Blue Willow Haiku, Etc...

長いことさぼってましたが、また復活させます

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今年担当させていただいている同人集の鑑賞文です。五月号掲載のものをご紹介。
 
 私は直木賞作家の東野圭吾という作家のファンである。今回はテレビドラマにもなった物理学者を主人公にした連作ミステリーの題である「爆ぜる」「燃える」などから案を得た「動詞分類」で天為集の作品を鑑賞してみたいと思う。 
  どの家も湖に向き合ひ大根干す      森  覚
  ふんはりと生きる力や雪ばんば      津田とわ子
  語部は嬶座にどかと炉を開く       中村青路
 俳句は遠くにある日常を「映す」。ハイテク産業のクライアント先でvisualize(可視化)という言葉を良く聞くが、この表現に最も適しているのは実は俳句ではないかとさえ思う。私は東京の二十三区で育ったので、大根を干している景色はテレビか写真でしか見たことがない。しかし湖に向き合って低い軒を並べる家々の守ってきたものがはっきりと心の鏡を通じて見えた。少し哀しい元気を感じたのは大根を干す背中が若い人のそれではないように思えたからか。我が町サンフランシスコに最後に雪が舞ったのは一九七六年だそうだし、井上靖の小説の題名という以外には、雪ばんばに関する知識はない。そんな私でも雪催いの空を飛んだ気分になれた。風に身を任すことの心地よさを体感した。少し不安も覚えたが、一匹で飛んでいる訳ではないから大丈夫だと思った。数年前に初めて遠野に行って「どんと晴れ」で終わる語り部の話を聞いた。CDも買ったが、残念ながらほとんど理解できず宝の持ち腐れとなっている。私は炉のある暮らしをしたことはない。が、嬶座にどかと開く女たちの冬のみちのくの炉の火の暖かさを感じた。その空間が共有できた。天井の鉤から釣り下がる鉄瓶が見えた。 
  放鷹や雑兵となる城鴉          藤田えみ
  古文書にこまごま記す猪の害       湊 冬子
  数ふるやいくさの頃の手毬唄       松本悦子
 インターネットで視聴しているNHKの大河ドラマの影響かもしれないが、歴史小説を読むことが増えた。作家自身も体験したことのないはずの時代が「示す」ものに妙に惹かれるようになった。城を守るという気持ちは鴉にもあるのかもしれない。命を落とす可能性が高い雑兵としてでも、将の眼を持つ鷹と共に戦おうという心か。シリコンバレーに一九七十年代から広大な敷地を持つI社で、猪が山から下りて来て芝生を荒らすので困っているという話を聞いた。古文書に細々記された猪の害は深刻な悩みだったのかもしれないが、何だかにんまりとさせられた。猪に右往左往している村の長たちに妙な親近感が沸いた。童話やわらべ歌には残酷な内容が含まれていることも多いという。幼女が天真爛漫な笑みを浮かべながら歌う手毬歌には、落武者の首でも取って褒美をもらおうという歌詞が入っているのかもしれない。
  旅の白汚さずもどる憂国忌        石川渭水
  針山の寂しさうなり一葉忌        熊谷佳久子
  芭蕉忌の近江につつく軍鶏の鍋      米田清文
 アメリカ人はリンカーンやキング牧師の誕生日を祝うが、日本の季語は忌日を尊ぶ。次の世は蝶になって戻ってくるかもしれないという輪廻の考えが日本人の心を「震わす」からだろうか。切腹という最期を選んだ三島由紀夫の忌に真っ白な旅装を汚さずに戻って来た主を、家人はどのように迎えたのだろう。その旅はどんな目的のものだったのだろう。自分探しの旅だろうか。それとも、故郷での久しぶりの同窓会に行くためのものだったのだろうか。私の祖母の針山はいつもやや褪せた赤い色だった。男女平等も雇用均等法もない時代の女性たちは膝の上に縫い物を広げながら、何を夢見ていたのだろう。芭蕉は冬の野に自分の夢を駆けさせたが、近江に集う平成の俳人たちは賑やかに軍鶏の鍋をつつく。冬の夜の暖かい時間である。忌日は終わりではなく、残された人々の中で綿々と続いてゆく時間の始まりなのかもしれない。
  ことごとくおちて蓑虫のみのこる     山内純二
  古日記人が火となるまでのこと      柚木紀子
  ひうひうと風栖むひよんの実でありぬ   山下美夜子
 俳句というのは時間を「遊ばす」ものだと思う。日本語の俳句で主語が用いられることは極めて少ない。基本的には一人称の文学だといえる。蓑虫のみを残して葉を散らせたのは、冬の北風であろう。しかし、蓑虫にスポットライトをあてているのは舞台監督的な作者だ。つい「ちちよ、ちちよ」と鳴いてしまいそうになった。良い意味で操られたといえる。日記というのはあくまでも自分のために書くものだ。が、蜻蛉日記のように何百年も生き延びている日記もある。ブログやツイッターが流行るのは、自分の当たり前の日常を多くの人とシェアしたいがためだろう。火葬が一般的な日本では人は最期には火となる。この日記が誰の手によるかは語られていない。でも行間ににじむそれまでの時間、またそれからの時間が、この古日記を閉じた後にも静かに流れた。ひょんの実を見たことがないのでグーグル検索してみた。虫こぶという言葉を更に辞書でひく羽目になった。その音を聞いたことはない。鳴らしてみたこともない。しかし、ひうひうと音をたてる風は自分自身かもしれないという気分にさせられた。話を聞いただけで真犯人をあてるarmchair detective(現場捜査をせず書斎の肘掛けいすに座ったまま事件を解決してしまう探偵)のように、十七文字に触れただけで未知の世界にすうっと入れることが、俳句の妙なのかもしれない。(青柳 飛)
 
 

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そうですね、俳句との出会いは大きく人生を変えてくれてます。

未知の世界にす〜〜っと入りますです。

2011/5/18(水) 午後 8:11 [ たかやん ]

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こんばんは。なかなか面白い句が在アメリカの方々には多いのですね。皆様の俳句を編集して印刷し俳句仲間に1枚づつ差し上げました。非常に生き生きした俳句に感動です。
これからもちょくちょく訪問させていただきます。 那須 仲川より

2011/6/20(月) 午後 10:25 [ 夢実現助っ人 ]


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