日本映画の女優たち

グッドモーニングショー(君塚良一監督) 10月8日公開!

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キャタピラー 

 
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目の前の悲劇に向き合わざるを得ない妻。心の奥底に残る消せない記憶と葛藤する夫。
− 悟り切った表情、時に爆発させる感情、ベルリンが賞賛した寺島しのぶの底力 −
 
日本軍の車に乗せられ、いくつもの勲章をつけて、戦地から戻って来る黒川久蔵(大西信満)。
しかし、顔は焼けただれ、四肢を失ってしまった体で、自分の思い通りに動くことができません。
しかもまともに口も聞けない状態で、自分の意志をはっきりと伝えることもできません。
 
そんな夫の姿を目にした妻のシゲ子(寺島しのぶ)は、「ちがう〜」と叫びながら、
逃げるように家を飛び出しますが、もう夫の体は元には戻りません。夫が生きている限り、
この夫と付き合っていくしかないのです。まさに想像を絶する姿とは、このことでしょう。
戦争じゃなければ、こんな形の(四肢も言葉も失うような)大怪我をすることはないでしょう。
こんな見るも無残な形の人間を生んでしまうのも、戦争がもたらした悲劇なのです。
 
久蔵と面と向かったシゲ子は、「こんな体で生きてるって言えるの!死んじゃいたいでしょ!」と、
夫の首を絞めようとします。しかし、そんな夫が、必死で感情を伝えようとする姿を見て、
夫が生きていることを実感するシゲ子。「おしっこだったんですね」「脱げばいいんですね」と、
夫が言いたいことを妻として理解し、いっしょに暮らしていくことを覚悟するシゲ子。
 
腹が減っているという気持ち、排尿したいという意志、そして性欲。久蔵が目で訴える感情は、
もう生きるための最低限の行為だけなのかもしれません。それでも久蔵は間違いなく生きています。
軍から与えられた勲章と、その栄誉を讃えた新聞記事だけが、そんな体になってしまった久蔵に、
かろうじて生きる力を与えていたのかもしれません。
 
生きているのに、村の人たちからは軍神とあがめられる久蔵。演じる大西信満の鬼気迫る演技は、
本当にその形で生きているような印象すら与えるのです。そして、それ以上に素晴らしいのが、
寺島しのぶの演技です。心も体もシゲ子に成り切った熱演は、女優としての底力を感じさせます。
「どうしてこんな体で帰ってきたのよ!」と、本音をぶちまけるシーンもあれば、
対称的に「食べて寝て食べて寝て、それでいいじゃない」と、夫をいたわるシーンもあります。
こんな体になってしまったのは、何も夫に責任があるわけではないのです。
戦争という無益な行為を行なった国家が悪いのですから、、、。
 
そんな体での生活にも次第に慣れていく久蔵ですが、時折押し寄せてくる消せない記憶が、
少しずつ彼の心を蝕むようになります。発狂し、転がり回る久蔵。それでもシゲ子は、
そんな夫と生きていくしかないのです。生きていくために野良仕事を続けていくしかないのです。
 
やがて、戦争終結を知らせる映像が挿入されるます。広島に原爆投下、そして長崎に原爆投下。
そしてラジオから聞こえてくる天皇の玉音放送。戦争映画で何度となく耳にする玉音放送ですが、
今回は、天皇の言葉を訳したテロップが流され、言葉の意味が観る者にしっかり伝わってきます。
 
そして映し出される戦死者の数字。この戦争がもたらした全世界の死者は6,000万人。
まさに驚異的な数字です。しかし戦争で苦しんだのは、戦地で亡くなった人たちだけではありません。
ここに登場する久蔵のように、体や心に大きな傷を負ったまま、しばらく生きざるを得なかった人たち、
そして、悲しみを背負って生きることになる戦死者の家族や、シゲ子のように、
負傷した夫の面倒を看続けることになる妻たちも、大きな苦悩を味わうことになるのです。
 
たとえ暴力的な夫であったとしても、戦争さえなければ、体も言葉も不自由なく、
つつましくても普通の生活ができていたはず。ところが戦争は、そんな当り前の生活を奪ってしまったのです。
心も体もどん底に突き落とし、生きている限り消えない傷跡を残すような戦争などあってはならないのです。
そんな悲痛なる訴えが込められた問題作です。
 
 

閉じる コメント(34)

戦争って…
問題作でもこの作品のような描き方
『ハートロッカー』のような描き方
まぁ、時代が違いますが…
国民性の違いが感じられますね。
戦争をしないことを選んだ国
未だ戦争をしてる国…

2010/8/31(火) 午前 0:56 花信風

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花信風さん♪♪、日本は最後の戦争で敗戦した国、しかも唯一の被爆国。
だからこそ描ける戦争の一面がありますね。今なお戦争している国とは、
国の政策も、国民性もまったく違いますね♪。

2010/9/1(水) 午前 0:19 ffa**77

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まだ見ていませんが、内容をだいたい知っているだけに、「ジョニーは戦場へ行った」同様、覚悟がいりそうです。

