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遺跡からパパントランに帰ってきて意味もなくポサリカに行くことにする。パパントランのほうが人口も多くメキシコシティへも直接バスが出ているのだが、いい旅行書を持たない弊害がこういうところで出てくる。
ポサリカは石油産業の中心であるが、観光客にはあまり縁のない町のようだ。何もすることがないので町をぶらぶら歩いてみたが、特徴のない典型的なメキシコの地方都市だ。
こんなところにいても仕方がないと思い、直ぐバスステーションに行く。クリスマス休暇が終わるからか、構内には長い列が出来ている。列に並ぶが何時間たっても自分の番がこない。いよいよチケットが買えそうなのに後ろから押してくるので横の方へ押し出されてしまう。押し出された人々がまた戻ろうとして窓口の前は大変な事になっている。下手したら圧殺死する事故が起こるかもしれないほどだ。
私も押し出され窓口の前に戻ろうと格闘して分度器形になっている窓口のガラスを掴んだとき、ガラスが「ばり〜」と割れてしまった。右手を見ると血が流れている。バス会社の職員が大きな声でまくし立てているので、やばいガラス代を弁償させられたらどうしようと思った瞬間、逃げていた。手の怪我はたいしたことないようだ。
物価の安いメキシコでガラス一枚ぐらい弁償させられてもたいした出費にはならないだろう。しかし、私はスペイン語が話せない外人なのでいくら吹っかけられるかわからない。そのことが脳裏をかすめたのだ。
バスステーションの外に出て、隣にもバスステーションがあることに気が付く。よく見てみるとプリメラクラッセ(一等乗り場)と書いてあり、中を見みると人があまりいない。いままで居たところは、二等バスの売り場だったのだ。
窓口で聞いてみると、次の日のメキシコシティ行きのチケットがすんなり買えてしまった。それも料金が2ドル(300円)ほどしか変わらないのだ。何だこんなわずかな料金差で一等に乗れるのかと苦笑したが、一般のメキシコ人にとって2ドルは大金なのだ。
出発日が次の日になったので、バスステーションの裏にあるホテルにチェックインした。安ホテルらしく1階は洗濯や炊事ができるようになっていて、若いメキシコ人たちが洗濯や料理をしていた。彼らは大変フレンドリーで、その中のある女性がいろいろ質問して来た。こちらはスペイン語が話せないし、向こうは英語が話せないので、絵に描いた餅状態だ。しかし、孤独な一人旅ではどういう形にしろ、人とコミュニケーションをとれることは嬉しいものだ。
翌朝、バスステーションのチケットカウンターで、拙いスペイン語を使いバス会社の社員と話していると、横にいた可愛い女性に声を掛けられた。目がクリクリとして典型的なメスティーソの顔だ。旅行書に載っている基本的なスペイン語では会話が5分と持たない。しかし、こちらに好意を持っているのは伺えた。このチャンスを逃してはいけないと、持っていた英西辞書(英語とスペイン語)を必死に引きながら会話をした。
しばらくすると、父親が向こうにいるから紹介するというので、分けのわからないまま付いて行くと、その父親が困惑の表情を作っている。こちらも、それ以上に困惑しているのだが、彼女は「我関せず」という感じで、いろいろ話しかけてくる。
よ〜く話を聞いて見る、彼女は16歳で看護学校に通っているとのことだった。16才なので、父親が困惑していたのも理解できた。私も16才と聞いて思わず笑ってしまったが、少し残念な気持ちがするのは仕方がないだろう。凄く可愛い女の子なのだから・・・。
とりあえず、彼女が住所と電話番号をくれたのだが、電話してもどういう風に会話していいのか悩んでしまうだろうなと思いながら、バスに乗った。
人生とはこんなもんだろう。時期が熟していなければ、好意をもった男女といえども付き合うことができないし、地域的な問題、言葉の問題、年齢的な問題が弊害で、成るものも成らないのである。
つづく・・・
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