自由ネコ通信

冤罪乱発の警察から強制捜査権を剥奪し、職業裁判官から市民の手に刑事裁判権を取り戻そう。予審制度と陪審制度の復活を求めます

全体表示

[ リスト ]

 今日、組織犯罪対策法や共謀罪新設に反対して闘ってきた人々が、3度目の共謀罪廃案を祝して講演会を開きました。破防法の団体適用阻止闘争以来一緒に闘ってきた友人たちですので、私も出席して旧交を温めました。
 ところで、その講演会の中で、『裁判員制度はいらない!大運動』の事務局の肩書きで発言した川村理弁護士が、被告人が手錠姿のまま法廷に引きずり出されることを放置した弁護人に対して、周囲から批判の声が挙ったことを逆に非難しました。

 事実経過は次のようなものです。
 報道によると、2月18日に東京地裁で行われた裁判員裁判で、裁判員の在廷中に被告人の手錠と腰縄のつけ外しがあり、判決後の記者会見で、裁判員となった市民から「手錠は犯罪者のシンボル。かけ外しを強調するのは見せしめ」「ショック。両脇に職員も座っていたし、なくていいのではと思った」などの発言がありました。これに対して同裁判の弁護人は「裁判の原則的な流れに従い、特に要望しなかった。(裁判員の)反応は意外」とコメントしました。
 川村弁護士は、裁判員制度導入によって弁護士の活動が様々な制約を受けているという論旨の中で、この弁護人のコメントが批判されたことを取り上げ、手錠をどこで外させるかは弁護人それぞれの考え方で良い、法廷外での取り外しなどは「裁判員に対する過剰配慮」だと、その弁護人を擁護し、弁護人批判を非難したのです。

 被告人を手錠・腰縄姿で裁判官の前に引きずり出させてはならない、必ず、出廷前に外させなければならないと強く訴えていたのは故三浦和義さんです。“職業裁判官はプロだから手錠・腰縄姿でもよけいな予断を抱く心配はない”などという虚構にだまされてはならないと警告し続けていました。
 まだ有罪判決も受けていない市民に手錠・腰縄をつけたり、服装を規制したりすること自体が、無罪推定の原則を踏みにじり被告人を犯罪者扱いするものですし、訴追者/検察と同じ法務省に属する機関がそれを強制するのですから、当事者主義(検察/被告人という当事者は互いに対等であるという考え方)も踏みにじられ続けています。被告人の両側に座る刑務官の存在によって、弁護人との秘密交通権すら認められないのが日本の反近代主義的刑事裁判の現実です。だから、一度でも被告席に座ったことのある人間にとっては、これらのことは些細な問題でありませんし、三浦さん初め多くに人々が一歩の前進を実現するために必死に闘ってきました。「意外」などという低水準な意識は徹底的に批判して払拭させなければなりません。

 裁判員裁判では、“裁判員は素人だから”などとして手錠・腰縄を法廷外でつけ外したり、ネクタイや革靴に見せかけた服装させるなどということが始まっています。もとよりこれらはごまかしにすぎません。
 だからといって、裁判員制度批判にかこつけて、被告人を手錠・腰縄姿で裁判員(裁判官)の前に引きずり出してもたいした問題ではないなどという主張が公然と出され、これまでこの問題を闘ってきた人々の努力が嘲笑されるのを黙認している訳にはいきません。時間も継続性も保証されない講演会のような場で議論や論争をするのは不適切ですし、その意志もありませんが、この発言に対しては川村弁護士を遮って弾劾し、発言の撤回を求めました。
 残念ながらというか予想通りというか、川村弁護士から明確な答えはありませんでした。かつて、同運動が“(免田事件など死刑えん罪事件は)有罪の証拠があったから有罪判決を出しただけ”などと反動的主張を書き並べた西野元判事の著書を裁判員制度反対だからと推薦した時に、私が同事務局のN弁護士に直接抗議した時と同じです。そして今回は、会場の多数を占める大運動を支持する参加者からのブーイングも受けてしまいました。
 ここに批判なき反対運動である大運動の危険性が示されています。裁判員制度反対の理由になるならどのような反動的主張でも諸手を挙げて歓迎し、それを批判することを許さない。ブーイングの先頭にはえん罪の被害者として長期間被告席にたたされて、手錠・腰縄問題を闘ってきた人もいました。しかし、大運動の事務局の発言が弾劾された、許せないという意識のみで、ブーイングが自分のこれまでの闘いを否定することになっても気にしないし、気がつきもしない。そうした歪んだ姿勢が、反対運動をいつの間にか翼賛運動に変えてしまうのです。

