First_Noelの宇宙工学日記

ゆっくりでも止まらなければ結構進む.私の専門は「未来の宇宙を創造する」ことです.

Hard & Gadget SF

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ハードなんだかガジェットなんだかなSF短編を気の向くままに..
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風土病

宇宙移民の時代が始まった頃,多くの新天地が待っていると我々は思っていた.
幾つかの恒星系で地球型の惑星が発見され,多少の相違はあるにせよ我々の生存は可能と判断されて,
多くの宇宙船が旅立って行った.
それから数十年.
幾つかの開拓惑星からの報告が電送されて来たところで事態は「再考すべし」と告げていた.

まず惑星Aからの報告.
ここは地球と比べて,大気組成はほぼ同じであるが気圧が若干高かった.
一呼吸で多くの酸素を取り入れられるため呼吸は自然と浅くて済んだ.
激しい労働を行っても,深呼吸をひとつで身体が蘇るようであった.
沸点が高いため,茶を淹れる際の湯の温度の見極めが移民たちの最重要事項であった.
厚い大気によるレイリー散乱によって晴天の昼間の頭上には見事な明るい緑色の空が広がる一方で,
朝夕の空と太陽は悲しげな深紅,それも薄暗いものであった.
地上へ届く紫外線量も厚いオゾン層のため地球より少なく,植物は紫外線よりも青い光での光合成に
努めるために,葉緑素ならぬ葉紅素を有し,そのため山々はいつも紅葉しているような様相であった.
数年後,移民たちは次々と風邪に苦しめられるようになった.
楽な呼吸が災いし,呼吸筋が急速に衰えた結果,地球では軽い風邪であろうものが,
老いも若きも致命的となる病気に分類されるようになった.
また,酸素の過剰摂取により移民たちの体格は大型化する一方,急速な老化様の様相を呈していた.

次に惑星B.
ここは地球とほぼ同じ大気圧であったが,酸素の割合が若干多かった.
近隣の恒星系であるがために惑星Aからの情報は既に伝えられていたため,減圧室での生活や,
リミターと呼ばれる呼吸調整具を用いた野外活動を行うと共に,徹底した風邪予防が講じられていた.
しかし惑星Bの移民たちは時折感じる眩暈に悩んでいた.
それだけならば特に支障を来すまでとはならなかったのであるが,やがて頻繁に気絶する者が多く
出始め,次第に脳卒中での死亡数が有意に上昇して行った.
呼吸により血中酸素濃度が継続して高く,相対して体内の二酸化炭素濃度が減少していたため,
常に血管が収縮して高血圧を誘発したことにより,脳内の血管が段々と硬化し,
脆くなれば出血し,或いは脳内血流が減少することで血栓を生じやすくなっていたことが原因であった.
ここでも移民たちの大型化と老化様症状が顕著に表れていた.

惑星C.
ここは気圧や酸素濃度は地球とほぼ同じであったが,二酸化炭素の割合が若干多かった.
惑星A,惑星Bからの報告では呼吸に際しての酸素量が問題とされていたことから,
惑星Cではそのようなことは起こらないと判断されていた.
しかしやはりここでも移民たちは眩暈や腕の脱力症状に悩まされていた.
入浴後や就寝時に脳梗塞を引き起こす者が増えていたが,それよりも深刻な状況であったのは,
ちょっとした発熱,それも微熱の範囲にも拘らず数時間の内に死亡する例が増えて来たことであった.
血中の二酸化炭素濃度が継続して増えたことにより血管が拡張していたため,血圧が下がる状況での
脳梗塞の誘発の一方で,発熱時には脳温が上昇したことによる脳細胞の死滅が原因であった.

