妄想の話
裏銀蜆
昨年の11月の末から、白樫の葉裏に裏銀蜆が冬を越している。 はじめ生まれたばかりのように美しかった銀の羽も、3月になって、周りの痛んだ葉のようになった。 「そうしていても、あの夕日の落ちる悲しみは、聞こえるんだろう?」 「 ・・・ 」 いくど話しかけても、蝶は終始無言だった。 この4ヶ月のうちに話すことも忘れてしまったのだろう。 小太りの自転車の男が私を怪訝な顔で見ながら、そばを通り過ぎた。 空を見上げると、遠くから船の汽笛が聞こえた。 もうお別れか。
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薫衣草
2014/5/31(土) 午後 9:17
アップルミントのつぼみに、蝶が羽化した。
「美しい姿になったね。 君とは、以前会ったことがあるような気がする。」
「戦友でした。」
「戦友? そうだったっけ。そういえば、君を守って僕は死んだんだっけ。」
美しさにつられて、そんな気がしたが
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三方原の山姥
2014/4/21(月) 午後 10:25
山姥というのは恐ろしい顔の老婆だと思われているが、会ってみると、実は美しい女だった。
高林の坂を登ったところに茶菓子屋があり、その向かいの小屋にしばらく前から住み着くようになったというので、行ってみたのだ。
思ったより小柄で、粒らな目に鼻筋の通った丸顔は化粧気がない。本人が、スッピン美人と、今風の言い方で自慢していた。どこで覚えたのか
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不動産屋の話
2014/3/28(金) 午後 9:21
散歩をしていると、影がついてきた。
きょうは、いらないよ、と言うと、ちょっと悲しそうな顔をして離れていった。
入れ替わりに、消費税がつきまとって、いらないよ、というのに、ついてくる。
不動産屋に寄って、挨拶をしたら、ふぁみりいたいぷの物件の動きは少ないという。
消費税をつまみ上げて、「こいつのせいですか?」と聞くと、神経質そ
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