FLOATING WEED

好きな音楽や映画、漫画、サッカーなどのことを書き綴っていこうと思います。

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視線(4)

「彼女が嫉妬深いことはそのころから感じていましたが、多少の束縛は愛情の裏返しだと思っていました。」


「彼女の行為が行き過ぎていると感じることはなかったのですか?」

そこまで静かに聞いていた大崎は尋ねた。


「世間には、恋人の携帯を勝手にみる奴がざらにいるじゃないですか。
少なくとも彼女はそういうことはしていなかったですし、その頃までは異常なものを感じることはありませんでした。」


「なぜ、携帯を見ていないとわかるのですか?
見たか見ていないかは確認が難しいと思うのですが。」

そう聞きながらも大崎は別のことを考えていた。

男は“そのころまでは異常なものを感じなかった”と言ってている。
つまりその後何か異常な行動があったと考えるべきだろう。


「携帯にはいつもロックをかけていましたから。
別にやましいことがあるわけではないけど、なんとなくいつもロックをしているんです。
嫉妬深い彼女ならロックしてあれば詮索してきたと思うんですが、彼女はそんなことしてきませんでした。
だからたぶん、携帯を見ることもなく、ロックしていることすら知らなかったんじゃないでしょうか。」

大崎は、携帯のロック機能をそこまで過信する葛城を浅はかだと思ったが、もちろん口にはしなかった。


「そうですか、わかりました。
今のところ彼女との交際は問題ないように思えますが、どういうきっかけで別れるにいたったんですか?」


「最初におかしいと思ったのは、彼女が珍しく酒に酔った日のことでした。」

















ある日、いつものように二人で食事をしたときのことだ。
その日はイタリア料理を食べに行ったのだが、そこで冴子はワインが進み珍しく酔っていた。

葛城はそんな彼女を心配に思い、家まで送っていくことにした。
冴子は心配ないとその申し出を断ったが、葛城はタクシーを止めるとなかば強引に彼女を押し込んだ。


普段は葛城の家に冴子が訪れるばかりで、彼女の家に行ったことはなかった。
何度か部屋を見てみたいと言ったのだが、冴子はなにかと理由をつけてはそれを断っていた。
葛城はこの機会に、冴子の部屋を見てみたいという目論見もあった。


大体の場所は以前聞いていたので、その場所を運転手に告げると冴子とともに家へと向かった。

「そろそろ着きますけどどの辺に止めましょうか?」

タクシーの運転手が尋ねてきた。

「冴子、家はどのあたり?」

葛城は、うとうとしていた冴子を揺り起こした。

まだ朦朧としている冴子に道案内され車を走らせると、大きなマンションに着いた。

精算をすませてタクシーを降りると、葛城はその建物を見上げた。
葛城が想像したよりも、冴子はいいところに住んでいるようだ。

まだ意識がはっきりしていない冴子に肩をかしながらマンションの入り口に入ると、葛城のアパートにはないオートロックがある。

「冴子、部屋の鍵は?」

そう葛城が尋ねると、冴子は急に我にかえったように目を見開いて周りを見渡した。
まだこの状況が理解できていないようだ。


一息つくと冴子は言った。

「送ってくれてありがとう。私ずいぶん酔ってたみたいね。
でも、もうここで大丈夫だから。」

「え?ここまできたんだしお茶くらい飲ましてよ。
一度冴子の部屋も見てみたかったし。」

「ごめんなさい。今部屋が片付いていないから、また今度の機会にして。」

「少しくらい片付いていなくったて気にしないからさ。いいだろ?」

葛城は食い下がった。

「本当にごめんなさい。明日仕事も早いから。」

そういって冴子は頑なに断った。

彼女のあまりに必死な態度に、葛城は納得の行かない顔をしながらもしぶしぶマンションを後にした。


冴子はそれを見送ると一人部屋へと向かった。

エレベーターの中で、こんなに酔ってしまうとは迂闊だったと冴子は反省した。

冴子にとってこの日嬉しいできごとがあった。
良介が自分のことを褒めてくれていたのだ。

“彼女は自分のことを本当によくわかっていてくれて、これ以上の女性はいない。”

そんな内容のメールだった。

それに浮かれて今日は少しお酒が進んでしまった。
しかしそのせいで危うく良介が部屋に入っていたかもしれない。
冴子は、これからはもっと気をつけなければと思った。
念のため部屋も片付けておいたほうがいいだろう。


冴子は部屋のドアを開けると、電気もつけずに奥へと進んだ。
そしてデスクの上のパソコンの電源を入れる。
パソコンの起動音とともにディスプレイが青く光った。


そのディスプレイの光で薄っすらと部屋が照らされる。
照らし出された部屋には、そのデスク以外ほとんどなにもない。

冴子は部屋の壁に張られた写真に目をやった。

「良介、愛しているわ。」

そういって、しばらく見つめたあとその写真を剥がした。

そして、壁に貼られた写真を次々に剥がしていった。

黙々と冴子が写真を剥がす中、パソコンの音だけが、低く呻いている。

そのディスプレイにも大きく葛城の姿が映し出されていた。











閉じる コメント(8)

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強すぎる愛は時に怖いほど一途ですからね・・・

恋愛も程々が良いのかも知れませんね。

2010/5/17(月) 午後 9:37 フェクト

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彼女の愛は少し恐ろしいくらいですね・・・
もうすこし理性があるくらいじゃないと、
その愛にこたえられない男性の方が多いのではないでしょうか・・・

2010/5/17(月) 午後 10:07 [ ]

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>フェクトさん
どこからふつうと異常の一線を越えてしまうかは難しいところですね!

2010/5/17(月) 午後 11:23 [ メヅ ]

>優さん
深い愛情と、偏った愛情とは紙一重なので、愛情を注ぐ方も受ける方も注意が必要ですね…

2010/5/17(月) 午後 11:29 [ メヅ ]

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はじめまして、引き込まれたした、視線、期待してます。

2010/5/18(火) 午前 0:46 まさまさ

続きが早く読みたいです

引き込まれるように読んでしまいました

2010/5/18(火) 午後 9:06 [ ゆっき〜 ]

>smilekazetnさん
乱文なところも多々あると思いますが、期待にそえるよう推敲したいと思います!

2010/5/18(火) 午後 9:18 [ メヅ ]

>ゆっき〜さん
読んでいただいてありがとうございます!
続きを載せた際にはまた目を通してもらえれば幸いです。

2010/5/18(火) 午後 9:19 [ メヅ ]


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