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巣鴨の音楽練習スタジオ・音楽教室 flos campi
「ふろす・きゃんぴ」は巣鴨の閑静な街並みの一角にあります。大人のための音楽教室「fcミュージックガーデン」を開設しています。

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6月8日の定例サロンコンサートにて、ヴィオラで演奏を予定しているモーツァルトのクラリネット協奏曲についての前説です。

コンサートの詳細はこちら↓

この作品はモーツァルト最晩年に書かれた大作です。
クラリネットはモーツァルトの同時代(18世紀)に生まれたばかりの楽器にも関わらず、彼はその特徴を完璧に把握して、全音域を使い切るように、高低差のある華やかなパッセージを縦横無尽に走らせた音楽を書きました。しかも、二楽章の優しく包む込むような旋律も、クラリネットの甘い音色にピッタリです。

ヴィオラとクラリネットは、お互いの音域がほぼ同じなので、作品が極端に少ないヴィオラ業界としては、クラリネット作品はちょっと拝借して弾かせていただくのに最適なので、今回の私の発想は斬新でも何でもなく、以前から編曲譜も出回っています。

ただ今回、真正面から取り組んでみて、他のクラ作品とは違って、「ちょっと拝借」などという実に浅はかな考えが通用しないことに気づかされ、たじたじとなっています。モーツァルト凄い!!!!
よく、モーツァルトの曲はどれも同じに聴こえる、と言われたりします。たしかに大雑把に言えばそうかもしれませんが、実は1曲ずつ、ちゃんと別々の顔を持っていて、私から見れば、当時の限られた作曲手法の中で、よくぞここまでバラエティに富んだ作品を創り出したと感服するばかりなのです。
そこで、この曲についてですが、クラリネットとヴァイオリン(ヴィオラ)は、楽器の種類が全く違いますから、各々が弾きやすい旋律の音型も当然違ってきます。クラリネット演奏技術の極みと言えるこの作品を、ヴァイオリンよりも小回りの利かないヴィオラで簡単に弾けると思ってんのか!! とモーツァルトに一喝されてしまったようです。

2つの当惑ポイントがあります。まず、全体の音域が同じだから、と言っても、楽器の特徴を最も生かす高さが二者で異なっているので、比較的高音域を多用している当該曲をそのままヴィオラで弾くと、甲高くて耳障りな音が並び、しかも難易度が高くて弾きづらいので安定しない、ときました。

次はスラーの存在。本来スラーとは「滑らかに一呼吸で弾く」といった意味ですが、弦楽器の場合、スラーで結ばれた複数の音を一弓で弾くという意味を併せ持っています。モーツァルトの弦楽器作品とこのクラリネット曲のスラーを見比べると、同じような音型でもスラーの付け方が違うことを発見し、さすが彼の職人技を垣間見たのでした。つまり、この曲のスラーを譜面通りに採用しても、全くサマにならない、というわけ。

しばらく考えた末、私はクラリネットと同じような演奏を目指しているのではなく、ヴィオラという楽器の可能性を追求してヴィオラの特徴を生かす演奏をしたいのだという、そもそもの動機を念頭において、音域については、部分的にオクターブ下げて聴きやすく(弾きやすく)し、スラーについては、彼のヴァイオリン協奏曲やソナタの譜面を参考にしながら、私自身が最も弾きやすいと感じるスラーを付けることにしました。曲に手を加えているように思われるかもしれませんが、音符そのものは何も変えていないですし、仮にモーツァルト自身がヴィオラ用に書き直すとしたら、やはり同じような過程を辿るに違いない、と勝手に思ったりしながら・・・
最近たくさん流布している他楽器→ヴィオラへの編曲譜からも、同様の苦労の後が読み取れることが少なからずあります。マイノリティが抱える苦悩。

なんだか、前回シューベルトのヴァイオリンソナタを弾いた時にも、言い訳めいた前説をしたような気がします・・・
本番まであと一ヶ月です。

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    これは一種の所信表明ですね。言い訳なんかじゃなくって。

    聴く側としては、あの大好きなクラコンがどんなモーツァルトに変わっていくのか興味深々です。

    コンサートを楽しみにしています。 削除

    [ 近隣住民 ]

    2014/5/10(土) 午前 6:47

    返信する
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    近隣住民さん、毎日の練習で、最初は他人行儀だった曲が少しずつ自分の手中に入ってくるのが面白くなってきましたよ。やっぱりモーツァルトは裏切らないなぁ。

    [ flos campi ]

    2014/5/13(火) 午前 0:16

    返信する
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    とっても素敵な休日でした。

    実を言うと、事前にブラームスのヴィオラソナタを聞いていたせいもあって、あのクラコンが少し重くなるのではないかと思っていたのですが、いざ拝聴してみると、そんなこと微塵もなく、ティータイムの時に受付にいたお弟子さん3人と、「完全にヴィオラコンチェルトになっていたね。」と話していました。私が言うのもヘンですが、もう脱帽です。ホント。

    連れて行った私の友人、昔はアイドル歌手のコンサートで、メガホン持って絶叫していた奴ですが、今は普段の仕事に似合わず?クラシックが大好きで、サロンコンサートは初めてにも関わらず、素晴らしかったを連発していました。案外リピータになってくれるかもしれません。

    それでは今回はこの辺で。ごゆっくりとお休みください。 削除

    [ 近隣住民 ]

    2014/6/8(日) 午後 6:25

    返信する
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    ご来聴ありがとうございました。
    お褒めいただき恐縮です。ヴィオラで弾いてもモーツァルトだと感じていただけたのなら成功です。
    演奏家には二つのタイプがいるように思います。一つは「自分ありき」でどの曲を弾いても自分のスタイルを守る人。昔の演奏家はこちらのタイプが多いですね。○イフェッツなんてその最たる人物です。情報が少なかったから、自分のセンスだけを信じて弾いていたからでしょう。現代でもこのタイプの人はいます。もう一つは作曲家や作品の特徴を重んじるタイプ。私は後者です。とにかく作曲家と作品の背景を徹底的に調べます。ただ、生身の人間がやることなので、必ず自分自身の個性は演奏に出ます。それを意識的に前面に出さないだけ。

    [ flos campi ]

    2014/6/9(月) 午後 5:23

    返信する

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