日本映画の女優たち

グッドモーニングショー(君塚良一監督) 10月8日公開!

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一枚のハガキ

 
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日本という国家に嫌気がさした男と、家族を奪った戦争を憎んだ女が、最後に出した結論とは。
− 大竹しのぶが演じる戦中戦後の耐える妻、生き残ったが故に生き抜くための決意の表情 −
 
世の中には、クジ運のいい人、悪い人というのがいるものです。
時にクジ運のいい人を見かけると羨ましい気もしますが、長い人生ですから、クジに限らず、
立て続けに運がいい時もあれば、人生どん底、というほど、運の悪い時もあるかもしれません。
ところが戦時中の日本では、他人が引くクジが自分の命を左右するという現実があったのです。
 
昨年の東京国際映画祭の審査委員特別賞受賞作が、戦争映画にふさわしく夏の公開となりました。
現在99歳という新藤兼人監督の、太平洋戦争末期の実体験を基にしたストーリーとなっています。
 
物語は、1944年の夏、海軍航空隊予科練習生が入るための宿舎の清掃という任務のため、
奈良の天理教の宿舎に召集されていた100名の中年兵たちが、その掃除という任務を終え、
ある命令を受けるところから始まります。
 
その命令とは、上官が引くクジに従って、100名は次の各々の任務につく、というものでした。
クジによって100名のうち60名はフィリピンのマニラへ陸戦隊として派遣されることになります。
その一人が森川定造(六平直政)でした。フィリピンへの出陣を前にしたある夜、
定造は、二段ベッドの下に寝ていた松山啓太(豊川悦司)に、一枚のハガキを見せるのです。
 
「一枚のハガキ」というシンプルなタイトルですが、そのハガキに書かれた文章も実にシンプル。
「今日はお祭りですが あなたがいらっしゃらないので 何の風情もありません。 友子」。
 
友子(大竹しのぶ)というのは定造の妻なのですが、妻から夫へのハガキですから、
本来であれば、軍隊での生活はどうですかとか、寂しいですが待っていますとか、あるいは、
できるだけ早く帰ってきてください、などという言葉があって当然なのですが、この時代、
検閲にひっかかるので、感情を文字にして表現することができないのです。
 
それでも妻はなんとか気持ちを伝えたかった。それが「お祭り」という一語に隠されています。
終盤、そのお祭りでの思い出話がしみじみ語られるシーンが用意されています。
 
そんなハガキを見せながら定造は啓太に語り始めます。どうしても返事を書きたいが、
書きたいことをそのまま書くと、どうせ検閲に引っかかるから書けない、、、と。
そして、「もし生き残ったら、このハガキを持って友子を訪ねてくれんか」と。さらに、
確かにハガキは受け取ったこと、死んでも霊魂になって友子の許に戻ることを伝えてくれと言い、
そのハガキを啓太に手渡すのです。
 
案の定、60人はマニラに着く前に、アメリカの潜水艦によって撃沈させられます。
友子の許には木箱だけが帰ってきます。もちろん中には骨も髪も何も入っていない。
ただ「英霊」とだけ書かれて紙切れ一枚。なんと虚しい帰還なのでしょうか。
 
夫を亡くした友子ですが、年老いた夫の父(柄本明)や夫の母(倍賞美津子)から、
「この家にとどまってくれんさい。助けてつかあさい」と懇願され、二人の面倒をみるため、
嫁いできた家で、どんな不幸があっても、必死に生きていこうと決意するのですが、、、。
 
一方、マニラに行かなかった40名は、また上官のクジによって、30名は潜水艦乗務、
残りの10名は、今度は宝塚の宿舎の清掃に回されました。啓太はそこでも清掃任務になりました。
そして潜水艦乗務となったの30名は、やはりあえなく戦死となるのです。
太平洋戦争も終盤ですから、日本軍はかなりの苦戦を強いられていたこともあり、
このタイミングで激戦地に向かっても、生きて帰ることなど期待できない時期だったのです。
 
戦後、啓太は、ある志と定造から預かったハガキを持って、友子を訪ねます。
生きて帰ってきて申し訳ないという気持ちを隠せない啓太は、感情を抑えて友子に報告しますが、
夫を思い出して泣き叫んでいた友子も、次第に冷静さを取り戻します。
 
啓太と友子が出会って以降は、その関係に割り込んでくる村人・吉五郎(大杉漣)の登場によって、
暗いはずの戦後の物語にコミカルなシーンも盛り込まれ、工夫されたシナリオにもなっています。
 
いずれにせよ軍隊ですから、上官の命令には絶対服従ですが、個人を見て判断した命令ではなく、
クジによって任務が決められ、そのクジ運に恵まれたが故に自分は生き残るという皮肉な現実に、
死んでいった仲間に対して申し訳が立たないという啓太の戦後の叫びも、
どうしても消せない悲しみに絶望的になる友子も、それはそのまま反戦へのメッセージ。
 
それでも、今度は啓太が自分自身で引いたと言うクジで、啓太と友子の将来に明るい希望が見えるラストは、
日本の美しい風景が、一からの復興を目指す日本人の清々しい気持ちに、ぴったりマッチするものでした。
 

<映画の次回作情報>
 
倍賞美津子
:莫逆家族 バクギャクファミーリア(熊切和嘉監督)
2012年公開予定  共演:徳井義実、林遣都、阿部サダヲ、玉山鉄二、新井浩文、大森南朋 他
 
 

閉じる コメント(26)

こんばんは〜遅くなりました〜(・・;)
戦争がいかに馬鹿げてるか…痛切に感じられる映画でしたね。
くじ引きで命が左右されるなんて。。
夫が戦死すれば、その弟と一緒になるのが習わしだとか…
母方の田舎辺りでも当たり前だったようです。
しかも死んだと思って弟と結婚したら夫が帰還した例も。。
全てが狂ってしまう・・・大竹さん、上手かったですv
TB下さり、有難うございました。お返しさせて下さいね〜<(_ _)>

