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アルマン・マリー・ルロワの「ヒトの変異〜人体の遺伝的多様性について〜」を読んでいた時に、「デザイナーベビー」につながる遺伝子解析技術が考案され、米国で特許が認められた、というニュースが入ってきた。
デザイナーベビーを希望する本人と、精子や卵子の提供候補者の遺伝情報をそれぞれ解析して、望み通りの子供が生まれる可能性の高い提供者を選び出す、というもので、50カ国40万人がすでに利用しているとのこと。
日本でも、特定の病気を持っていないか、受精卵の遺伝子を調べる「着床前診断」はすでに行われている。
しかし、生命を商品のように経済ルートにのせることは、倫理的に見て大いに問題があるし、親の望みによって、子供の病気のリスクや容姿、知性、芸術スポーツの適性や才能を選ぶデザイナーベビーのような生命の操作は、決して許されるべきではない。
生命は、あるがままの自然に任せるべきだ。
それに、遺伝子を操作することは、大変危険なことで、遺伝子の働きはとても複雑で、完全にその働きを解明できてはいないので、何が起こるか分からないので、危険極まりない。
遺伝子は、多数の遺伝子と環境因子が複雑に絡み合って働いているし、遺伝子変異も多数起こるので、最初に予想した通りにはならないのが普通だと、考える方がいい。
「ヒトの変異〜人体の遺伝的多様性について」には、遺伝子のほんの僅かな変異によって引き起こされる人間の奇形や特殊な病気の例が多数記載されている。
遺伝的エラーによるいくつかの例をあげると、側部結合体(二頭四腕体、二頭二腕体など)の結合性双生児、頭部や臀部が結合した結合性双生児、内臓が逆のカルタゲナー症候群、目が一つしかないサイクロップス(単眼症)、シレノメリア症候群(人魚症)、ホメオーシス(首にできた耳とかなどの変異)、スプリットハンド・スプリットフット症候群(手足の形状異常)、小人・巨人症(異常に身体が小さかったり、大きかったりする病気)、無手・無足症、多指症(手足の指の数が5〜10本もある異常)、進行性化骨性繊維異形成症(FOP・・・骨芽細胞が体じゅうで増殖して、好き勝手に骨を形成する)、軟骨形成不全症、濃化異骨症、下垂体性小人症、クレチン症(小人)、プロテウス症候群(がん〜骨肉腫)、眼皮膚白皮症=アルビノ(体のメラニン色素の欠乏症)、限局性白皮症(体色がぶちになる)、多毛症(体中に毛が濃密に生える病気)など、遺伝子の変異によって引き起こされるものである。
先日読んだ、進化発生生物学のエキスパート ショーン・B・キャロルの「シマウマの縞 蝶の模様〜エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源」(エボデボとは、進化発生生物学のこと)も、遺伝子の精妙で精密で複雑な働きについて詳しく書かれているので、興味のある方は読んでください。
「シマウマの縞 蝶の模様〜エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源」
ショーン・B・キャロル著、渡辺政隆・経塚淳子共訳 光文社刊行
四六判 405頁 2415円 初版2007.04.30.
「ヒトの異変〜人体の遺伝的多様性について」
アルマン・マリー・ルロワ著 上野直人監修 築地誠子訳 むすず書房刊行
B6判 376頁 3360円 初版2006.06.09.
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