 ちなみに、川村弁護士は弁護活動からみた裁判員制度の問題点として、裁判員に対する過剰な配慮からプレゼンテーション合戦になっているが、検察が国家を背景に潤沢な資金と人員でそれを行えるのに、弁護側には金も人もなくA4の紙1枚出せるだけだったりすると批判しました。
 確かに“金で無罪を買う”という状況は米国の陪審員裁判などで問題とされ、『いかれる7人の男』でも背景に描かれている現実です。しかし、金持ちも貧乏人もかかわりなく裁判前から既に有罪が決まっている日本の職業裁判官裁判と、金はかかっても弁護人の活動次第で無罪獲得も可能な米国の裁判とどちらが被告人にとってよい制度なのでしょうか。
 裁判員制度によって弁護活動が判決の内容を左右できる可能性が出たということを背景とした(もちろん現実はそれほど楽観できませんが)この主張は、裁判員制度を否定するつもりでこれまでの職業裁判官による裁判の異常さを浮き彫りにしています。皮肉を言えば、どうせ有罪は動かないのだから、弁護士がA4の紙一枚ですましても何の問題もされない捜査追認の職業裁判官裁判、確かに後者の方が弁護士にとっては楽かもしれません。
 もちろん、川村弁護士は、被告人のためにできる限りの活動を行っている尊敬すべき弁護士です。しかし、いったん「裁判員制度反対」が問題になると、こうした反動的主張を平然と行い、しかもそのことに本人も気がつかない、ここに大運動の異常さがあります。

閉じる コメント(4)

顔アイコン

自由ネコさん おはようございます

一般の裁判員の方が素直に外観からイメージが作られることを嗅ぎ取っていますね。人間というのは自分の間違いに気づきにくいものだから、いつも何が正しいのかと考えるヒントを探しています。自由ネコさんからいろいろ教わることが多いので感謝しています。学者だから、権威だから正しいと思うのではなくその考え方を見るようにしています。世の中には知らなかったものの見方があると、少しずつですが努力しています。また教えてくださいね。

2010/5/23(日) 午前 4:50 [ nanachan.umekichi ]

顔アイコン

nanachan.umekichiさん、こんばんは
特にある資格を持っている方は、その資格ゆえに自分の考え方は絶対に正しいと考えがちですし、その資格の判定者の思想傾向を絶対視しがちです。また、その周辺の者も資格者の主張を鵜呑みにしがちです。これはとても危険なことです。
部外者である市民が異常と感じることでも、これまでそうしてきたから、最高権威の最高裁が認めてきたからと疑問を感じる能力を失ってしまう、これは弁護士だけでなくあらゆる専門家の陥る落とし穴ですね。

2010/5/23(日) 午後 11:44 自由ネコ

顔アイコン

自由ネコさん、いつも興味深く拝読しています。

手錠・腰縄姿の被告人を見て違和感を持つ裁判員の感覚の方が、それを裁判員制度反対の材料にしようとする弁護士の感覚より、はるかにまともだと思います。ふつうの人たちのそういう新鮮な感覚こそ、私たちは大事にするべきだと思います。
公判前整理手続や予審制度について、私の意見は自由ネコさんと少し違います。それはそれとして、何のために批判するのか、日本の司法をどんな方向に動かしたいのか、という基本的な視点を忘れた反対論では意味がないという点では、まったく意見が一致すると思います。

2010/5/27(木) 午後 9:45 [ Boccherini ]

顔アイコン

Boccherini さん、コメントありがとうございます。
他の問題でも同じではないかと思いますが、裁判員制度や刑事司法の現状を批判する時に、まず必要なのは、自分がどのような刑事司法制度を求めているか、理想としているかをはっきり自覚し、そこから対象を批判することだと思います。
「裁判員制度はいらない」と訴えている方々は、自分がどのような刑事司法を理想とするか抜きに裁判員制度に反対しようとしているため、裁判員制度のケチつけに利用できると思えば何にでも飛びついてしまうのでしょう。一方で、市民に裁判を任せてはならないといいながら、他方で裁判員制度は陪審制度とは異なるから問題などと、全く逆の主張を同時に行えるのもそれが原因です。
私がいらない運動の方々に、反対の前にまず批判を行うよう訴えているのも、まず自分の立脚点を確立すべきだと考えているからです。人がそれぞれ意見が異なるのは当然です。だから議論して、より深い見解をつかむことができます。しかし、自分の立脚点が曖昧な方とは議論すら不可能です。

2010/6/4(金) 午前 1:36 自由ネコ

開く トラックバック(1)


.
自由ネコ
自由ネコ
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

ブログバナー

過去の記事一覧

検索 検索

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事