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未来を予測する?
「宇宙エレベーター」という空想上の「乗り物」の「概念」を発表した人物がいる。
彼の名はアニリール・セルカン。
ドイツ国籍、トルコ生まれ、トルコ初FISオリンピックメダリストの元スキー選手、トルコ人初の宇宙飛行士候補、現在は、東京大学大学院工学系研究科建築専攻の博士。
トルコ語、英語、日本語、イタリア語など8ヶ国語を操り、日本科学未来館の全天周映画「宇宙エレベーター」の監修、など才能あふれる、しかも、その発想が極めてSF的でユニーク、それだけに彼の活躍がひときわ目をひく。
彼の現在の研究テーマは「インフラ・フリー」。
「朝・顔を洗おうと思ったら水が出ない、水道局に電話をすると電話が通じない。
大都市、地方どこでも毎日当たり前の生活を維持しているのがこうした電気、水道、通信というインフラ、インフラの機能が止まると動じに、我々の生活はもはや維持できない。」と指摘する。
そこで、「インフラに依存しないで暮せる空間技術(INFRA-FREE LIFE)」を彼は研究テーマとした。
この研究の原点は宇宙飛行士としての訓練を受けたときにNASAの施設内で目撃した「宇宙ステーション」にある。
宇宙空間では「電気、エネルギー、食糧のすべて自給しなければならない。そのために開発されたのが宇宙ステーション」であり、この自給自足の「考え方」を地球上で再現するのが彼の研究「インフラ・フリー」に結びついている。
こうした考えの根底にあるのが「未来を予測する手法」
そしてこうした彼のダイナミックかつ話題性の高い、ユニークな発想の原点は世界中で大ヒットしたSF映画そのものが根底にあるという。
21世紀世界を予測した映画「2001年宇宙の旅」では、高速道路、空を飛ぶ車、最新鋭の交通輸送などがすでに実現されている。
「バック・ツー・ザ・フューチャー」のエメット・ブラウン博士が開発した「タイムマシン」。 この「タイムマシン」の車「デロリアン」では現在から過去に、そして現在から未来へと時空の壁を乗り越え自在に飛び回ることができるがまだ、この装置は残念ながら実現はされていない。
SF映画に魅了された彼には4つの映画が彼独自の未来予測の「発想のルーツ」になっている。
それまで誰もが知らなかったものすごい技術を手にいれることでライフスタイルががらりと変わる「スター・ウオーズ」、石油争奪戦で社会システム崩壊を描いた「マッド・マックス」、水とエコの未来図を描いた映画(タイトルは聞きのがした)、蒸気エンジンを発明、人間がこの新たなエネルギー源を手にいれたことから「自分たちの力以上の力を発揮する」ことになった「マトリックス」。
なかでも彼の現在の研究に影響を与えたのは「バック・ツー・ザ・フューチャー」の「タイムマシン」の車「デロリアン」に動力エネルギーとして「残りのビールや果物の食べかす」を入れるというシーンからも、彼は自給自足、ごみ処理によるリサイクルの生活空間「インフラ・フリー」の研究に結び付けるアイデアを得ている。
「エネルギー・水、食糧」の3つを21世紀の「三種の神器」として指摘する彼は、こうしたSF映画に大いに触発されている。
地球温暖化の問題とされている二酸化炭素、その排出抑制と水の再循環利用に焦点をあてた彼の研究では毎日の生活で廃棄する「ごみ」も「お宝」となる。
彼の研究事例として挙げられるのが「インフラ・フリー」ユニット。
各住空間の床下に「上下水道・排水再処理」ユニット、「電気の発電・送電」ユニットを組み込み」、「ごみ処理」と「エネルギー変換」ユニットなどをそれぞれコンピューターの基盤のように、ユニット化している。
この特色は、各家庭の人員構成、札幌、東京などのようにそれぞれ家庭の置かれた地域、環境特性ごとにユーザーに合わせた「熱・照明・料理、冷房」などのユニットを組み替えた「プラットフォーム」として、環境とともに組み替えることで、異なる環境でも対応できる「インフラ・フリー」ユニットが出来上がるという。
時はいま、世界全体が地球温暖化について真剣に取り組み、未来の地球環境がどう変貌するかが重要な課題となっているだけに、彼の究極の「リサイクル」の研究テーマはまさに時代のニーズを受け止めるテーマともなっている。
世界的に名高い「ごみ問題」で苦悩する「ナポリ」からは、「ごみはお宝」を標榜するだけに、さっそく大学の客員教授としてのお誘いがあり、ナポリ、ローマで講演を行ってきている。
人間が自然に生きてゆく上で、必要なことは「サバイバル」であると彼は言う。
現実におきている様々な問題、そうした問題に対して、それぞれの専門分野で開発されている先端技術を統合させ、どこまで統合するか、様々な「シナリオ」と「結果」を考察し、うまく循環させること。
そして、実現にむけて問題となるコストについては、「サバイバル」のために約に立つ技術、仕組みを出来るだけ安くする方法を研究することが最大の課題だと言う。
イタリアルネッサンスの大発明家・彫刻家・そして画家の「ダヴィンチ」も当時、木製クレーン、アルキメデスの揚水装置、飛翔機械・ヘリコプター、装甲車、火薬を使った新兵器、木製の潜水艦、木製の車などを発明している。
こうして誰もが気がつかず取り上げもしなかった数多くの斬新なアイデアをスケッチや模型を使い具体的に見せることで時の権力者や後の時代でも誰もがおどろくような新発明を行い、そのいくつもが実現可能な技術、マシンともなっている。
それだけにセルカン氏のSF的な発想も未来を予測した研究テーマ、世界各地での取り組みも、どれだけダヴィンチに追いつくことができるかが楽しみでもある。
講演会「宇宙の視点から見た未来の地球環境」より
2008年7月23日 イタリア文化会館アニェッリホール開催
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