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心に響く一斗缶

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YMOのアルバム、「テクノデリック」に使用されたサンプリングマシンは手作り開発された逸品だったんですね。当時、松武氏と東芝EMIのエンジニアだった村田研治氏が開発に勤しんでいました。しかし残念ですが世界初ではなかったんですね。

世界で初めてレコーディングに使用されたサンプリングマシンは、オーストラリアのメーカーからリリースされたフェアライトCMIという楽器で、鍵盤がついているから一応楽器らしく見えますが、巨大な業務用コンピューターのような風格がありました。これはトレバー・ホーンにより真っ先にレコーディングに活用され、世界初。その後も斬新なサウンドを世に送り出していくことになりました。

テクノデリックに使用されたのは「LMD-649」という名のサンプラー。この名称、松武氏のオフィス名「ロジック」の「L」、「村田研治」の「M」、「ドラム」の「D」、「ロジック」の「649」、からきているとのことです。なぜドラムなのかというと、例えば一旦ドラムパートを録音した後に、スネアだけ石油缶を叩く音に変えたい場合、その調整に大変な労力を費やすことになります。しかし、サンプラーで「石油缶を叩く音」を採取しておいて、スネアと同じタイミングで何回でも発音できるならば、作業が簡素化できるわけです。

当初のサンプラー開発、その使用意図は、ドラム音の差し替えに特化すべく短い音のサンプリングを目的としていたんですね。しかし考えていたよりも面白い活用ができるPCM録音機としてテクノデリックで大活躍するわけです。、シンセサイザーでは出すことのできないような生活音や声なども簡単に録音でき、手作りでトリガー機能をつけることによって立派な楽器として使用されたんですね。

当時はフェアライトCMI、そしてEmulatorというサンプラーが発売されていたわけですが。いかんせん高い。非常に高額だったんですね。開発者は音楽創作の新しいマシンを安価にて音楽創造の現場に届けたいという熱意のもと製作したとのことです。制作費は約50万円ほどだったらしいです。機能はサンプリング周波数32KHz、分解能12bit、最大録音時間1.2秒

私も似た機能のサンプラーを持っていますが、もっぱらこれはフレーズ研究用に使っています。いわばレコードやCDに入っている早いフレーズなどの分析用。ジャズアドリブなどの勉強に大変役に立っていました。設定レベル以上の音が入力されると、録音が自動的に開始し、録音された音にスタートポイントとエンドポイントを設定して、限られた範囲のみ再生します。LMD−649とほぼ同じ機能、そして目玉は、音程を変化させずにフレーズのスピードを変えられる部分。超絶早いフレーズもかなり遅いスピードまで落とせるので、大変重宝しました。一時期、ゴンサロ・ルバルカバのフレーズに熱中し、再生ボタンが壊れてしまったため、今あるのは2機目。

さて、LMD-649は実は大貫妙子のレコーディング現場での活用が最初だったとのことです。しかし、レコードのリリース時期としてはYMOのアルバム「テクノデリック」が早く、こちらのほうがサンプリング主体のレコーディングが行われた最初期のアルバムとして有名となったんですね。「テクノデリック」では一斗缶を叩いた音や声、工場の騒音などでリズムを構成し、ミュジーク・コンクレートという現代音楽的な手法といわれています。

アルバム全体の雰囲気は機械的ロジカルな暗さを放っています。音源取得の際、実際にミキサーの小池氏または飯尾氏が工場に侵入して音を拾っていたら工場関係者に叱られたとか。また、スタジオ内の物をいろいろ叩いて音を収録していたらしいです。プレス工場の大きな機械の音をスタジオに持ち帰り、YMOの3人に聴かせたら、その場で坂本氏がエピローグやプロローグを作り始めた、という話もあります。そして非常にカッコいい曲がいくつも生まれました。しかし、犬の糞がこびりついたような灯油缶の音が世界中の音楽シーンを震撼させたというのは皮肉ですね。

そしてライブでは81年のYMOウィンター・ライヴで使用されています。高橋氏はトリガーを発生させる黒いボックスをドラムスティックや手で叩き、金属音やノイズを発音していました。
LMD-649はすぐに改良版が作られ、Apple II互換機用のケースに納めたことから、アップルをもじって「オレンジ」と呼ばれました。CPUにz80、RAM64kb×12。その後も数々のレコーディングの現場で活躍しました。上の画像は真鍋ちえみ氏のレコーディングに使用された機材。MC-4の隣に電子レンジのようなのがあります。これがLMD-649。

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