FLOATING WEED

好きな音楽や映画、漫画、サッカーなどのことを書き綴っていこうと思います。

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視線(6)

「冴子はそれから彼女のことを気にする素振りはありませんでした。
いや、きっと気にはなっていたんでしょうが、それを口に出したりすることはありませんでした。
だけどきっとそのころから僕が浮気しているんじゃないかと疑い始めたんだと思います。
もちろん私のほうにそんな事実はなかったんですが…」

「なぜ浮気を疑われてると思われたんですか?」

「冴子が彼女の存在を知ったあの日から、少しずつ状況が変化していったからです。」














あの日以来、冴子からのメールと電話の量が日に日に増えていった。
そして彼女は、葛城の勤務中だろうとお構いなしに連絡してくるようになった。


浮気を疑ったような内容ではなく、ささいなことの報告や、葛城が今なにをしているのかを尋ねるものがほとんどだったが、それに返信をしないと何で返信しないのかと催促まで来るようになった。

もちろん葛城はやめるように頼んだが、そのときは了承してもしばらくするとまた同じように大量のメールが届く。


正直、葛城は辟易としていたが、それでもまだ冴子と別れるには至らなかった。
冴子は普段は気配りもでき、自分のことを誰よりも理解してくれている女性だ。
束縛はきついが、それでも冴子から離れられないというのがそのときの実情だった。



そんなある日、葛城が受付にいると電話がなった。

「はい、漫画喫茶オリオンです。」

葛城は電話にでたが、相手はなにもしゃべらない。

「もしもし?」

葛城がもう一度呼びかけたところで電話はガチャリと切れた。

(もしかして。)

そう思い葛城は携帯を取り出し電源を入れた。

最近では、勤務中は電源を切っている。
もちろん、冴子から大量にメールが届くからだ。

携帯を見ると、新着メール38件の文字が出てきた。

着信履歴も全て冴子の名前で埋め尽くされている。

「やっぱり…」

葛城は小さくつぶやいた。

きっとさっきの無言電話も彼女だろう。
そんなことを考えていると、急に呼びかけられた。

「葛城さん。ちょっと来てください。」

個室を掃除していた由里子の声だった。

葛城が由里子のもとへ行くと彼女は、個室の壁を見つめていた。

「これなんですけど、掃除したらとれちゃって、どうしたらいいですか?」

そういって指差す先には直系5ミリ程度の小さな穴が開いていた。

「これで塞いであったみたいなんですけど。」

そういって、由里子は小さなシールを差し出した。

「ああわかった。後はやっとくから、他の部屋の掃除を続けて。」

葛城がそういうと彼女は、

「わかりました。」

といって個室を出て行った。


彼女のいなくなった部屋で葛城は恐る恐るその穴を覗いてみた。

ちょうど腰の辺りにあるその穴は、貫通しているらしくそこから少し光が漏れている。

葛城はかがむ様な格好でその穴を正面から覗き込み、片目を閉じた。
少しずつ視界がはっきりしてくると、そこにはいつも自分がいる受付が見えた。

葛城は急に背筋がゾクリとして立ち上がった。
そして、さっきまでの自分と同じ体勢で外を見つめる冴子の姿を想像して恐ろしくなった。






後日、葛城は喫茶店に冴子を呼び出した。

「どうしたの?こんなところに呼び出すなんて珍しいわね。」

「ああ。」

葛城は神妙な面持ちで答えた。

「実は冴子に大事な話があるんだ。」

コーヒーに伸びていた冴子の手が一瞬止まった。
その表情から微笑が消えていくのがわかる。

葛城は続けた。

「俺たちの関係、もう終わりにしよう。」

冴子はコーヒーを一口、口に運びあくまで冷静に聞き返してきた。

「なんで?」

「俺たちがこのまま関係を続けてもお互いのためによくないと思うんだ。」

「あの女のせいなの?」

そういった彼女の視線が鋭くなっていくのを感じる。

「あの女って由里子ちゃんのことか?
彼女は関係ないよ。」

「じゃあなんでなの?」

「君の束縛にもう耐えられないんだよ。
頼むからもう別れてくれ。」

「そんな…仕事中に何度も連絡したことは謝るわ。
だけど別れなくたっていいじゃない。
あたしたち最高のパートナーのはずでしょ?」

そういってすがる彼女は鬼気迫っていた。
その表情をみていると、あの個室の穴から自分のことを監視している姿が脳裏をよぎり急に怖くなった。

「とにかく。もう連絡もしてこないでくれ。」

そう、言い捨てると葛城はレシートを取ってその場を後にした。


「絶対に別れないから。」

去り行く葛城の背中に冴子はそうひとこと言い放った。







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待ってました!!

あ゛ぁー・・・
女は怖いですねー・・・
特に別れようと言った瞬間の彼女の冷静さが・・・
穴からの監視も十分怖いですが、
それ以上に冷静なところが、逆に鬼気迫る恐ろしさがあります・・・

2010/5/31(月) 午後 10:34 [ ]

>いつも期待しただいてありがとうございます!
励みになります!

2010/5/31(月) 午後 11:50 [ メヅ ]

顔アイコン

またまた、怖そうな展開に・・・ 冴子の正体が、少しずつ見えてきました。 次回作、期待してます。

2010/6/1(火) 午前 8:15 まさまさ

>これから、冴子、そして視線の正体に注目していただけたら幸いです!

2010/6/1(火) 午後 7:00 [ メヅ ]


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