|
I
ネット界でゲバラと呼ばれている男が掲示板に書き込みをしている。「カチャ カチャ・・・」
結婚して10年、子供が二人あるが、夫婦関係は倦怠期にある。妻との性交渉がなくなったのは下の子供がまだ腹の中に居て6か月のころ、膣から出血し妻が入院した時からだ。入院は4日ほどで事なきを得た。しかし、流産に対するトラウマは消えず、妻との性交渉ができなくなってしまったのだ。
ネットの掲示板に書き込みをしているとき、時々、女性からのPMが来る。
<ネットをうまく使うと安上がりで女性と知り合うことができるかもしれない>と漠然とした期待を抱くようになっている。
高級クラブは確かに美しい女性が揃っているだろう。しかし、その女性と最後までいくには多額の出費は覚悟しなければならない。たとえホステスが客に好感を持っていても、性交渉を持てば、客が離れていく確率が高い。だから、体を許さないで<ひょっとしたら今日はやらしてくれるかもしれない>という客の下心を利用して可能な限りのお金を引き出そうとする。金額の差はあっても場末のスナックなども似たり寄ったりだろう。
ゲバラはそんなホステスとの駆け引きにウンザリしている。
ヤホー掲示板、「健康と医学」、「男性」カテ、「中出し」トピ
「中出し最高!」
「今日、彼女の中で思い切り『中出し』しました。気持ちいい」
などなど、羨ましい限りの書き込みが貼り付けられてある。
「カチャ カチャ・・・」
「男性が『中出し』したいのは本能だ。『中出し』は最低の行為として非難している女性の書き込みがあるが、男も女も同じ人間だし、女性も本当は『中出し』してもらいたいのではないだろうか?」
「カチャ カチャ」
書き込みを終えた。
そのとき書き込みに対する返答が返ってきた。女性からだ。
「あなたは、女性のことを考えない最低の男だわ。けがわらしい」
「しかし、私は女性のことを考えるとかいうことよりも、本能のことを書き込んでいるんです。セックスをするということは、人間の深層心理に『子供を作りたい』という本能があるわけで、その本能がなければセックスをしたいと思わないのではないだろうか」
「それは好きな男の時だけで、嫌いな男に『中出し』されたら虫唾が走るわ」
「それじゃ、そんな男とセックスしなければいいじゃないか。そんな男とセックスして『中出し』され、ゴチャ、ゴチャ言っているのは、何か変だよ」
他の女性からゲバラに対するコメントが書き込まれている。
「私もあなたに同意します。セックスは子供を作るためにする行為なので、女性も深層心理で『中出し』を望んでいると思います。男性に射精されないと行けない女性もいますし・・・」
「そうですね。私もそのことを言っているんです。しかし、先ほどから私に反論している女性は、人間いや動物の本能を無視していますね。昔、いやな男性に『中出し』された苦い経験をしたのでしょうか?」
その後、意見があった女性とメッセンジャーのPMでの会話に移った。
「私は大阪出身の30代の男性です」
「あら、私も30代なのよ」
「どちらにお住いになっているんですか」
「岡山です」
「結婚してるんですか?」
「離婚しているのよ」
「子供は・・・」
「男の子が二人いるわ」
一瞬、<子供が居るのか>と落胆したが、所詮自分も既婚者で子供がいるのだから馬鹿げている。日本は男尊女卑の土壌にあり、男性は白紙状態の女性を好む。ゲバラがアメリカの大学に留学している当時、学校に子持ちの女性と付き合っている友達がいた。彼は若干20歳だったが「それが『アメリカのやり方』だよ」とニコッと笑ったのを思い出す。そんな経験をしてきたゲバラにしてもまだ日本的感覚から抜け出せないでいる。
「そうなんだ。じゃ俺と同じだね。でも、子供が居るけど離婚はしてないんだ」
離婚している言えば良さそうなものだが、そんな小さな嘘をつかないというところがゲバラのいいところだ。かといって全然嘘を付かないということもない。
「で、今は彼氏いないんですか?」
「少し前まで彼氏がいたんだけど、別れたばかりよ」
「どんな人」
ゲバラは自分に手が負える女性であるか探るために軽いジャブを繰り出している。
「私が働いている会社の社長なの」
「へ〜〜〜」
「まだ30代手前で、肩で風を切って歩いているわ」
「で、何で別れたの?」
少し嫉妬を感じながらログを読んでいる。
「肉体関係が出来たら直ぐに振られちゃったわよ」
「女性関係が激しいんだ」
「そうね。あそこに真珠も入っていたし・・・」
「えええ、やくざじゃないの?」
「そんなことないけど、若い時にその手人に憧れたことがあるんじゃないかな」
こうして、意気投合した二人はお互いにメッセンジャーの友達登録をし関係が始まった。
つづく・・・
|