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残りの講義を全て受け終え、帰りのバスに乗る。
時間帯のせいか乗っているのは同じ大学の学生ばかりだ。
だが、友人らしき人物は見当たらないので席に腰掛け、鞄から本を取り出して開いた。 何事もなく平穏そのものの一日だったな。
本を読みながら、頭の中でそんな事を考えていた。
「次は―――――」
バスの運転手が次の停車場所をアナウンスする。
その場所でユウヤは降りるので停車ボタンを押した―――――――――
「ありがとうございます。またのご利用をお待ちしております」
「ありがとうございますー」
バスの運転手と挨拶を交わしてバスから降りる頃には日が沈み始めていた。
そういや近場で事件が起きたんだっけ?なら、さっさと帰った方がよさそうだな。
朝に友人とした会話をふと思い返す。
「あらユウヤくんじゃないの!」
「あ、こんばんは」
偶然にも近所のおばさんに声を掛けられた。
バス停近くにスーパーがあるので何ら不思議な話ではない。
「今日も大学?」
「はい、そうです」
「大変ねー」
「そんな事もないですよ」
おばさん特有の長い立ち話に付き合わされそうだ。
でも、今は急いでる訳でもなくこれといった用事もないので付き合うことにした。
ご近所付き合いもしておいた方が何かと助けられる時もある――――――――
「あら!もうこんな時間!ごめんねー付き合わせちゃって」
「いえいえ、お構いなく。楽しかったですよ」
「そう言ってくれると嬉しいわ〜それじゃあ、お母さんとお父さんにも宜しく伝えておいて」
「はい!それでは」
日は沈みきっていた。道を照らすのは街灯と建造物から漏れている光だけになっている。
家までそこまで遠い訳でもないので、やや早歩きになって向おうとした瞬間、遠くから人の悲鳴のような声が聞こえてきた。
「今のは?」
おばさんにも聞こえたか尋ねようと後ろを振り返ると居なかった。
もう帰ってしまったのか?―――まあ考えても仕方ない。
気になる事には違いないので声がした方に行ってみる事にした。
普段よりも慎重に歩いて近づいていく。
万が一の時は巻き戻せばいいだけだ……。
進んでいる内に気づいたが、どんどん視界の悪い路地になっている。
やっぱり辞めた方がいいだろうか?
トラブルに巻き込まれる危険性は大いにある上に、自分の力も意表を突かれれば戻しようがない。
前にも言ったように力を過信する事だけは避けている。
しかし、本当に退いてしまっていいのだろうか?
この力を珍しく他人の役に立つ事に活かせれるのではないだろうか。
少々の出来事なら大きな出来事への繋がりを生み出すことも無いだろうか。
心臓の鼓動が早まっているのが自分でも分かる。
嫌な予感もする。
このまま進むのが恐怖になってくる。
も、もしも……人が死んでいたら……。
最悪のケースが脳裏に浮かぶ。
だが、尚更そうだとしたら"巻き戻す"事に意義が出て来る。
今まで他人に使ってこなかった力を。
大きな出来事に干渉はしないというポリシーにも引っかからない。
よし……そこの角を曲がった先に何もなかったら引き返そう。
自分の中のゴールラインを設定した。
覚悟を決めてあとは前に進むだけだ。
そうだ……この国は平和なんだ……自分の身の回り……少なくとも目の前で起きる筈がない。
根拠のない事を繰り返して自分を元気づける。
目の前にある角に近づき、頭だけを出して覗き込むように左右を確認すると――――――――
マジかよ……。
運が悪い事に最悪のケースが的中してしまっていた。
倒れている女性。
恐怖で足が動かなくなった。
心臓の鼓動も更に早くなっていた。
何もかも忘れて家に帰りたい。
え、えっと……取り合えず警察に……。
スマートフォンを取り出そうとポケットに手を入れたが、上手く力が入らない。
あまりの目の前の非現実的な光景に脳が拒んでいる。
いや、非現実なんて事はない。毎日どこかで起きている出来事だ。
今まで"偶々"遭遇する事がなかった。それだけの事である。
今こそ力を使うべきなのか……?
いつも使っている訳ではないので先に一般的な通報が頭を過ぎったが、自分には力があった。
"時間を巻き戻せる"
これこそ本当の非現実的なものだ。
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彼のポリシーとしては「大きな出来事に干渉しない」となっておりなるべく自分の力で人生を歩もうとする感じですね。1話からドキドキしながら読んでるんでが雰囲気は「不思議な能力」をもとにした独特な作風の日常系なイメージがありますね。ただ結構ブラックなSSが多かったので最後の終わり方もバットエンドとか想像しちゃっていつ怖いのがくるのか身構えてたりしますww
2017/4/5(水) 午後 0:39 [ ごみかす(絵練習) ]
コメントありがとうございます!励みになります><
そうですね、今回はいつもよりも日常っぽさを強調して作っているつもりです。自分の得意な分野がどうしてもブラックよりなので、そうなりやすい傾向はあると自覚していますw
最後までドキドキして楽しめるような話の構成を頑張りたいと思います⌒∇⌒
2017/4/6(木) 午前 0:38