犯罪の準備でなくても「準備行為」
1月31日付の東京新聞によれば、30日の参院予算委員会の質疑で安倍首相は、ハイジャックを計画したとされた者が航空券を購入した場合について次のように述べました。
「(ハイジャック防止法の予備罪で摘発するためには、航空券の予約・購入が)危険性がある準備なのかどうか証明されなければならない。当たらない場合がある以上、ただちに検挙できない」
「この場合、間違いなく『テロ等準備罪』に当たる。その段階で躊躇することなく警察は検挙できる」
つまり、航空券を予約・購入したとしてもそれがハイジャックのためとは限らないからハイジャック防止法の予備罪は適用できないが、ハイジャックのためではなくてもハイジャックの共謀罪の準備行為として検挙できる。ハイジャックのための予約・購入と証明する必要はないと明言したのです。
この発言は、「準備行為」があるから大丈夫というこれまでの政府のウソを浮き彫りにしました。
ハイジャックを共謀したとされればその中の一人が飛行機に乗ろうとしただけで、銀行強盗の共謀なら銀行に行っただけで、空き巣(窃盗罪)の共謀なら住宅街を歩いただけで「準備行為」とされ、共謀罪で逮捕されるということです。
よく例に出される飲み屋での上司を殴りたいと盛り上がったケースで言えば、決まったメンバーで何度か飲みに行ったという場(団体性)で、そのようなグチや冗談を述べた(共謀)場合、その場で検挙はされないが翌日会社に出勤した(準備行為)時に会社の入り口で逮捕されるということです。
これのどこが歯止めなのでしょうか。
「準備行為」導入で共謀罪の時効がなくなる
共謀罪の刑罰は、共謀内容の犯罪によって5年以下の懲役・禁固と2年以下の懲役・禁固とされる見込みです。ところで、5年以下の懲役・禁固の場合の公訴時効は5年、2年以下の場合の公訴時効は3年です。(刑訴法250条の2)
そうすると、うっかり共謀とされかねないグチや冗談を言ってしまったとしても、最悪でも5年、軽い罪なら3年間逮捕されなければ、共謀罪にねつ造される恐怖からは解放されるはずです。
「準備行為」という条件を必要としないこれまでの共謀罪法案であればその通りです。公訴時効は犯罪行為が終わった時から計算されますが、話し合いが終われば共謀という犯罪行為が終わるからです。
しかし、「準備行為」が導入される今回の共謀罪法案では、そうはいきません。準備行為が実行されるまでは犯罪行為が続いていると見なされるからです。しかも、話し合いと準備行為の間の期間に制限はありません。
ある日飛行機に乗ろうとチケットを予約したら、10年前、20年前、30年前の話し合いがハイジャックの共謀だとして逮捕されるということが起こりかねないのです。その間、何度か飛行機に乗っていたとしても関係ありません。準備行為は、同種の行為の最初のものでなければならないというきまりはないからです。安倍首相は、関連性の証明は必要ないと明言していますから、どのチケット予約を準備行為と見なすか、捜査機関・司法機関が恣意的に決めることができます。
今、基地や原発に反対する市民が、数か月、数年前の行為を口実に逮捕され、獄に閉じ込められています。時効を考慮する必要がなく、本人も忘れているような何十年も前の話し合いを口実にできる共謀罪は、万能の市民弾圧手段と化すでしょう。
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