FLOATING WEED

好きな音楽や映画、漫画、サッカーなどのことを書き綴っていこうと思います。

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視線(11)

良介と初めて会ったのは、一年半前のことだった。

駅前の広場のベンチに腰掛けていると、不意に声をかけられた。

「君たち今暇?時間あったら俺と遊ばない?」

“君たち”と言われたことに違和感を覚えたが、彼の視線から、隣の女と私が友達同士だと勘違いしているのだとすぐにわかった。

その女は、彼の言葉に反応することなく不機嫌そうに立ち上がるとその場を去っていった。
彼はそれを目で追った後、私を見て、

「てっきり友達だと思ったんだけどそうじゃなかったんだ。じゃあ…
君だけでもどう?」

少し考えながら、そう声をかけてきた。
私がそれに答えることができず戸惑っていると、

「じゃあ、また機会があったら。」

そう言ってばつが悪そうに去って行った。私はその背中をずっと目で追っていた。

そしてこの出逢いは運命なのだと信じた。
彼こそが私の待ち望んだ運命の人に違いないと。


その日から私は毎日彼の姿に視線を送るようになった。
しかし彼が再び私に気づくことはなかった。
このままでは運命を逃してしまう。そう思い私は焦った。


そしてある日、私は思い切って彼のことを追いかけた。
すると彼は漫画喫茶に入っていった。どうやらそこが彼の職場らしい。


私は家に帰るとその店に早速アクセスした。
慎重にその店のことを調べてみて、彼の名前、年齢、住所、電話番号、出身校など詳しい情報がわかった。

「良介。」

私は初めて知った運命の男性の名を口にしてみた。

そこで私はすぐに彼に会いに行くようなことはしなかった。
この前はことを急いで失敗した。今度は同じ轍を踏むわけにはいかない。



まず私は彼の趣向を探ることにした。

幸いにも彼はパソコンを利用している。
私は迷わずそれにアクセスした。

まず彼のインターネットの利用履歴を見た。
彼がどんなHPを覗いているかは彼の趣向を知る上で参考になる。
そこで彼が特定のバンドのファンであることがわかった。
そのバンドのHPを何度も見ているし、音楽の再生履歴を見てもそのことは明らかだった。

私は“コールドアイズ”というそのバンドの曲の中でも、彼が一番多く再生している“真夜中の行進”という曲を早速ダウンロードして聴いてみた。

正直その曲は私の趣味には合わなかった。
ただ轟音を上げて叫んでいるだけにしか思えない。
しかし、それも彼のためだと思えば我慢できた。


それから彼の女性の趣味を探ってみた。
彼がよく見ているアイドルのHPや女優のHPなどを一つ一つ調べていくと、彼が興味を持っている女性には一定の傾向があることがわかった。

彼はかわいいタイプの女性より理知的な雰囲気を持つ大人の女性を好むようだ。
それに髪はショートよりも黒髪のロングを好む傾向にある。
幸いにも私の髪も腰くらいまであるロングだ。
この分なら服装とメイクを少し変えるだけで、彼好みに変われるだろう。

そこでも私はまた運命を感じた。やはり私と彼は出逢うべくして出逢ったのだ。


彼のよく行くレンタルビデオ店にアクセスして得たデータも役に立った。
彼が借りた、いわゆるアダルトビデオの履歴を見ても彼の傾向は顕著に出ている。
もちろんその店のデータから、彼の映画の趣向などもうかがい知ることができた。

それから私は知りえる限りの彼のデータを集め、彼のどんな情報にも対応できるように準備した。
容姿も彼が好むであろうものになったつもりだ。



そして私は初めて彼の働く店に行ってみた。
最初彼と目が合ったときには緊張した。
彼は今、自分のことをどんな目で見ているのだろうかと思うと心臓が飛び出しそうだった。


受付で彼は、どこを利用するか尋ねてきた。
私は彼から差し出された店の見取り図をみて、迷わず突き当たりの個室を選択した。
そこからなら受付を常に見ることができると思ったからだ。

そしてその個室に入ると一息ついて考えた。

(彼は私にどんな印象を抱いただろうか。)

いい印象を抱いたはずだと自分に言い聞かせた。
ここまでやったのだ。失敗するはずがない。

それから部屋を確認した。
人一人が寝転がれるくらいのスペースにパソコンが一台置いてある。
このパソコンは自由に使っていいらしいが、決して私が満足できる性能のものではなかった。

受付のほうを覗けないかと部屋の壁も調べてみた。
しかしそんな都合のいい場所はない。
私は次に来たときに、穴をあける工具を持ってこようと思った。
小さな穴ならシールか何かで隠せば気づかれないはずだ。



それからしばらく、彼の店に通う日々が続いた。
次第にこの状況にもなれ、彼と目が合えば会釈したり、受付のときに会話をしたりするようになったが、もう一つ距離を近づけられないでいた。

そんなときに、彼があのバンドのライブチケットを必死で探していることを知った。

私はあらゆる手を尽くしてそのチケットを手に入れた。
あとはこれを手に彼を誘えばいい。

しかしどうやって誘ったものかと考えた。
急にこのチケットを見せて誘っても怪しまれるかもしれない。
私はふと、彼が“コールドアイズ”のTシャツを着て店に出ていたことがあったのを思い出した。
そのTシャツを見て彼が“コールドアイズ”のファンだと知り、思い切って誘ってみたことにしよう、そう考えた。


