犯罪の概念変え全市民脅し政府への屈服迫るこれまで、共謀罪の構成要件(共謀罪を適用するための条件)にいわゆる犯罪組織と市民団体などを区別する規定がまったく存在しないことを明らかにしました。次いで、7月12日の政府答弁が、市民団体を共謀しない「正当な市民団体」と共謀する「正当でない市民団体」に分け、後者に対して共謀罪を適用すると明言したことを暴露しました。 しかし、法案の厳密な分析のみでは共謀罪の本質を明らかにすることはできません。現在,警察庁は、“あらゆる法律を駆使して犯罪者を摘発する”と、必ずしも違法とは言えない限界ケースでの摘発を増やしています。運動のビラを配布しただけで建造物侵入を口実に逮捕されるという状況です。たとえ有罪にならなくても,逮捕の脅しで市民の抵抗を事前抑制することが共謀罪の目的なのですから、共謀の疑いだけでの逮捕が激増するでしょう。 そこで次に法案の分析を離れて、共謀罪適用の具体的ケースを想定し、日本の法体系と矛盾する共謀罪の導入が近代刑法の原則と犯罪概念そのものを変質させかねない点を考えていきます。 ● 犯罪者だから犯罪を行うはず刑法の中には、発生した結果によって罪が異なるものがあります。例えば通常、人を傷つければ傷害罪に問われます。したがって、人を傷つけようと共謀すれば、傷害罪は15年以下ですから、その共謀の罪は5年以下の懲役か禁錮となります。 しかし、暴行を加えても傷害に至らなかった場合は暴行罪で2年以下ですから、その共謀は罪になりません。 合意した段階でまだ結果も発生しないのに、それが暴行にとどまるか、傷害になるか、どのように決めるのでしょう。結局、「徹底的に」と言ったから傷害罪などと、合意の際の一言半句をとらえて判断するしかありません。こんなあいまいな根拠で罪を決めるのは、罪刑法定主義の原則の否定です。 あるいは、これまでの生活態度が良いからせいぜい暴行の共謀だろう,傷害の犯罪歴を持つから今度の共謀も傷害だろうとなるかもしれません。誰が話したかで罪が決まるわけで、法の前の平等もまったく無意味です。 このように強引な共謀罪適用の背景には、犯罪を実行した者を犯罪者とするのではなく、犯罪を人間の性向ととらえ、犯罪性向のある人間は何もしなくても犯罪者であり,いつか必ず犯罪を行うからその前に隔離・抹殺しなければならないという、犯罪の概念についての全面転換があるのです。 すでに刑事裁判ではそれに近い認定が行われています。和歌山カレーえん罪事件では、以前に保険金殺人を計画していたから無差別殺人もやったはずと、直接証拠もなく、事件の性格もまったく異なるのに有罪を認定しました。共謀罪はそうした傾向をいっそう促進するでしょう。 (この項目について、補足の記事があります。以下の記事も参照してください) http://blogs.yahoo.co.jp/felis_silvestris_catus/14992053.html ● 犯罪を行う意思がなくても犯罪者に:しかたなく共謀これまで市民団体について検討してきました。しかし、多くの団体は市民団体のような合意による意思決定というシステムをとっていません。上から一方的に命令が下りてくるのです。例えば、暴力団が銀行強盗を計画した時に参加希望者を募ったりするでしょうか。幹部が出てきて、お前は運転手とか、一方的に命令するだけでしょう。それで、下っ端が自分の意志と関係なく銀行強盗計画に組み込まれ、何もしなくても強盗の共謀罪を犯したことになるのです。 まだ暴力団の場合は、参加する時に将来の犯罪実行を覚悟していたかもしれません。しかし、一般企業などの場合はどうでしょう。幹部が粉飾決算を決めれば、ある日突然、経理課員が有無をいわせず帳簿のねつ造を命じられます。その場で拒否すれば共謀罪にはならなくとも、業務命令違反とされるかもしれません。あとでやっぱりできないと辞職しても共謀の罪は消えません。共謀罪が通れば、労働者は業務命令が600以上の犯罪に抵触しないかいつも確かめ、いつでも辞職届を用意していなければなりません。 ● 「うん」と言ったのが運の尽き:うっかり共謀共謀罪の大きな特徴の一つは、いったん共謀したら撤回しても罪は消えないということです。ある人が,よく聞かずに何気なく「うん」と言った時に、相手が「あいつ、ぶん殴ってやろう」などと共謀罪対象犯罪の計画について言っていたら、その時点で共謀罪成立してしまいます。よく聞いていなかったからと言って撤回しても罪は消えません。 ● 求職活動にも共謀の危険:なりゆきで共謀就職説明会に行ったら実は詐欺企業だった、というケースも考えられます。恐い顔の男ばかりで詐欺などとは言えず、一緒に「金儲けするぞー」などと気勢を上げて帰ってきます。そして家から電話で就職を断っても「金儲けするぞー」の段階で詐欺の共謀が成立し、あとは自首するか,時効までびくびく暮らすしかありません。● 計画を立てるのも危険:間違って共謀計画を立てたら違法ということが分かったので撤回した。こんな場合でも共謀罪は成立します。後援会で公選法をよく知らない立候補者が投票依頼行動を要請し手みやげを持って回ろうとなりましたが、後から責任者が多数人買収になるからと中止させた。商品を輸入しようとしたら輸入禁制品だった。こうした場合,事前に実行の合意が行われています。「違法とは知らなかった」というのは言い訳になりませんから,いずれも共謀罪に問われる可能性が強いでしょう。 いくら注意しても,運が悪ければ避けられないのが共謀罪です。 ● 自首も早い者勝ち共謀罪の救済手段は自首だけです。しかも、それは最初の一人だけです。自分の意志に反して共謀してしまった。そこで自首してみたら、すでに相手が自首していた。相手の自首した時点で警察は共謀について知りますから,その後の出頭は自首にはならないというのが法の決まりです。 ● 二人が組めば共謀罪デッチあげは超簡単日本の刑事手続きには,共犯者2人の証言があればそれだけで有罪判決を出しても良いという判例があります。宗教団体など真剣な活動の団体ほど、意見対立から人間関係が険悪化する可能性が避けられません。恨みを持つ退会者が二人で組んで、「○○会は半年前、こんな共謀をした」と警察に駆け込んだら、その会の残りのメンバーがどれほど否定しても無力です。当事者の言葉は証拠になりませんし、半年前に話した内容など正確に覚えている人もおらず、会話内容を証明する証拠もないでしょう。結局,二人が共犯者証人として法廷で証言すれば,有罪ということになります。 それを防ぐためには,会合は録音して保存しておくとか,つねに対策をとるしかありません。 いつも相手の発言を警戒し,共謀を強制されないかびくびくし,つねに言いがかりに対する対策をとっていなければならない,そんな人間不信と人間関係破壊の社会を生み出すのが共謀罪です。市民を個に分断し,共感と連帯を破壊し,政府権力に対する批判と抵抗の力を奪い取ることが、共謀罪導入の狙いなのです。 共謀罪を絶対に導入させてはなりません。 |

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