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"戻れ!!"
覚悟を決めた。
他人の命を左右する出来事……それに干渉する。
綺麗事だけじゃない、それを目撃した自分を居なかった事にすることも兼ねている。
「あらユウヤくんじゃないの!」
落ち着いて巻き戻さなかったのもあり、どのタイミングから再スタートするのか分からなくて一瞬困惑した。だが、おばさんが最初に話しかけてきた時と同じ事を尋ねられているので大凡の時間を把握する。
「あ、あの、こ、こんばんは」
「どうしたの?凄い汗……それに顔色も悪いわよ?」
さっきまでの感覚がまだ抜けきっていない。
まだ目の前で倒れている女性の姿がフラッシュバックしている。
人生において一番の大事件なので無理もないが、そんな事を考えている余裕もない。
「すみません!ちょっと用事があるので!」
「え、ええ……」
心配そうな顔をしながらも、必死さが伝わったようで引き止められる事もなく離れた。
傍からジロジロと見られる位に取り乱しながら走って、あの角へと向かう。
本気で走った事があまりなかった為に、到着する頃には息切れに近い状態にあった。
「確かこの辺の筈……!」
小さな声で口にした。
心身をリラックスさせる為に深呼吸しながら辺りをゆっくりと見渡す。
まだ日が沈みきってはいないので人気は多少あった。
時間がある間に対策を練ることにしよう……どうしたら殺人を防げる?
そもそも、死体はうつ伏せだった為に顔が確認できていない。
しまった……思えば何一つ分かっていない……。
パニックに陥っていたとはいえ、何一つとして手がかりがない現状に自己嫌悪する。
しかし、場所は分かっているので多少は関与できるかもしれない。
同じ場所は自分が立っている為、ここでは起きないだろう。
ん?待てよ……。
"同じ場所"に引っかかった。
ひょっとしたらターゲットは自分になってしまう可能性はないか?
理由がある殺人だと何故決めつけていたのだろうか。
ただの通り魔だったら関係がない。
調度いい場所にいた人間を刺すだけだ。
背筋が凍るような感覚になる。
直ぐ様この場から立ち去りたくなった。
何もかもが危険なものに見えてくる。
通行人、古びた家の瓦、偶に通過する車……疑ったらキリがない。
どうしちまったんだ俺は……。
まるで右も左も分からなくなったような幼児のような気持ちだ。
何をすればいいか一切分からない。
ただひたすらに時間を浪費している。
タイムリミットまでそう遠くはないだろう。
道を照らしているのは前回と同じく、街灯と建造物から漏れている光だけだ。
いや、この路地に関しては街灯だけか。
あれか……?
一人で夜道を歩く女性が目に映る。
確証はないが、そろそろの筈だ。
自分がこの場にいる事から、未来が変わったのだろうか?少なくとも悲鳴は聞こえていない。
しかし、この後も何も起きないとは思えない。
追跡した方がいいだろうか。
考えている内にも女性はどんどんと遠ざかっていき、追うのも困難になっていく。
決めた筈の覚悟も時間の経過と共に揺らぎ始める。
こんなのは警察の仕事じゃないのか……なんで僕が……。
嫌気がさしてくる。今までの疲労は無かったことにはできない。
冷静な判断力が出来なくなっていく。
「ああもう……!」
一人で苛立ちに襲われつつ女性を追いかける事にした。
「あの!すみません」
「?」
女性は不思議そうな顔をして振り返った。
声を掛けたものの、どういう対応をするか全く考えていなかった。
最悪の場合は巻き戻せばいいし危険を仄めかす内容でいいか……。
「誰かに恨みを買うような事はしました?」
「え?」
「いや、あの……その……」
いきなり見知らぬ人間にそんな質問をされても困るだけだというのは尋ねてから思った。
そして予想通りの反応である。
「不審な男性が貴方を尾行しているように見えたので……」
「すみません、そういうの無理なんで」
どうやらナンパか何かの勧誘にでも見えたのか会話を拒まれてしまった。
このまま後をつけるのも気が引けるがどうしようか……。
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そう言えば仮に重症を負ったとしてそれで時間戻した場合「身体」は元に戻るのか?とか考察してみたり、文章見落としていたら申し訳ない
2017/4/12(水) 午後 9:34 [ ごみかす(絵練習) ]
体も元通りです!そういう風に決定付ける文面はまだなかったですねw
位置や記憶、所持品等が戻ってしまうので、傷なども同じく戻る設定になっています。唯一戻せないのが主人公の記憶のみと解釈して戴ければ!
2017/4/13(木) 午前 2:38