2011/8/24(水) 午後 7:01 ふぇい

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フェイさん♪、戦争そのものがむなしいのに、くじ引きによって命が左右されるとは、
ほんとに戦争は無意味だと語りかけてきましたね。
弟と結婚なんて、戦時中は女性もたいへんだったわけですよね。
そんなたいへんな女性を熱演した大竹しのぶは、今年の主演女優賞候補です♪。

2011/8/25(木) 午前 0:40 ffa**77

戦争のむなしさ・ばかばかしさをこんな感じで描けるのは
やはり実際体験した新藤監督ならではなんでしょうね。

さすがに川上麻衣子さんの次回作は、ないのですね。
『莫逆家族』ノーチェックでした、気になります。

2011/10/9(日) 午後 1:30 [ ほし★ママ ]

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ほし★ママさん♪、戦争は、やはり経験した人の話こそが真実ですからね。
戦争のむなしさを、時にコミカルさをまじえて描いていたのは、
戦後の希望を持つことの大切さを訴えているようにも感じました♪。

2011/10/9(日) 午後 11:18 ffa**77

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ようやく観れました。
この映画を撮った監督が99歳とは思えないくらい繊細でした。
新藤監督だからこそ描ける作品ですね。
そして、美しいラストでした!
トラバお願いします。

2011/11/1(火) 午後 7:02 mini_dragon

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ミニドラゴンさん♪、99歳になっても現役というのが凄いですね。
戦争体験者が描く世界だからこそ、真実が伝わってくるというものですね♪。

2011/11/2(水) 午前 0:40 ffa**77

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新藤監督は「石内尋常高等小学校 花は散れども」でも同じような
キャストでやっていたのですが、このときはちょっとくどいなーとか
思う部分もあったのですよね。
それと同じような部分が後半の大杉漣の絡んでくるあたり。
私はああいう部分がちょっと、話としては浮いてしまうようで
あまり好きではないのですが、それを除けばなかなかに戦争当時を
分かりやすく描いている印象が強いです。

特に残された二人の男女の感情がぶつかり合うシーンなどは
凄いなーと思ったりしました。

ラストのつつましく農作業をしながら暮らしていくところは
実直さを感じてよかったですね。

2011/11/5(土) 午前 1:24 エルザの大聖堂への行列に並ぶ人

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エルザさん♪♪、これは大竹しのぶの熱演が印象に残りました。
戦争の不条理、戦後の暗さを描く中で、大杉漣がコミカルなシーンを担当し、
雰囲気をやわらげてくれたという気もしました♪。

2011/11/6(日) 午前 1:26 ffa**77

これゎはるばる上京して観た甲斐がありました!
大竹しのぶさんの普段からは想像つかない役者魂籠った演技に圧倒されました。
TBお返しさせて下さい。

2011/12/14(水) 午前 11:41 るぃ

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るぃさん♪、この映画は内容もさることながら、大竹しのぶの熱演が光りましたね。
いろんな映画賞で主演女優賞候補に挙がるのではないかと思っています♪。

2011/12/15(木) 午前 0:41 ffa**77

すばらしかったです。
最後のシーン、感動しました。
大杉連が笑いをとってくれて、いいバランスだったと思います。
音楽も良かったです。

2012/2/4(土) 午後 9:03 iruka

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irukaさん♪、こういった戦争映画も、日本人の心には深くつきささりますよね。
あの最後のシーン、映画としてのまとめ方もよかったですね。
大杉漣の怪演(笑)はもちろん、大竹しのぶの熱演が印象的です♪。

2012/2/5(日) 午後 3:38 ffa**77

やっとヘタレ記事、アップできました。
余計なもの?もありますがTBさせてくださいね〜。
大竹しのぶあってのこの映画だったなって
いまさらながら思いました。

2012/2/25(土) 午前 9:45 iruka

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irukaさん♪、この作品における大竹しのぶの演技は、流石と言えるものでしたね。
トラバありがとうございます♪。

2012/2/27(月) 午前 0:01 ffa**77

「何の風情もありません」という文面ですが、風情のある愛情のこもったいい文面ですね。
大竹しのぶは一回ライブで見たいと思っています。

2012/4/29(日) 午前 8:48 ちいず

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ちいずさん♪、この一文に込められた意味の深さ、
夫婦だからこそ理解できる行間の言葉、まさにタイトルにある一枚のハガキの、
その一文に大きく心を揺さぶられますね。
僕も大竹しのぶは一度だけ生で観たことがあるのですが、
あれはもう29年前!です。

2012/4/30(月) 午前 0:00 ffa**77

やっと 一年後ですが、観てまいりました。
99歳の遺作ですが、重厚な巨匠映画になっていないところが 新藤監督のスゴサのように。
可笑し嬉しの 作品として観てしまいました(^^♪

2012/7/16(月) 午後 1:11 たんたん

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たんたん先生♪、戦争映画とはいえコミカルな部分もありましたね。
堅苦しくはないものの、反戦へのメッセージはしっかり届いてきました♪。

2012/7/17(火) 午前 0:34 ffa**77

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前半は重苦しかったですが、後半は、友子も笑顔が出てきて、救われましたね。

くじ運ですか?ないですね(笑)。

アベさんは、くじ運もなにもうまくいきすぎですね。

2013/5/8(水) 午後 8:47 fpd

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fpdさん♪、僕もくじ運が哀しいくらいありましぇん(汗)。
本作では大竹しのぶが素晴らしかったです♪。

2013/5/9(木) 午前 0:17 ffa**77

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