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船に乗り、川面から日本橋を見る。 ゆっくりと日本橋川を進んでゆくと、目の前にルネサンス様式、二連アーチの日本橋が現れた。 「堅固を図ると共に美観を添へん事を欲し」と、 明治44(1911)年の開橋式で当時の尾崎行雄東京市長が述べた、強くて美しい石橋だ。 関東大震災でも戦災でもびくともしなかった。堅固は実証ずみ。 でも今、この橋をめぐる美観が問われている。 美しさを台無しにされたのは東京オリンピック前年の63年。 日本橋川に沿って、川の上に首都高速道路がつくられたのだ。 この時、日本は高度成長のただ中にいた。 その日本橋の橋脚まで船で近づき、川面から上空を見上げてみたが、 高速道路に遮られて、光は差し込んでこなかった。 こんな日本橋の上を走る首都高速の地下化について、 昨秋、小泉純一郎首相(当時)が国土交通省に検討を指示。 日本橋の景観問題が一気に注目を集めるようになった。 だが日本橋周辺の人々の橋への愛着は、昨日今日、始まったことではない。 高速ができる時は『羽田まで15分か!速いなぁ』と未来都市的な夢も見ていた。 が、実際高速がかかってみると『橋がとても暗い』。 日本橋を守ろうという願いから、68年には「名橋『日本橋』保存会」を、 周辺の町会、商店、企業などで組織。 橋を保存しながら地元振興も図る地道な活動が始まった。 71年から毎夏続く「橋洗い」は、今や小学生も含めて千二百人も集まる大イベントとなった。 その日は消防艇も出動、川の水を橋にかける。 日本橋を総出で洗うのだ。 江戸時代、日本橋は東海道、中山道、日光街道、奥州街道の起点だった。 現在も橋中央に日本国道路元票があり、ここから日本の道路は距離が測られている。 同保存会では、「道路元票を子供の時に洗い、この橋の大切さを知る人が増えれば」と言う。 でも橋を本当に保存するにはやはり高速道路の移設しかない。 同保存会は将来高速道路を架け替える際には別な場所への移設の要望を83年に決議している。 東京にとっての日本橋のように歴史と文化が集積した場所は日本の各地にあるはず。 そこが再生すれば地域全体の再生の力になる。 そんな動きの第一歩に日本橋がなると思うと、同保存会は移設の意義を述べる。 日本橋周辺を歩くと、ビル群が一定の高さにそろっているのに気づく。 地元の人々が昔からビルを約百尺(31m)で建ててきたためだ。 新しい高いビルもその高さのラインを意識した設計になっているので、 街に一本の線が通っている。 それを見ても各建物の軒線が見事にそろっている。 その江戸の文化が今も生きているのだ。 同保存会も、 「日本橋のDNAを大切にして橋と街を再生させたい。 景観に投資する新しい試みを日本橋で始めたい」と話す。 今の日本橋のデザインを担当した明治の建築家・妻木頼黄は旧幕臣・旗本の子。 当時、日本橋周辺には江戸から続く魚河岸がまだあった。 妻木は橋の下を船で行き交う人々を思い、橋の裏側にも美しい花崗岩を使い架橋した。 そんな妻木からの懇願もあり、日本橋の銘は徳川慶喜の揮毫(きごう)だ。 以来、人々の生活は川面から日本橋の路面の高さに、さらに上の高速道路へと 「より高く」「より速く」移動してきた。 だが今、上空の高速を移設して、 「日本橋に青空を、日本橋川に光を」との発想が論議され始めた。 新時代の光が見える。 移設が実現して、水上バスや水上タクシーで、 日本橋からディズニーランドまで行けるようになったら楽しいかもしれない・・・。 *ソウルは撤去で成功 高架の高速道路を移設または撤去した成功例としては韓国・ソウル市の清渓川が有名だ。 清渓川は1958年から川にふたをする工事が行われ、その上に高架の高速道路が走っていた。 だが川の復元を公約に掲げて当選した市長が公約通り、ふたを外し、 その上を走っていた高速道路の約5.8kmを撤去。 川と橋などを復元、周辺を緑地化するなどの整備も2005年に完了した。 現在、市民の憩いの場として、ソウルの代表的観光地としてにぎわっている。 日本橋の場合を検討していた「日本橋に空を取り戻す会」の小泉首相(当時)への提言は、 首都高速の約2kmを地下化して移設。 日本橋周辺に親水性のある公園整備や遊歩道を配置し、開放的な空間を作り出すというものだ。 これにかかる費用は試算では四千億〜五千億円。 民間の一部負担やコスト削減などで、公費による負担は一〜二千億円に抑えるとしている。 いずれにしても非常に多額な費用が必要で、国民的な合意が必要だ。 提言した同会は、 「明治以来、当座の必要に合わせて無定見に、その日暮しで進んでいた日本の象徴が、 日本橋の上の高速道路。 日本の首都として二十一世紀、二十二世紀をも見通した都市の計画を立てていくべきとき」 と、話している。
(1月8日 四国新聞記事より引用)
再生日本を目指し、地域住民が動かねばならない時が来た。 国にも、社会にも、ましてや、政治家なんかに任せてはおけない。
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