自由ネコ通信

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ある掲示板で、マルクスの『資本論』冒頭の使用価値や交換価値、価値について議論になりました。
スターリンが、マルクスやレーニンを聖人に祭り上げ、その著作を政敵を攻撃するための警句集、予言書と変えてしまって以来、マルクス経済学に対する研究は科学的手法ではなく、神学の世界に入り込んでいる気がします。今回の議論の相手の方も、『資本論』の記述については豊富な知識を持っておられるようですが、それがマルクス経済学の論理構造の中でどのような位置を占め、その体系の何について述べているか考えるより、その記述の正統な理解を知ることに力を注いでいるようです。
私が、法律に関心を持ちはじめ多くの法律家の話を聞かせていただいて感じたことも、まさに法学が科学ではなく最高裁を法王庁とする神学の世界で動いているという現実でした。神学とは永遠の現状維持です。しかし、法学も経済学と同じく、人権原則を基準にして人間生活を豊かにするための科学となりうるし、しなければならないと私は思います。
以下は、マルクス経済学をを科学として研究するために、『資本論』をどのように読むかという一つの試みです。

セーターで飢えを満たす

涼しくなるとセーターが欲しくなります。そこで、羊の毛を刈り……毛糸を編んでセーターを作ります。セーターを手に入れた人は、それを着て暖かく過ごすことができます。このようにセーターには、人が暖かく過ごしたいという欲求をかなえる機能があります。それをマルクスは「使用価値」と名付けました。
しかし、セーターは食べられません。飢えを満たすためには稲を栽培し……飯を炊き、塩ムスビを作るというまったく別の労働をしなければなりません。こうしたある欲求を満たすため羊の毛を刈り……、稲を栽培……という労働の異なった側面に注目したマルクスは、その側面を「具体的有用労働」と名付けます。
しかし、同時にマルクスは次の点に気がつきます。セーターは塩ムスビとの交換という行為をとおして飢えを満たす手段になるということに。このセーターの、飢えを満たすといういわば間接的な使用価値を、マルクスは「交換」という行為をとおして実現される機能として「交換価値」と名付けました。ですから、セーターの交換価値はこの場合は、塩ムスビの飢えを満たすという機能=使用価値によって示されます。
ただ、セーターは同時に例えばテントと交換されることで雨風をしのぐ手段ともなりますから、セーターの交換価値は様々な“もの”の使用価値で示すことが可能です。「諸交換価値」です。

使用価値には大きさはない

ものの使用価値には欲求を満たせるか満たせないかしかありません。飢えを半分満たして半分だけ餓死なんてことはありません。塩ムスビが必要以上にあっても残りは残飯になるだけですし、飢えている人と飽食している人では使用価値は異なるでしょう。使用価値に相互に比較できるような大きさはないのです。
当たり前に思えますが、使用価値の量を「有用度」のようなものとして量ることができ、商品交換とは同一量の有用度による交換だと主張する人もいますから、きちんと意識しておくべきです。

交換価値の大きさ

ある欲求を満たすための使用価値を持った“もの”(使用価値の量ではなく)の必要かつ十分な量というのは、その欲求から自ずと決まります。飢えを満たすために例えば、塩ムスビが1日に6個いるというように。
ところが、交換を通じてある欲求を満たす手段となるセーターの場合、ある部分は間接的に飢えを満たす塩ムスビであり、ある部分は雨風をしのぐテントであるとしても、それを質的に区別することはできません。ただ塩ムスビ6個と交換できるセーターは1着であるとか、テント1張りと交換できるセーターは2着であるとか、セーターの量で決まります。この6対1とか、1対2というのがマルクスのいう「交換比率」です。
そこで、ある欲求を満たすための“もの”を得るための交換に必要なセーターの数を交換価値の大きさと考えることもできます。雨風をしのぐには飢えをしのぐよりも倍のセーター(に表現される交換価値)が必要というように。しかし、塩ムスビ6個の使用価値で示されるセーター1着の交換価値がセーター2着になれば倍の12個の使用価値になるという関係にあるわけではありません。

異なるものの比較基準=価値

ところで実際の交換において、交換されるのは使用価値や交換価値という“もの”の属性ではなく“もの”そのものです。そして、塩ムスビのようなその使用価値を目的に交換されるものは、セーターという交換するものの数によって量的に比較可能となります。量的に比較可能ということは、それらの間にある共通の属性Xが存在するということです。例えばテント1張りのXは塩ムスビ6個のXの倍であるというように。
使用価値や交換価値という質的に区別される属性がXではありません。
そこでマルクスはいったん“もの”そのものに戻り、それが人間労働によって作られたという点に着目し、その属性Xを「価値」、そうした側面からみた労働つまり継続時間のみから量られた労働を「抽象的人間労働」と名付けます。結局、価値とは使用価値や交換価値とはまったく異なる性格の属性なのです。

使用価値と交換価値、価値の間の関係式

以上の前提から資本論の論理に従って展開すると次の一連の関係式を得ます。

《使用価値》

1-1)セーター(使用価値:暖かく過ごせる/1着必要)
1-2)塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)
1-3)テント(使用価値:雨露をしのげる/1張り必要)