最後に惑星D.
ここは気圧も大気成分も地球とほぼ同じであったため,惑星A,B,Cのような問題は起こらないと
されていた.ただ,地表での重力が若干小さかったことが4つの惑星の中で最も悲劇的な事態を招いた.
ここでの生活は一日に10回を超える排尿が常であった.
移民たちは脱水症状を恐れ,水分摂取に努めることが徹底されていた.
彼らの体内では,若干の低重力下での通常の血流の維持によって脳内の水分量が増加し,
それを排尿で均衡するところへ脱水症状対策のための水分摂取によって脳圧の亢進が起こっていた.
脳ヘルニアによる呼吸停止,尿崩症から来る心臓障害,脳虚血による意識障害など,
極めて多種多様の致死症状に苦しめられることとなった.

これらの報告は宇宙時代の風土病とも言うべきものである.
地球に最適化した生物にとって,例え少しの違いであっても環境の異なる場所での恒常的な生活は
慎重にならなければならないことを示している.
その原因が大気や重力にあるため,過去,我々が地球上での風土病を克服した浄水や殺菌と言った
手法が使えない.
地球に似た星は確かに沢山存在している.
だからと言ってそれらは決して,第二の地球にはなり得ないのである.
移民たちはやがて何世代もかけて,その環境に適応出来る者たちが生き残り,活動を続けるであろう.
そのときの彼らは最早,帰属意識だけではなく身体的にも我々とは別の人間となっていることだろう.
果たしてこの状況は,かつて我々が思い描いた地球人の宇宙進出,発展であると言えるだろうか?
彼らは地球に来ることがあれば,「地球の風土病」に侵される宿命なのである.

【参考資料】
1. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BC%E6%95%A3%E4%B9%B1
2. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%AF%E8%A6%96%E5%85%89%E7%B7%9A
3. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%9C%E8%89%B2
4. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8E%E6%8F%9B%E6%B0%97%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
5. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E8%93%8B%E5%86%85%E5%9C%A7

三角関係

二人は愛し合っていた.
しかし足りないものがあった.

「人を見付けないとな」
「そうだね」

二人は疲れ切っていた.
自分たちの繁栄を築くための道程はまだまだ先が長いと思われた.

「ときに人は,他に世界にいるんだろうか?」
「いなくてたまるもんですか.絶対いるって信じてる」

二人は長い長い旅をした.
そして遂に,人を見付けた.

「やぁこんにちは,そこの人」
「あなたと私たち,一緒になりませんこと?」

二人は親しみを込めて問い掛けた.
その人は答えた.

「やだね.あんたはいいけど,こっちの人,好みじゃないもん」

二人は失恋した.
だから落ち込む暇もなく旅を続けなければならない.

二人は落胆の中にあっても,束の間,バイブルを取り出して読み始めた.
日課だからである.

『はじめに神は天と地とを創造された.
 地は形なく,むなしく,やみが淵のおもてにあり,神の霊が水のおもてをおおっていた.
 神は「光あれ」と言われた.すると光があった.
 ・・・・・
 神は自分のかたちに人を創造された.
 ・・・・・
 また主なる神は言われた.
 「人がひとりでいるのは良くない.彼のために,ふさわしい助け手を造ろう.」
 さらに神は言われた.
 「もう一人造ってやろう.」』

「天と地は二つなのになぁ・・・」
「あの方は思い付きでやるからねぇ・・・」

二人の旅は絶妙な三角関係を築くまでまだまだ続くのであったが,
二人が出逢い,愛し合えるまでにも長い長い時間を要したことを考えれば,
この惑星の総人口がひと桁の時代,三重螺旋の遺伝子を持つ三性の生物として発生した二人を,
自分たちは間もなく絶滅するのではないかと言う不安が苛むのであった.

【参考資料】
1. http://ja.wikisource.org/wiki/%E5%89%B5%E4%B8%96%E8%A8%98(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)

視覚

あの連中が初めてやって来たときには,それはもうみんな大騒ぎだった.

