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闇に埋もれた事件を掘り起こす時、見えてくるものは、悪か正義か、仕事か家族か、それとも、、、。
− 池脇千鶴、夫にないがしろにされ、姑の介護を押し付けられ、嘆き疲れた横顔に見せる演技力 − 「今回は自分のために来てくださって、ありがとうございます」。東京拘置所の面会室。分厚いガラス越しに、
死刑囚の須藤純次(ピエール瀧)が、スクープ雑誌記者の藤井修一(山田孝之)に語り始めます。 そんな二人の面会は、須藤からの一通の告発文書がきっかけでした。 「どうしても許せねえ奴が娑婆にいるんです。すべての事件の首謀者は私が先生と呼んでいた男です」。
さらに、「自分の話を記事にしてもらって、先生を追い詰めたい」と須藤の表情は真剣です。 藤井は上司にかけあい、その真偽を確かめるため取材したいと希望しますが、いかんせん死刑囚の話ゆえ、 そう簡単に許可はもらえません。仕方なく藤井は、自ら事件の形跡を追い求めることになるのです。 本作は、実際に起きた殺人事件が基になっています。
R15+指定作品ということで、狂気なまでの殺人シーンや、遺体を処分する残忍なシーンなど、
目を覆いたくなる惨劇も多いのですが、それを敢えて映像で見せることで、 この事件の異常さが、映画を観る者に伝わってきます。
死刑囚の告発によって名前の挙がった首謀者と、死刑囚が徐々に思い出す数々の証拠から、
一人のジャーナリストが事件の真相を追いかけます。それがやがて警察をも動かし、 犯人逮捕につながるのですが、そのジャーナリストを演じた山田孝之の演技が本作では特筆に値します。
作品が後半に進むにつれて、普通の記者としての仕事の顔から、事件に向き合う眼差しが確実に変貌し、
果ては取材の域を超えて、警察の捜査さながらの行動をとるのです。
一心不乱のジャーナリストを山田孝之が渾身の演技で見せます。
さらに告発する死刑囚を演じたピエール瀧。そして事件の首謀者を演じたリリー・フランキー。
この二人の悪役へのハマリ具合も見事で、かなり過激に容赦なく殺人を次々と犯していく凶悪犯。 意外なキャスティングかと思いましたが、山田孝之同様に、二人の悪役ぶりも見逃せません。 また、ジャーナリストの一面とは別に、藤井家の家庭環境を、つまり夫としての藤井を描いている点も、
この作品の評価を高めるところです。もっとも夫とは言っても、告発された事件にのめり込んでいるため、 夫らしい姿はほとんどありません。いつも妻の洋子(池脇千鶴)から、姑の介護の辛さを聞かされてばかり。 死んでしまった人のためとも思える事件の取材に対し、洋子はいつも疲れた表情で嘆きます。
連日遅い時間まで帰って来ないどころか、その取材が行き過ぎて藤井自身が警察の世話になる始末。
「もう少しだけ取材を続けさせてくれないかな」と言う藤井に対し、洋子は反論します。 「私だけにお母さんを押し付けて、きれいごと並べないでよ。私は生きてるんだよ」と。 藤井の母親(吉村実子)は認知症で、食事したばかりなのに、すぐに冷蔵庫から食べ物を取り出したり、 洋子に世話をしてもらっているにもかかわらず、誰だかわからななり、頭をなぐったりするのです。 そして洋子は限界を感じ、離婚届まで用意するのですが、、、。 信じられないほどの凶悪すぎる一連の犯罪と、どこの家庭にでも起こりうる介護の問題。
そんな現実を対比させたシナリオですが、特に取材中に事件現場が見えてしまう藤井の心象風景。 そして、現在から7年前へとなめらかに移行していくシナリオ構成も秀逸。 凶悪さばかりが目立つ殺人事件ですが、実在の事件と告発を基にしたストーリーだけに説得力もあります。
追及されていく事件の真相、人間の心理の微妙な揺れ、それらすべてのシーンから目が離せない展開で、 十分すぎるほどに見応えある人間ドラマに仕上がっています。 <映画の次回作情報> 池脇千鶴
:潔く柔く きよくやわく(新城毅彦監督) 10月26日公開 共演:長澤まさみ、岡田将生、波瑠、中村蒼、、平田薫、田山涼成、高良健吾 他 :そこのみにて光輝く(呉美保監督)
2014年春公開予定 共演:綾野剛、菅田将暉、高橋和也、火野正平 他 :神様のカルテ2(深川栄洋監督)
2014年公開予定 共演:櫻井翔、宮崎あおい、藤原竜也、柄本明、原田泰造、要潤、吉瀬美智子 他 吉村実子 :おしん(冨樫森監督) 10月12日公開 共演:濱田ここね、上戸彩、岸本加世子、井頭愛海、小林綾子、稲垣吾郎、泉ピン子 他 |

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