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人間を導くのは本能か、欲望か。それともお金か、自由か。サスペンスの結末にも注目。
− 宮沢りえ、熱い眼差しと冷めた視線が交錯する女性像。情熱的なラブシーンも − 映画での主演は、2007年の「オリヲン座からの招待状」以来、約7年振りという宮沢りえ。
第27回東京国際映画祭最優秀女優賞をはじめ、山路ふみ子映画賞第28回女優賞、 第39回報知映画賞主演女優賞、第27回日刊スポーツ映画大賞主演女優賞、 第36回ヨコハマ映画祭主演女優賞と、ほとんどの映画賞で主演女優賞を受賞。 今後の主演女優賞レースでも、最有力候補と言っていいでしょう。 さて、平凡な主婦・梨花(宮沢りえ)が、巨額横領事件に手を染めていく物語。
仕事にも真面目、夫に対しても素直だった女性を、犯罪者にしてしまう人間の恐ろしさ。 何が彼女をそうさせたのか。どんな条件が重なったのか、そのきっかけから、 犯罪が明るみに出た後までを、サスペンスフルに描いた作品に仕上がっています。 夫婦関係のすれ違い感覚、職場の人間関係の型にはまった風景、情熱的な恋愛模様、
時に漂う緊張感など、吉田大八監督の演出手腕がすみずみまで発揮されています。 吉田監督と言えば、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(2007)で、 永作博美に多くの女優賞をもたらしたことでも実証済みのように、 女優の、それまでになかった側面を引き出してくれる監督です。 今回も、その演出力が大島優子の報知、ヨコハマでの助演女優賞、 さらに小林聡美のヨコハマでの助演女優賞につながったのではないでしょうか。 銀行でパート勤めをしていた梨花が、その仕事ぶりが評価されて契約社員となり、
外交員としてお得意の平林(石橋蓮司)の自宅に来ています。 強面で難しそうな顧客の平林ですが、外見とか言葉使いだけで人を判断してはいけません。 それが後に、梨花を勘違いさせる結果につながったりします。 また、そこで平林の孫で大学生の光太(池松壮亮)と出会いますが、
偶然の再会が続く中、二人はただならぬ関係となってしまい、光太は借金があると言います。 顧客から預かった大金を、解約したことにして横領してしまう梨花。 時を同じくして、夫(田辺誠一)は上海に転勤になり、一人暮らしとなった梨花は、 自宅を定期預金証書の偽造や偽チラシ印刷、証拠隠滅のための作業場に変えてしまうのです。 梨花が担当する顧客は、どちらかと言えばお金に余裕のある人ばかり。
また、若い行員の相川(大島優子)は、いろいろと割り切って仕事をしている女性で、
相川の本音の言葉は、梨花にとってはすべてが悪魔のささやきになってしまうのです。 直接は加担していなくても、梨花にとっての支援者的な役割を大島優子が好演です。 また、先輩行員の隅(小林聡美)は、その鋭い観察眼から、梨花を怯えさせる存在です。
終盤で梨花と隅が対峙するシーン。「どうして月が消えるの」「ニセモノだから」。 そんな会話の緊迫した雰囲気を打ち破るのは、、、。 どんな大金であっても、しょせんは紙でできたもの。いったん火がつけば燃えて無くなる。
大きなガラスであっても、たったひとつの大きな衝撃で簡単に壊れてしまう。 そんな紙やガラスの脆さが、人間の心の弱さを象徴するかのようなクライマックスですが、 その後の梨花の行動に意外性がありました。 破滅に向かったはずの主人公に一筋の光が差しこむラストシーン。
梨花の前に姿を現す人物が、彼女にとってのせめてもの救いと言えるでしょう。 <映画の次回作情報>
平祐奈
:案山子とラケット〜亜季と珠子の夏休み〜(井上春生監督) 2015年4月4日公開 共演:大友花恋、星田英利、小市慢太郎、関めぐみ、柳葉敏郎 他 伊勢志摩 :ジヌよさらば〜かむろば村へ〜(松尾スズキ監督) 2015年4月4日公開 共演:松田龍平、阿部サダヲ、松たか子、二階堂ふみ、西田敏行 他 |

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