自由ネコ通信

冤罪乱発の警察から強制捜査権を剥奪し、職業裁判官から市民の手に刑事裁判権を取り戻そう。予審制度と陪審制度の復活を求めます

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「相談し合っただけで処罰は誤解」という詭弁

 S新聞がそのサイトで次のように述べています。
「居酒屋で同僚に『上司を殴る』などと相談しただけで処罰される−。いわゆる「共謀罪」をめぐってはこんな誤解がまことしやかに語られてきた」
 プロの新聞社の記事だから直ちにウソと分かるような書き方はしていません。ただ、そこには優秀な詐欺師と同じ、人を誤解させて自分の望む結論に誘導するテクニックが使われていることを指摘しなければなりません。
 この文章を読めば、あらゆる「上司を殴る」という相談は共謀罪の処罰対象にならないと多くの人は考えるでしょう。そう考えるように誘導するため、語るべき多くの条件を隠した卑劣な文章です。実際はそうはなりません。
 具体的に検討しましょう。

団体性について沈黙

 まず、「居酒屋で」としか書かないことの卑劣さです。
 確かに、たまたま居酒屋で会って意気投合した人がその場で話しただけなら、団体・集団とはいえないので対象にはなりません。
 しかし、メンバーの固定した飲み会や意気投合してまたいっしょに飲もうと連絡先を交換すれば団体・集団です。「上司を殴る」という相談を複数回繰り返せば、傷害を目的とする集団、「組織的犯罪集団」です。暴力団であろうと詐欺集団であろうと、最初は見知らぬ者同士が知り合い、話し合うことから始まります。だから、そうした話し合いを厳密に区別することはできません。それを無理に区別できるかのように主張するのがこの沈黙の目的です。
 意気投合した集団の数万、数十万グループのうち1グループが実際に上司を殴るところまで暴走してしまうかもしれません。その1グループを事前に取り締まるために数万、数十万の話し合いも一緒くたに犯罪としてしまうのが共謀罪です。

具体性をめぐる詭弁

 「上司を殴る」としか書かないのも詐欺的テクニックです。
 法務省も、具体的計画でなければ対象ではないと主張しています。一般的に「上司は殴っても良い」という抽象論ならそうでしょう。でも、そうした話し合いをする時には特定の上司を想定していないでしょうか。
 「明日出勤したら、いの一番に○○課長を殴ってやる」と話し合えば具体的犯罪計画です。もちろん、そう言ったとしても実際に実行されることはないでしょう。でもごくまれに実際に殴ってしまう人間が出るかもしれない。そのレアケースを防ぐために、あらゆるそうした話し合いを犯罪化するのが共謀罪です。

「だけ」というダブルミーニング

 ダブルミーニングとは一つの語に二つ以上の意味を持たせることを意味します。本来は、掛詞のような文学分野での言葉ですが、人に誤解させてだます時にも、そうしたダブルミーニングが使われます。そして「だけ」という言葉は、そのために頻繁に使われる言葉です。
 政府も、「準備行為」が必要と変更したから「話し合っただけでは処罰されない」と主張しています。
 では、この「だけでは処罰されない」とはどう言う意味でしょうか。
 「明日出勤したら○○課長を殴ってやる」と話し合っても、その場で直ちに処罰されるわけではないというだけでしかありません。翌日出勤すれば、会社の入り口で逮捕され、処罰されるでしょう。出勤が「準備行為」とされるからです。
 「準備行為」について、S新聞社の文章では
凶器の購入資金や化学物質の調達など……
テロ組織構成員らがテロを計画し、化学物質を調達した場合。あるいは暴力団組員らが対立組織の幹部を射殺することを計画し、拳銃購入のための資金を用意した−といったケース
と述べています。ここでも「だけ」「といった」という誤解を誘導する言葉が使われています。あたかも、化学物質の調達や拳銃購入資金の準備といった犯罪に直結するような行為のみが「準備行為」であるかのように誤解させるためです。
 しかしすでにこのブログの他の記事で指摘したとおり、安倍首相はハイジャックをめぐって、犯罪に直結する行為ならハイジャック防止法の予備で摘発できるが、そうした「危険性を証明」できない行為も「準備行為」として摘発するために共謀罪が必要と明言しています。出勤という「殴ってやる」ためかどうか分からない行為も「準備行為」として処罰するのが共謀罪です。前記文章の「など」「といった」の中にこの「出勤」も含まれるのです。

共謀罪がないと条約締結できないという誤解の誘導

 条約の批准の条件。それが「共謀罪」など国内担保法の整備
 S新聞はこの文章や法務省、政府の発言を引用することで、あたかも共謀罪を新設しないとパレルモ条約の締結ができないかのような誤解を生じさせようとしています。もちろん露骨にそうしたウソを明言しているわけではありませんが。
 共謀罪を新設しなければパレルモ条約の締結はできないのでしょうか。そんなことはありません。締結のために必要なのは国会で批准して、批准書を国連に送付することだけです。国連の事務部門が、「共謀罪がない」などと行って批准書の受け取りを拒否することはありませんし、条約批准には「留保」というやり方もありますから、他の国が日本政府に共謀罪新設を強制できるわけではありません。
 条約を持ち出すのは、条約締結という制度の知識を持たない市民を共謀罪必要論に誘導するための、ためにする議論でしかありません。

「テロ組織取り締まり」という欺瞞

 この文章の中で、麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は「テロ等準備罪はテロ組織を取り締まるもので、左翼を取り締まるものではない」と述べています。これは欺瞞ではないでしょうか。
 まず、政府はパレルモ条約との関連で共謀罪の必要性を強調していますが、同条約は「テロ」のような政治的行為を取り締まるのではなく、麻薬組織など経済犯罪の取り締まりを目的とした条約です。
 次に、共謀罪というのはある種の組織犯罪の前には犯罪計画を立てるための話し合いがあることを理由に、あらゆる似た話し合いを組織犯罪に関係なくても犯罪化するという法律です。もちろんすべての話し合いを摘発するわけではなく、できるはずもありません。日本のほとんどを留置場・刑務所にするしかありませんから。
  共謀罪の目的は、どの話し合いを摘発するか、誰を処罰するかについて、警察・政府機関に広範なフリーハンドを与えることです。
 今、辺野古の基地建設に反対する一市民が、様々な行為を犯罪にねじ曲げられて逮捕を繰り返され、長期勾留されています。原発に反対する市民グループは、金を出し合ってレンタカーを借りたことが「白タク」行為として逮捕されました。
 他国が我が物顔に基地を作って日本の国土を蹂躙しても、原発によって国土の自然と日本に住む人びとの生活が破壊されても、残念ながら「愛国心に富む」右翼からは反対の声は聞こえてきません。反対しているのは、八木教授が「左翼」と見なすだろう市民だけです。
 現在、警察が基地反対派、原発反対派に対して行っているでっち上げや別件逮捕を見れば、共謀罪の狙いが基地反対派など「左翼」のデッチあげ、別件逮捕のための口実を広げるためなのは明らかだと思います。
 いくら右翼でも自らの詭弁を真実を思い込むほど愚かな者ばかりではないでしょう。それでも彼ら・彼女らが警戒感なく共謀罪新設を主張できるのは、その弾圧が「左翼」に向けられ、右翼には向けられないと考えているからではないでしょうか。
 でも、戦前には2・26の皇道派の解体や牧口・戸田創価学会会長ら宗教家への治安維持法発動があり、戦後では三無事件での破防法適用があります。右翼だから共謀罪適用がないと安心していて良いのですか。

「共謀罪の廃案を」書庫の記事一覧


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