粒焼次郎の落書夜話

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The ミイラ

一昨日、『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』をDVDで観た。何度も書いていることだが、私はダラダラと続く安直なシリーズ物が好きではない。だから、これを観るに当たってはかなり逡巡したのだが、やはり止めておけばよかったというのが率直な感想である。

『ハムナプトラ』というタイトルはカタカナだが、実は純粋な邦題である。原題は『The Mummy』(ミイラ)というシンプルな題名で、これは戦前の映画『ミイラ再生』のリメイクだからなのだそうだ。邦題は、古代エジプトの“死者の都”を指す「ハムナプトラ」から採られた。「ミイラ」だけだと安易に見えることや、イメージがよくない(ホラーなどと勘違いされる)というのが理由ではないかと想像する。そうしてみると、中国が舞台になっている第3作の場合、エジプトの地名をタイトルにするのは矛盾ということにもなる。邦題を考えた人たちは、まさかシリーズがこういう方向へ進むとは思っていなかったに違いない(というか、シリーズ化自体を想定していなかったかも)。

ちなみに、第1作の原題にはサブタイトルが付いていなかったが、邦題では『失われた砂漠の都』という副題があり、第2作の原題はこれまた『The Mummy Returns』(帰ってきたミイラ)とシンプルだが、邦題では『黄金のピラミッド』という副題になっている。今回の第3作では、原題にもサブタイトルがあるものの、『Tomb of the Dragon Emperor』(龍の皇帝の墓)というもので、邦題は少しひねってあるのが分かる。昔は洋画を日本で公開する際、しばしば独自の邦題を付けていたが、近年は英語の分かる人も増えてきたせいか、原題をそのままカタカナにして公開することが多いようだ。それぞれに事情が違うので単純比較はできないけれど、こういう工夫はもう少しあっていいと思う。

さて、内容。まだ新しい映画だから、核心に触れる部分は書かないでおこう。しかし、色々なレビューで酷評が吹き荒れたのは、理解できる。始皇帝をモデルにしているのは一目瞭然だが、もちろん(?)歴史考証はいい加減。兵馬俑を、呪われた本物の将兵としているのはいいとして、皇帝の陵墓がずっと見つかっていなかったという設定はデタラメだ。始皇帝陵は築かれた当初から場所がしっかり伝承されていて、忘れられるには巨大過ぎる。そもそも砂漠の中じゃなくて、森に覆われているし。万里の長城も、秦代にあったのは“巨大な土塀”みたいな簡素なものに過ぎないが、映画に出てくるのは、明代に造られた北京近郊の八達嶺である。コジツケはできるけれど、上海と皇帝陵と万里の長城の位置関係もメチャクチャだ。

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エジプトの知識が少なくて分からなかったが、恐らく第1・2作にも、この手の無理はたくさんあったのに違いない(西洋人の場合、自分たちの文明の源流である古代エジプトには、中国などより詳しい可能性があるが)。でもまぁ、これはフィクションだし、(秦という国名や戦国時代の設定は出てくるものの)史実上の始皇帝だという説明はないので、まだいいとしよう。主人公の息子が大学生なのに、主人公が前作からあまり老けていないために、親子が兄弟みたいに見えることも、メイクの失敗ということで見逃そう。

ネット上でも既に指摘されているが、『ナルニア国物語』『ライラの冒険』などに出てきそうなCGの怪物が、実に安直に登場するのは、共感しにくい。シリーズ物で嫌なのは、創る側も観る側もこういうことに慣れていってしまうため、怪物の使い方に勿体をつけなくなることなのだ。皇帝も強大な魔物に化けるシーンがあるのに、魔物の姿になっているのはほんのわずか。終盤の戦いでこそ魔物になって、その力を発揮すればよさそうなものなのに、まるで忘れたかのように、人間として剣で戦うのである。それと、第2作でも感じたことなのだが、死者を安易に復活させ過ぎている。スケールの大きい戦闘シーンを描くためには必要だったようだが、復活の儀式や道具、秘境などがあまりに簡単に手に入るので、これでは死者の再生があちこちで起きて、収拾がつかなくなりそうだ。洋画のコンテンツ力が減退していると言われるのは、こういうことなのだろう。

一番の消化不良は、皇帝の復活を狙う現代の将軍(中国人)の、動機がよく分からないことである。世界に秩序をもたらすためということだそうだが、その役目を果たすのが、なぜ2000年前にミイラになった人物でなければならないのか、必然性は最後まで理解不能。陰謀を巡らす能力があるなら、自分が永遠の命を得て世界征服をすればいいのでは、と思ってしまった。将軍の側近である謎の女性将校も、正体が見えないまま終わっている。

予告はないが、シリーズはどうやら続きそうだ。今回の終わり方を見る限り、次作はペルーが舞台らしい。でも、今作以上に駄作になりそうだから、恐らく観ないだろうな。

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