マスコミでは、「共謀罪の創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は与党が今国会の成立を断念」(毎日新聞11月7日)との報道が続いている。しかし、重要なことは、これほど反対の声が広がっても与党が共謀罪の成立をあきらめていないということだ。
与党は反対運動沈静化のために「修正試案」なるものを国会に提出した。しかし、その内容は取り締まり対象を原案よりはるかに拡大した危険なものとなっている。
あらためてその危険性を弾劾する。
言論規制法の性格を強める
より危険になった修正試案の特徴の第1は、言論規制法という性格をより鮮明にしたことである。
修正試案は、取り締まり対象となる行為を、共謀罪該当犯罪の「遂行を共謀」したことから「遂行について、具体的な謀議を行いこれを共謀」したことに変更している。「具体的謀議」とは結局、相談という会話を意味するにすぎない。
修正試案は、「具体的謀議」を取り締まり行為と明示することで、該当犯罪について単に話をしただけで共謀として取り締まる道を開いているのだ。
団体など組織的要件の削除
より危険になった修正試案の特徴の第2は、実際に団体や組織が存在する必要性を削除したことだ。
修正試案では、「組織的な犯罪集団の活動として……組織により行われるものの遂行」について、「具体的な謀議を行い」と“犯罪集団”や“組織”を、謀議を行う主体の要件ではなく会話の中身の問題にしてしまっている。
この結果、あらかじめ団体が存在する必要がないことはもちろん、何の団体に属さない市民の間でも、同一の団体に属していなくても、“組織的に行われる該当犯罪”について話をしただけで、共謀したとされてしまうのである。
しかも、遂行についての「具体的謀議」であって、「具体的な遂行について」の謀議ではない。話の内容が抽象的であっても、実際に会話が行われたというだけで「具体的謀議」を行ったとされる可能性も高い。
この結果、例えば、近所のマンション建設に危惧を持つ住民がたまたま道で出会って、「反対だから、みんなに声をかけて反対する会をつくって、建設会社が話し合いに応じなければ建設予定地に座り込もうか」と立ち話をしただけで、組織的威力業務妨害罪(懲役5年以下)の謀議(話し合い)を具体的に行ったとして、共謀罪とされる可能性が出てくる。“反対する会”が実際になくても会話の中に出てくるだけでいいのだ。
合意なくても話だけで共謀
より危険になった修正試案の特徴の第3は、実行について合意する必要がなくなったことだ。
修正試案は、該当犯罪の「遂行のために、謀議を行う」ではなく、「遂行について、謀議を行う」としている。犯罪遂行のために話し合うためには、遂行についての合意が必要だが、犯罪遂行について話し合うためには合意は必要ない。
修正試案にはそれ以外の部分にも合意を要件とする規定はどこにもない。結局、遂行についての合意は共謀罪の構成要件とはしないということだ。
この結果、例えば、ジャーナリストが暴力団関係者を取材して、「うちの組では、今度こんな計画がある」などと該当犯罪にかかわる計画の話を具体的に聞けば、それだけでジャーナリスト自身が共謀罪を問われる可能性が高い。
また、市民団体や企業、政治団体などの会議で、メンバーの一人が、「座り込みをしよう」などと該当犯罪に問われるような提案を行い、話し合いの結果否決されても、話し合いを行ったというだけで会議参加者全員が共謀罪に問われる可能性も出てくる。
新自由主義的犯罪観弾劾を
与党が修正案を出せば出すほど、共謀罪の思想・言論規制が露骨になってくる。
それは、共謀罪導入の背景に、犯罪について考えるような者はそれだけで犯罪者予備軍だから社会から隔離しなければならない、そうした存在を容認している者も同じ、という新自由主義的犯罪観が存在するからだ。「犯罪とは行為ではなく人間の性格だから、会話など些細な兆候から“善良な市民”の間に紛れ込んだ“犯罪者予備軍”を摘発し、社会から隔離する」、これが共謀罪の目的だからだ。
市民を“善良な市民”と“犯罪者予備軍”に分断し敵対させることで、市民の間の連帯と闘いを解体する新自由主義的犯罪観に反対し、安全・安心”をスローガンにした治安パニックのあおり立てに反撃して、市民の連帯と共同性を再度確立していこう。それが共謀罪導入に根本から反対していく途だろう。