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"戻れ"
結局戻す事にした。理由は自分が彼女と接触したことによって、自分自身がターゲットになる可能性を考慮したからだ。原因は不明なので不安要素は少しでも減らした方がいい。
それに彼女を付け回している内に自分が原因で死なせてしまうような光景を目にするのも嫌だった。
「よし!」
今度はオバサンと別れて事件が起きた"角"の前にたどり着いたときまで巻き戻す。
突然に襲ってきた疲労感に一瞬驚くが、ここまで全力疾走した事を思い出すと納得する。
てか、これって何もかもが"その時の状態"になるんだな……。
―――そんな事よりも今度はどうしようか?
下手に接触するとこっちが不審者だと疑われてしまう。それなら完璧に後を尾行した方がいいか。
しかし、それだと背後への警戒が怠って自分が危険に晒される気もする。
僕は警官でもなければ、探偵でもない……こういう時の対処法なんて幾ら考えても出てこないよ。
諦めて塀に体を預けながら、スマートフォンを取り出して気になる事をネットで調べてみる。
話の創作の参考資料として、この手の事を質問しているような人間はいる筈だ。
"尾行するのが最善策" "接触して事情を話す" "強引にでも引っ張る"
色んな情報が飛び交っている……中には自分が既に試したことも書かれていた―――――――
気がつけば被害者の女性と思われる人がやってきた。
今回は後をつける事にしたので、まずは不審に思われないようスマートフォンに夢中な振りをする。
女性が角を通過し、こちらから完全に見えなくなって数秒置いてから出る。
すると向かいから、身長が日本人男性の平均よりやや低めの少し肥えた人が歩いていた。
角へ戻ろうか悩んだが不審な動きを避ける為にそのまま知らない顔をして女性と同じ方向へ歩く。
男は立ち止まると、女性に何やら話しかけているように見えた。
―――いや、話しかけているように見えたのは間違いだった。
女性は力が抜けたようにその場に崩れるように倒れた。
恐らく正面からの刃物による刺殺。
「あ、あっ……!」
男性がこちらに気づいたようで取り乱している。
手には頑丈そうな包丁が握られていた。
先端から根本にかけて、赤い液体が垂れ流れている。
この状況で流れている赤い液体の正体なんて言うまでもないだろう。
「クソッ!」
刃物を持ったまま男はその場から逃げようとしていた。
これは好都合だ。
安心して巻き戻す事ができるのだから。
"戻れ"
今度はもっと短時間を巻き戻し、女性が角に近づきつつある状態まで戻した。
これならいけるか……?
もうユウヤに恐怖などなかった。
全ての解答が分かった状態で一から始めるだけなのだから。
今度は女性よりも前を歩いて先に男性に話しかける事にした―――――――――――
「すみません」
「え、な、なんでしょう……」
刃物を隠し持ってるという後ろめたい気持ちがあるからか、少し挙動不審なように目に映る。
もしかしたら、先を知ってるからそう思い込んでるのかもしれない。
「女性とのトラブルがあったように思いますが……その隠しているモノは使わないでください」
「!!」
男性は何故知っていると言いたげな表情をした。
ユウヤは不安を抱きながらも、平静を装って会話を続けた。
「僕でよければ相談相手になりますよ?」
「お前もアイツに騙されたのか?」
「え?」
予想外な上に意図がよく分からない返答がきた。
「と、いいますと……?」
「今お前の後ろから歩いてきている女にだよ」
チラッと一瞬だけ振り返ると被害者の女性がこちらへ近づいてきていた。
「彼女が何か?」
「自分が刺されるような事をしているから、お前のような男を使って警護させてるのかと思ってな」
話が見えてこない。
一体どういうことなのだろうか。
「すみません、本当に無関係でよく分かりません。ただ偶然あなたの凶器を見てしまっただけで」
苦しい嘘かもしれないが、少なくとも言い当てた事は事実だから信じてもらえる事に賭けた。
「そうか?なら教えてやる。あの悪女は俺の全財産を掻っ攫いやがった。口車に乗せられた俺にも責任はあるが、だからといって詐欺師である加害者が許される道理はないだろ?」
「そうなんですか……」
この男性が言ってる事が真実かは分からない。
ひょっとしたら妄想癖や自分にある物事の原因を伏せて話してるかもしれない。
しかし、先に起きる事が分かっているとどうしても女性の肩を持ちたくはなる。
「お前はまだ若いから経験ないかもしれないが、世の中には罪に問われないギリギリのラインで悪どい事をする人間がごまんといる。そういった人間に引っ掛かれば泣き寝入りしかない」
確かにネット上でも証拠が不十分で立証できずに、訴えることすら困難な人が大勢いるとは聞いたことがある。この人もまたその一人なのだろうか。それでも殺人は犯してはいけないだろう……。
自分の中で考えがまとまったので、刺激しないように発言することにした。
「それでも、殺人をしたら相手を責めれなくなりますよ」
「第三者だからこそ言えるセリフだな、俺の立場になったらその考えも変わるだろうさ」
「否定はしません……」
「認めるのか?なんだ、思ったより賢いじゃないか」
話している最中だが、女性の場所が気になって少し視線を男性から逸らす。
少なくとも近くにはもういないようだ。
「心配しなくてもやる気は失せたよ。あんたと話してたらな」
「それならよかったです」
「ああ、なんだか何もかもが馬鹿馬鹿しくなってきた」
少し引っ掛かりのある言葉があるが、これで一件落着だろうか?
「自殺とかもやめて下さいよ」
「それは俺の勝手だ。そこまでは口出ししないでくれ」
釘を刺そうと思ったが、返されてしまった。
その後何も言わずに男性は背を向けて去っていく。
「お気をつけて」
返事はなかった。
男性の中ではまだ憎悪か自殺の選択を迫られているのだろうか。
他人事だからこそ出てくる事かもしれないが、いい方向に人生をやり直してほしいと願うばかりだ。
そして、自分の未熟さも反省しなければならないと思う。
殺人を犯した未来を知ってるからといって、加害者になるような人間として接してしまった事に。
今後はもっと慎重に……慎重に……あれ。
なんだか酷く頭痛がしてきた。
思考が正常に働かない。
視界もボヤけていきドンドン暗くなっていくような―――――――――――――
閲覧ありがとうございます。
ネタが浮かぶ時、浮かない時の差が激しいので二日に一話上げる時もあれば、一週間以上間が開く時もあります(苦笑)出来る限りは安定して投稿したいとは思っているのですが……;
あと来週から少しの間はパソコンに触れられない生活が始まってしまうので、すみませんが投稿も出来なくなると思います。いい案が浮かべばメモを取って、パソコンが触れる時に一気に書き上げれるような状態にはしたいと思っていますね。
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お、もしかしてついに能力の「リスク」について書かれる感じですかね?。
戻した分の時間は実は戻ってこない為実は寿命が徐々に縮まっていたとか、魔力的なものがありそれが切れると使えないor何らかのリスクが伴うとか色々考察が捗りますねぇ………
話の途切れさせ方も次回を期待させる感じで良いですね!次も期待してます!
2017/4/21(金) 午後 9:35 [ ごみかす(絵練習) ]
考察する価値を生み出せる作品にできているようで何よりですw
スッキリした話の終わらせ方の方がいいかとも思うんですが、自分自身にとっても「次を書かなくては」と思わせる為にもこの終わり方に!
2017/4/22(土) 午前 2:19