光栄です!

    favrissさんの記事をじっくり拝読し、私自身が言葉に落としきれなかったところまで文章にしてくださり、私自身が「はっ」と気づかせていただいたことがたくさんありました。

    大変光栄なこちらの記事をFacebookなどで紹介させていただきます。
    いつも本当にありがとうございます!!!

    内藤 優花音

    2018/6/29(金) 午前 5:28

    返信する
  • アバター

    佛生山孝恩寺さん、こんばんは。
    動画ご覧いただきありがとうございます。
    とても素敵な演奏だったことでしょう♪
    このCDに対する聴き方、捉え方、共感いただける方が多いのではと思います。古典的だった、ロマン派的だったり、あるいは印象派的だったりと、作曲の才能溢れる優花音さんの作品ですが、共通しているのは、極めて明快な残像を心に残してくれることと感じました。
    どれも素敵で、中でも「雪」は格別な曲と思いましたが、佛生山孝恩寺さんも同じように感じられたんですね♪

    favriss(栗鼠)

    2018/7/9(月) 午後 11:38

    返信する
  • アバター

    内藤 優花音さん、リコメ遅くなってすみません。
    更新も訪問もできずにおりますが、リコメなりとも、と思いまずは。
    今回の記事は、わたしなりの感想ですので、聴かれる方により、様々な魅力を捉えられると思います。そうした多様な魅力を供えた作品だと思います。わたしの場合、オリジナルなそれぞれの作品に共通して感じたのは、明快性とそれゆえに心にストレートに飛び込んでくる旋律線の見事さでした。それは現在のむしろ膨れあがった音の騒々しさの中にあって、調和と均整を保った見事な曲ばかりです。これからもたくさんのオリジナル曲を世に送り出していただきたいと思います。
    ご紹介いただきありがとうございます。
    ひとりでも多くの方に聴いていただければと思います。

    favriss(栗鼠)

    2018/7/9(月) 午後 11:48

    返信する

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