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二度とできない夫婦喧嘩。もう一度言われたかった言葉は「バカだねぇ、おまえは」。
− 新垣結衣、初めての母親役で、慣れない子育てに孤軍奮闘の初々しさに好感 − 「(すでに自分は)この世の人間ではございません」。
落語家のユウタロウ(大泉洋)が、スクリーンから語りかけるシーンから始まる物語。 自らの葬儀のシーンと並行させながら、妻との出会いと結婚、そして妻の出産を、 ダイジェスト的に見せてくれます。 ユウタロウのウケない落語に静まり返った観客席の中で、ただ一人、
声を出して笑っている女性・サヤ(新垣結衣)に目が留まります。
舞台の後でサヤを呼び止めると、「あの〜、何で笑ったのかな?」と問いかけます。 「一生懸命だったから」。そんなサヤからのあっけない返答。 落語が面白かったという言葉こそ聞けなかったものの、 その日から、ユウタロウとサヤとの付き合いが始まるのです。
「一生懸命だったから」。何気ないひと言ですが、そう感じて笑ったサヤ自身も、
何事にも一生懸命な女性だと伝わってくる言葉に他なりません。 いずれにしても息子のユウスケが生まれたばかりで、さあこれからという時に、
交通事故で亡くなってしまったユウタロウが、サヤとユウスケのことが気になって、 成仏できないのです。この「気になって」という言葉のしつこいまでの繰り返しから、 ユウタロウの二人への想いがひしひしと伝わってきます。 そんな中、葬儀に顔を出すユウタロウの父親(石橋凌)。
棺の中で眠るユウタロウに向かって、「バカもん!」と怒鳴る声が聞こえてきます。 厳しい父親像が伝わるシーンですが、実はこのシーンは終盤への伏線になっており、 そこにはユウタロウと両親との思い出、親子の絆がたくさん詰まっていました。 さて、ストーリーはユウタロウがサヤの周りの人間たちに次々と乗り移りながら、
サヤを見守る展開となるのですが、特にお夏(富司純子)との掛け合いに注目です。 生前のことで夫婦喧嘩となる二人。赤ちゃんができたという報告が後回しになったサヤに、
腹を立てるユウタロウがいるかと思えば、真打昇進の報告が遅れたユウタロウに、 今度はサヤが怒ってみたりと言い争いは絶えません。しかしながら、 結局は、「死んでからの夫婦喧嘩はよそう」と冷静になるユウタロウでした。 そしてユウタロウの父親の話になり、「夫婦だって秘密の一つや二つくらいはあるもんだよ」と、
開き直るユウタロウだったのですが、、、。 この夫婦喧嘩のシーンでは、ユウタロウが乗り移った富司純子の、
熟練した演技が見事です。とにかくユウタロウに成り切った言葉使いや立ち居振る舞いは、
捨て身の熱演とも言え、今年度の助演女優賞に匹敵するのではないでしょうか。 さらに終盤、ユウタロウが佐野(中村蒼)というささら駅の駅員に乗り移ります。
やはり夫婦喧嘩になってしまうものの、やがて、
「私にはちゃんとユウちゃんが見える」というサヤから発せられる言葉と、
中村蒼が大泉洋の姿に変わり、サヤを抱きしめるシーンは感動的でした。 サヤを支えてくれる温かい人たちが生きる町・ささら。シフトレンズを使った俯瞰撮影で、
ささらの町をファンタジックな空間に仕立てあげた深川監督の映像へのこだわり。 そしてこのささらの地で、息子と共に生きていく決心を告げる亡き夫へのサヤの最後の言葉。 母親としての自信と、生きる希望を感じさせるエンディングも印象的。 そんなコミカルでファンタジックな人間ドラマに仕上がっています。 <映画の次回作情報>
新垣結衣
:くちびるに歌を(三木孝浩監督) 2015年2月28日公開 共演:木村文乃、桐谷健太、渡辺大知、石田ひかり、木村多江 他 |

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