ライダース!

バイク業界にお仕事で帰ってきました!プライベートもそろそろ始動?!

プロジェクト ''Z''

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5・苦悩

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職人は裸のZを目前にじっと佇み、物思いにふけっていた。



かつて泡と消えた好景気。

職人が修行時代を過ごした板金工場には、居並ぶ名車と多数の従業員がひしめいていた。
人々はこぞって高級車を買い求め、少しの傷も気にし、修繕に余念がない。
工場もまた、好景気に沸いていた。

オールドカーもまた例外にあらず。
経済力にものを言わせ、レストアの依頼が引きも切らずに来ていたあの頃。
一般作業は従業員に任せ、社長が1人楽しんでレストアを手がけていた。

職人達はそれを横目で盗み見つつ、自分の作業をしたものだった。





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今にも抜け落ちそうな床

野に咲く可憐な野菊のように
易々と手折る事が出来そうな鉄のなれの果て

それが、今の現実

それが、一事が万事







ノウハウは手に入れた。

技術も身に着けた。

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作業は己1人きり。

生活の為の仕事も、レストアも。

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小さな工場

大掛かりな工具はなく、全てが手作業

手を貸す者は誰もいない

もはや後戻りも出来ない



自分はこの仕事をやり遂げることができるのか?



普段は過剰な程の自信をもつ職人が、久しく味わう感覚であった。

4・「生」へのオーラ

眠りについた彼女の時間は、ゆっくりと流れていった。

一つ、また一つと部品は取り去られ、その全貌が徐々に露わになってゆく。

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男が当初気にしていたのは、この フロアーパネル

長い年月男たちと人命の重みを支え続け、限界を迎えるのも時間の問題であったことだろう。
職人は一瞥し、全摘交換が必要だと判断した。
しかし、一体どこまで部品が入手できるのであろうか。

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心臓と共に、その走りを支え続けた。

こうして眠る日が来るとは

思いもかけないことであった。





全てを取り去られてもなお、その輝きは失われない。
丸裸になりつつも、その車体からは怪しげなオーラがほとばしる。

名車の所以、造形美 とはこのことか。

走りたい
野山を、コンクリートジャングルを―

車として生まれた、その「命」が、今直息づいていた。

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ボルトを緩め、部品を外す。

ここまでは、誰にでも出来る仕事。

そしてここからが、職人の仕事であった―

3・休息

男の想いを汲み、職人は時間外で仕事を受けた。

時間に追われた一時的なレストアは、もはや意味を成さない。
金に任せて全てを変えていくことも、無意味であった。

納期は、無制限。

男たちが選んだ道は、長い、長い道のりだった。



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幾重にも重ねられた塗装は、彼女の歴史を物語る。

しかしながら彼女の胎内は、生まれたままの純白であった。
着飾ることでしか美しさを保つ事が出来なかった彼女は、疲れきっていた。

―健康美―

そんな言葉とはかけ離れ
老いと戦う彼女の肢体は、哀れであった。



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彼女の心臓に与えられたその名前は 

          L24





生き急ぎ、酷使してきたその肉体は

生まれ変わり

そしてまた彼女を受け入れる―







彼女は、しばしの眠りにつくこととなった。

2・最後の男

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職人は、塗膜を少し剥いでみた。

灰汁色にくすんだ白い塗装は、実に七層に亘る塗装の最終形態でしかないことが判った。





生まれたての彼女は、正に純真無垢の純白であった
気品と知性、力強さを併せ持ち、たちまち彼女は世の男たちを魅了した

ある時は深紅のルージュをひき
そしてまたある時は流行りの服を身に纏い
一夜限りの男達に次々と抱かれていく

いつしか彼女も年老いて、男たちは若さを求め去っていった

人の手に在り走ることでしか身を立てることが出来ない彼女は、さらに煌びやかに飾り立てられ
そしてまたその胸に男を抱き、生きる証を手に入れる―

そう、まるで娼婦のように





そんな彼女の半生を物語るかのような、七色であった。



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―美しさとは、外見に因らず―


幾人もの男達に抱かれながらも
彼女はその美しさを失うことはなかった。

「走る為に生まれた」
その誇りを失わなかったように。






お前が最後の男になればいい

職人はそう言った。



俺が最後の・・・

そう、"Z"だ



職人が提示した金額は、200万円を切っていた。
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時は遡ること2001年、ある板金塗装工場に1台の車が入庫した。

オーナーは、日産自動車にメカニックとして勤務する
ショートホープと矢沢永吉、そして 「フェアレディ240ZG」 をこよなく愛する寡黙な男だ。

床が抜けたので直して欲しい、というオーダーだった。





車齢約30年、床のみならず各所が錆で朽ち果てている。

床を直したところで、次々に補修が必要になることは間違いなかった。

職人は言った。

レストアする気はあるか



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車体の状態は良くない。

フルレストアをするとなると、
相応の時間と金額がかかることであろう。

通常の見積もりで300〜400万円
・・・といったところか。



男は独身ではあるものの、そう易々と300万円という金額を支払えるほど裕福ではない。

しかしながら、Zにかける情熱だけは溢れるほど持っていた。

お願いします

男は、職人にそう告げた。

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