《交換価値=拡張された使用価値》

2-1)セーター(交換価値:塩むすびと交換できる/1着必要)→塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)
2-2)セーター(交換価値:テントと交換できる/2着必要)→テント(使用価値:雨露をしのげる/1張り必要)
ところで、交換価値の関係式は次のようにまとめることができます
2-1b)セーター(交換価値:塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)/1着必要)
つまり、セーターによってその本来の使用価値ではない「飢えを満たす」などの欲求を満たすことができるということに交換価値の内容があります。
そして、使用価値という質を問題にしながら、この関係式の中には6個と1着という量的関係が表示されています。これが交換比率です。

《価値:逆から見た交換関係》

交換価値を示す関係式を逆の方向から見ると次のようになります。左辺と右辺の入れ替えではないことに注意してください。この関係は左右を入れ替えても成り立つ対称的関係ではありません。
3-1)塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)←セーター(交換価値:塩むすびと交換できる/1着必要)
3-2)テント(使用価値:雨露をしのげる/1張り必要)←セーター(交換価値:テントと交換できる/1着必要)
この関係式では塩ムスビやテントの使用価値が同一のセーターの交換価値と関係させられていますが、セーターはすでにそれを特徴づける(使用価値:暖かく過ごせる/1着必要)とは切り離されています。そこでセーターは同様な交換価値を持つさまざまなものX1、X2……と置き換えることが可能です。
3-3-1)塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)←X1(交換価値:塩ムスビと交換できる/y1個必要)
3-3-2)塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)←X2(交換価値:塩ムスビと交換できる/y2個必要)
……
セーター、X1、X2……は関係式の同一の辺にあり、かつ同一のものと関係していますから次のように等置できます。
4-1)セーター(交換価値:塩ムスビと交換できる/1着必要)=X1(交換価値:塩ムスビと交換できる/y1個必要)=X2(交換価値:塩ムスビと交換できる/y2個必要)……
この使用価値とは切り離されたセーター、X1、X2……を貫く共通の属性=何時間かの労働によって生み出されたという属性をマルクスは「価値」と名付けました。そこで3-1)等の関係式は次のように書き換えることができます。
4-2)塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)←←セーター(価値:z時間の労働で生産/1着必要)
4-2-1)塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)←←X1(価値:z1時間の労働で生産/y1個必要)
4-2-2)塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)←←X2(価値:z2時間の労働で生産/y2個必要)
もう一つ、次の関係式も成り立ちます。
4-2-1)塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)←←X1(価値:z1時間の労働で生産/y1個必要)
4-3-1)テント(使用価値:雨露をしのげる/1張り必要)←←X1(価値:z1時間の労働で生産/2倍のy1個必要)
4-2-1)と4-2-2)との関係から塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)と交換できるのは、ただx1、x2に共通する価値(ある時間の労働で生産)という属性=価値があるからであることが示されます。
そして4-2-1)と4-3-1)との関係から、テント(使用価値:雨露をしのげる/1張り必要)と交換するためには、塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)と交換する場合の2倍の価値を持つもの(X1の2倍の量)が必要であることが示されます。X1がどれだけの時間で生産されたかは無関係です。価値の大きさ(価値そのものではなく)はただ異なる使用価値を持つものとの関係の中で相対的に計測されるだけなのです。
最後に、4-2)を再び逆方向から見ると次の関係式が得られます。
5-1)セーター(価値:z時間の労働で生産された/1着必要)→→塩ムスビ(使用価値:飢えを満たせる/6個必要)
つまり、セーターが塩ムスビと交換されることで飢えを満たすという欲求を満たす存在となりうる背景には、セーターが価値をもつことがあるのです。

《貨幣と商品》

一連の4-?)の関係式から、ただXの位置を占めることがその機能であるような特別のXを想定することができます。貨幣の登場です。そして貨幣の登場ととともに、塩ムスビやセーターは商品となります。これまでの関係式の中で、セーターや塩ムスビは商品ではありませんでした。しかし、商品関係のもとで、これまでの関係式がどのように変形されるかは、稿を改めなければなりません。

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ところどころ疑問の数字文字があるのですが、簡単な数式の変換ですね。これが資本論に進んでいくのですか。

マルクスの資本論なんて読んだことがありません。

2009/11/10(火) 午後 10:32 [ nanachan.umekichi ]

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nanachan.umekichiさん、こんばんは
経済学とか「資本論」というととても難しい学問であるかのように思いますが、内容は現代世界の基本的あり方を整理したシンプルなものです。なぜ、現代社会には支配する者と支配される者がいるのか、抑圧する者と抑圧される者がいるのか、それを社会を根本で維持している経済構造にさかのぼって明らかにしたのが「資本論」です。
法律の背景には、そうした支配と非支配の関係、階級関係がありますから、法律がなぜ今の様な形になっているかを理解するためにも、経済学の基本の理解は必要だと思います。

2009/11/14(土) 午前 0:18 自由ネコ

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