2010/9/8(水) 午後 0:15 fpd

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fpdさん♪、内容的には重いですが、これも戦争の真実、という作品ですね。
なにより寺島しのぶの演技が素晴らしいです♪。

2010/9/9(木) 午後 11:50 ffa**77

誰も描こうとしなかった(避けてきた)作品ですね。
戦争って何? お国のためって? と訴えかける映画です。
目をそらさずしっかり観てほしい作品だと思います。
トラックバックのお返しをさせてください。

2010/10/3(日) 午前 1:50 [ てるてる ]

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てるてる先生♪♪、目をそらしてはいけない戦争が残した傷跡ですね。
いくら軍神だと言われても、家族にとっては決して嬉しい言葉ではなかったですね♪。

2010/10/3(日) 午後 2:21 ffa**77

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ホントまるでドキュメンタリーみたいでした。
こういうことが本当にあったろうし、五体満足で精神も含めて以前と変わらず帰ってこれる人の方が少ないんだし、そういうことを実感しました。
TBさせてください。

2010/11/9(火) 午後 10:43 かず

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かずさん♪、これが戦争というものなんですよね。たとえ健康な体で帰ってきても、
精神的にやられていた日本人は、相当多かったのではないでしょうか♪。

2010/11/10(水) 午前 0:11 ffa**77

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今年の初映画がこれと「実録連合赤軍・あさま山荘への道程」でした。
しかし、この二本を続けてみることで
この映画の本当に訴えたいことがようやくわかったと思います。
祝!キネ旬ベストテン6位。
って、もうちょっと上でもよかったかもしれないけど。

2011/1/14(金) 午前 0:49 [ 鉄平ちゃん ]

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鉄平ちゃん♪、キャタピラーは、僕もキネ旬では上位にくると思ってました。
寺島しのぶは主演女優賞も獲りましたね♪。

2011/1/14(金) 午前 2:55 ffa**77

ふぁろうさん、PCやっと復活しました^^;

昔『ジョニーは戦場に行った』を観てるのですが…描き方は違いますね!
トム・クルーズの「7月4日に生まれて」もちょっと思いましたが…
これは、その比ではない反戦へのメッセージが詰まっていましたね。
寺島さんも大西さんも凄かったです。無駄のない映像と夫婦の対比が鮮烈で…
雪の中を再上映館での鑑賞でしたが…観て良かったですv
遅くなりましたが、TBお返しさせて下さいね〜♪

2011/2/21(月) 午前 0:21 ふぇい

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フェイさん♪、PC復活してひと安心ですね!
こんな形での反戦へのメッセージは、なかなか描きづらいと思いますが、
寺島しのぶと大西信満の狂気の沙汰の熱演が、
作品のクオリティを高めたことは間違いありません。
雪の中、果敢に出かけて行っての観賞、お疲れさまでした♪。

2011/2/21(月) 午前 0:42 ffa**77

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性欲と食欲、人間の本能がむき出しになった久蔵に奉仕するシゲ子、戦争は終わってなかったですね。

2011/4/10(日) 午後 9:17 mossan

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もっさん♪、戦場での戦いが終わった後に、久蔵とシゲ子の葛藤が始まりましたね。
まさに本能でしか生きられない状態の、究極の人間像を描いたところが凄かったです♪。

2011/4/10(日) 午後 11:40 ffa**77

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戦争がもたらした過酷な現実、人の心も人生も滅茶苦茶にする恐ろしい化け物が生々しいです。お返しTBしますね。

2011/4/23(土) 午後 11:50 シーラカンス

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シーラカンスさん♪、あの体もすごかったですが、心の痛みが強く伝わってきましたね。
そして本人だけでなく、家族の心もむしばんでしまう、それが戦争と叫ぶ作品でしたね♪。

2011/4/24(日) 午後 10:32 ffa**77

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↑寺島しのぶの名演を見ておかなくては後悔しそう・・・で、やっと見ました(笑)。芋虫というタイトルにしたかったらしいですが、権利者と折り合わなかったようです。

短期間の撮影、少人数のスタッフ、低予算で、反戦映画を完成させた若松監督と、この映画に体当たりで取り組んだ寺島、大西の役者魂が凄いですね。

TBさせてください。

2011/8/21(日) 午後 4:06 fpd

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fpdさん♪、この作品での寺島しのぶの捨て身の演技は賞賛に値しますね。
もちろん大西信満の演技も、肉体的にも、精神的葛藤も凄かったですね♪。

2011/8/21(日) 午後 11:29 ffa**77

ふぁろうさんには悪いですが、反戦というなら、夫はもっといい人であるべきだと。
横暴な夫は、戦地で暴挙をするのも納得できるし、逆の立場になって、罪悪感が芽生えるのもむしろよかったとすら思えてしまいました。

2012/4/29(日) 午前 8:53 ちいず

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ちいずさん♪♪、そういう夫にしてしまったのも、
戦争が生んだ悲劇、と言えるのではないでしょうか。
いろんな意味で。戦争の不条理を感じます♪。

2012/4/30(月) 午前 0:03 ffa**77

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