本当は彼がもう一度そのTシャツを着てきたときに、それに気づき誘うというのが筋書きだったが、思惑通り彼がまたそのTシャツを着てくることはなかった。
そうしているうちにライブの日が近づき、仕方なくあの日に誘ったというのが実際のところだ。

しかし彼は怪しむことなく私の申し入れを快諾してくれた。


ライブの当日、やはり慣れないその音楽には正直辟易としたが、彼のとなりにいれるだけで十分だった。

そしてその日、とうとう彼と結ばれることができた。



それから彼との交際は順調に進んだ。
普段無防備に見える彼が携帯にロックをかけていたのは意外だったが、私の前でそんなものは意味をなさない。
彼が風呂に入っているときに、持ってきたノートパソコンに携帯をつなぎ、難なくデータを吸い出した。

一応ロック解除のパスワードもそのときに調べておいたが、それは彼の誕生日だった。
私は安易な人だと少し笑い、同時にこんな無防備な彼を私が守ってあげなくてはと思った。


そうして順調に交際が進んでいたある日、彼から急に別れを切り出された。
正直私は驚いた。なぜ彼がそんなことを言い出すのか見当もつかない。
店に入ったあの小娘のせいかとも思ったが、私が見ていた限りそれはないはずだ。


結局、彼は私の束縛に耐えられないと言って去っていった。

ただ私は彼のことを守りたかっただけなのに。

それから私は彼に何度も連絡をした。
話せばわかってもらえるはずだ。
しかし彼は電話番号を替え、家まで引っ越してしまった。


私は怒りを覚えた。
ここまで彼のことを考えて尽くしている私を、彼は一方的に切り捨てたのだ。
そんな彼を許せないと思った。



しかし、日が経つにつれその怒りはおさまり、逆に不安になってきた。
彼は私が見守っていなくても大丈夫だろうか。
そう思うと心配でならなかった。

彼は今、反抗期の子供のようなものなのだ。
今は私のことを煩わしいと思うことがあっても、必ず私の元に帰ってくるはずだ。

そのときまで彼のことを私が見守ってあげなくては。
そう考え直し、私は彼の所在を調べた。



彼は2駅ほど離れたところに移っただけで、そう遠くへは行っていなかった。
私は会いに行きたいとはやる気持ちを抑えた。
彼が自分で私の存在の大切さに気づくまで待とうと決めたからだ。

しかし、私が彼をちゃんと見守っていることだけは伝えておきたかった。

そこで電話をとり、一言だけ彼に告げた。



「私はいつでもあなたを見ているから。」




それから私は、彼を見守っている証拠に彼を写した画像を毎日送った。
彼の画像を集めるには、先日アクセスしたある機関のシステムが役に立った。
これを使えばパソコンの前にいながらいつでも彼のことを見守ることができる。
便利なシステムを開発してくれたものだと思った。


私は、そのシステムを使って彼を写した数々の画像を開き、次はどれを送ろうかと思案した。

“ピンポン”

そのときドアフォンを鳴らす音が響いた。
ドアを開けるとスーツを着た二人の男が立っていた。

「どなたですか?」

尋ねると、男は懐から手帳のようなものを取り出して掲げた後、神妙そうに言った。

「堂島冴子さんですね…」







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んー・・・
この話を読む限りではやはり、
冴子の葛城への感情は愛情なのでしょうね。
常人では理解しがたいほどのあつい愛情・・・
と、いうか最初に話しかけたのは葛城だったんですね。
おまけにナンパ。
私の印象では、葛城はそういうことをするタイプには、
見えなかったので、少々意外でしたが・・・
あ、やはり冴子はハッカーなのでしょうか?
携帯のロックの解除など、一般人では、
解く事ができないでしょう?
冴子の職業も気になるところです・・・
ちょっと思ったんですが、
冴子って暇人ですね 笑))
ストーカーする時間あるなら働けよって、
ちょっと笑っちゃいました。

2010/7/5(月) 午後 9:31 [ ]

>すべての疑問に納得のいく答えが出るかわかりませんが、そろそろ終幕です!しばしお付き合いをお願いしますm(_ _)m

2010/7/5(月) 午後 10:33 [ メヅ ]

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失礼いたします。
作品発表広場『Sakuhin(http://www.sakuhin.jp/)』を運営しております株式会社ファウンデーションと申します。
こちらは、作家の方が作品を投稿して発表するだけでなく、作品の販売、仕事の受注・発注ができるコミュニティサイトとして誕生いたしました。
もしよろしければ、一度足を運んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

2010/7/12(月) 午前 10:49 [ 作品発表広場 ]

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初めましてですヽ(*´∀`)ノ
ガマンできないのでコメントさせてください(*ロ′∀`b)
初コメなので失礼があったらすいません。。。((@^ェ^@))

正直ここのところ落ち込んでいたのですが、メヅさんのブログを読むことができて元気を取り戻せましたヾ(´▽`*;)

ブログって人それぞれの人生が刻まれていて、そこの喜怒哀楽に触れるだけで私は一人じゃないんだなって思えました(;≧∇≦)
それを改めて気づかせてくれたのが、管理人のメヅさんのブログだったんですよσ(^○^)

koikaren@i.softbank.jp

私のメールアドレスです。無理なお願いを承知でお願いなのですが、ここのところの私の抱えてる悩みの相談に乗って貰えないでしょうか。。。
直接メールを頂けたら必ずお返事します(´w`*)
お時間はとらせないので宜しくお願いします。

2015/2/4(水) 午後 2:28 [ nat*r*61t*0q ]


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