無題
第46話
エステルがその日、朝霧家を訪れたのは単なる偶然であった。…いや、イタリアンズという存在に加え達哉がいるとなれば、偶然は故意へと変貌するのかもしれないが、とにかくきっかけは偶然だった。
−−−いつもお世話になっている司祭様へ、心ばかりのものです、どうぞご賞味下さい。
信者の老婆から渡された、些か珍しい紅茶の茶葉。エステルの紅茶好きを知る老婆は一人で消費しきれない分をおすそ分けにきたのだ。
孫からの贈り物が運悪く重なったらしく、量はかなりのもの。そこでエステルは朝霧家にもおすそ分けに来たというわけであった。
勿論、目的は茶葉を渡すこと。最近達哉が構ってくれないから寂しくなってきたわけでは断じてない。えぇ、勿論そうですとも。
「……お留守でしょうか?」
先程から達哉にばかり思考がいっていたため失念していたが、イタリ
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