何せ,いきなりどでかい宇宙船が現れたかと思えば,大都市のど真ん中に降り立ったのだから.
街は超厳戒体制で,どう対応して良いか分からないが取り敢えず宇宙船を包囲する軍隊の大部隊に,
怯えながらも物陰から撮影に挑む世界中のテレビ局,その内,暫く宇宙船が静かだからと,段々と
俺ら民間人までもがうじゃじゃと集まって,まるで地面に落ちた飴玉に蟻が群がるような情景だった.

突然宇宙船の扉が開いたときには,みんながひどく意表を突かれた.
なぜなら,あれは宇宙人なんだろう宇宙船なのだから,なのにそこから降りて来た連中はまるで
俺の周りにいる地球人と全く同じ,それが大勢でどやどやがやがやと喋くりながら降りて来たのだから.
さすがの俺もそれには凄く驚いたものだがその直後,そこにいたみんなと同じように俺は失望した.
もう脱力するぐらいにがっかりしたのは,俺もみんなもそれを見たことがあったから.
観光地で旗を持ったガイドに連れられた,平和な大勢の日本人旅行者の一群を想像してくれたまえ.

しかし連中はやはり宇宙人だった.
どこぞの星から避難だか移民だかではるばる地球にやって来たらしい.
詳しいことは分からないが,政府やら国連やらと協議した挙句,
ある者はプール付きの一戸建てに,ある者は駅前徒歩3分のマンションに住み始めた.
俺の近所にも一人引っ越して来た.
毎朝,俺が会社に行くために駅へ歩いていたら,おはようございます,今日もいい天気ですね,なんて,
芝生の手入れをしながら声を掛けられたものだった.

それだけではない.
なんと連中は俺らと,つまりその,結婚して子供をもうけることが出来ることが分かったのだった.
連中も俺らのことを憎からず思っていたようで,だから俺もその内,芝生の手入れがとてもうまい
一人と恋に落ち,そして結婚したのだった.

夫婦生活は,まぁよくある幸せな毎日だった.
冗談を言い合う日があったかと思えば,大喧嘩してしまう日もあった.
でも俺たちはなかなかうまくやっていた.でもそう思っていたのは,実は俺だけだったのだ.
いや俺だけではない.地球人たちだけだったのである.

ある日,可愛らしい妻によく似合うドレスを買って帰った.
ただいまを言いながら,出迎えた妻にドレスの箱を手渡したら,妻は最初とても喜び,
そしてドレスを見た瞬間,大きな溜息を洩らしながらこう言った.

「あなたは毎日毎日,吐き気を催すとんでもないものばかりを愛でていましたが,
 私はあなたの趣味にはもう付き合い切れないのです.私はもうここにいるべきではありません.」

結局俺は訳の分からないまま離婚となった.
聞けば,世界中で同じような恋愛と離縁が起こりまくっていたらしい.
やがて連中は一斉に,元いた宇宙船に全員が乗り込み,そして地球から逃げるように出て行った.

地球人全員が不思議に思って仕方が無かったのだが,その内,こんなことが判明した.
連中の何人かが,まるで実験体ですねと不満を言いながらも,綿密な身体検査を受けたらしい.
その結果分かったこと.そして俺も含めた大勢が味わった離婚劇の根本原因だと判明したこと.
それは連中の故郷が回る恒星が,俺たちの太陽よりも二千度ほど表面温度が高いと言うことだった.
ヘルツシュプルング・ラッセル図で言えば,ほんのちょっとの差異だったのではあるけれど.

俺たち地球人の初めての結婚は,宿命と言うべき育ちの違いを乗り越えることが出来ず,
感覚的な好みの違いの積み重ねによって,こうして敢え無くも破綻した.
やはり服の趣味を合わせるならば同じG2V型のところの宇宙人に来て欲しいと,みんながそう思った.

【参考資料】
1. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E7%B3%BB%E5%88%97%E6%98%9F
2. http://www.oao.nao.ac.jp/stockroom/extra_content/story/ippan/atlas/atlas05.htm
3. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD
4. http://www.ne.jp/asahi/photo/uv.index.htm/
5. http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/uvir/hana_uv.html
[cited on Nov. 26, 2009]

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