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アカペラワークショップも4日めに入り、
気づかないうちに疲れが溜まってきてたころのお話。
メインのスモールグループでの中世ルネサンス系の楽曲で、
なかなか思うように歌えず、情けなさやフラストレーションが日に日に増えてた。
そんな中、ジャズ&ポップスの特別クラスは、普段の自分らしさをそのまま、
歌にぶつけて表現できるチャンスだった。
ワークショップ4日めの、ジャズ&ポップスのコンサートで、
3曲歌うことになった。
各曲ごとにメンバーが違うので、みんなそれぞれにメインのグループの練習で忙しい中、
お互いに時間のやりくりをしながら、全員での練習時間を確保するのにひと苦労。
それでも、なんとか集まって、短い時間で意見を交わしながら、音楽を作っていった。
1曲めは、日本語の曲で「鴎(かもめ)」という混声4部合唱の歌。
全部で4人いた日本人(講師含む)で、せっかくだから日本語の歌を、ということで。
女性3人、男性1人の編成で、わたしはテナーパートを担当。
本来は男性が歌うパートなので、わたしが歌うとドスが効いた感じになっちゃう… と
悩んでいたが、みんなが「それがかえってイイよ! 気にせず普通に歌って〜」と
言ってくれたので開き直って練習を重ねた。
2曲めは、タック&パティというギター&ボーカルデュオが歌っているので知られている、
「Like a lover」というゆったりしたラブソング。混声5部。
わたしはメロディ(アルトパート)を歌わせてもらうことになり、責任重大…!
歌詞を読み込み、気持ちを込めて歌にのせられるよう、自分の部屋でもひそかに自主練。
途中で転調があり、そこではメロディがテナーパートに移って自分はコーラスになるため、
結構複雑な音型になっていたので、そこでもひと苦労…
居残り練習でピアノを弾きながら、ようやく音取りできた(初見では無理でした…)。
3曲めは、アル・ジャロウというアメリカの黒人シンガーの曲で、
「Could you believe」という曲。ちょっとゴスペル調の雰囲気の、混声5部。
バリトンパートがメロディで、わたしはテナーパートのコーラスを担当。
この曲は、以前からCDで聴いたり、自分で歌ったりすることもあったので、
だいぶ楽に入っていけた… アリガタイ…
そして、コンサート本番。
「鴎(かもめ)」は結局1回しか(!)練習できなかったのだが、
メンバーのうち2人は何度も歌ったことがあったので、わたしともう一人(講師の先生)が
なんとか歌えれば問題なし、ということで、そのまま本番へ。
でも、いざ聴衆を前にして歌い始めたら…
この曲の壮大な感じに乗せられて、しかも言葉がわからないであろう聴衆のためにも、
表情豊かに歌わなければ! という気持ちが湧いてきて、堂々と歌うことができた。
歌い終わって、すぐに大拍手が! 日本語の歌だから風変わりに聴こえたはずだが、
最初に歌詞の翻訳を朗読していたこともあり、それなりに物語を感じてもらえたと思う。
そして何より、「伝えよう」という気持ちが深く伝わったような気がした。
次に、「Like a lover」。いよいよふわりの本領発揮のときが…!
イントロの8小節が終わり、わたしがメロディを歌い出すと…
不思議な現象が。
小さなホールの中に、なんともいえない「風」みたいなものが流れた気がした。
いつも、聴衆のすみからすみまでに目を配りながら、歌うようにしているふわりだが、
みんなの表情が、だんだん、優しくて、温かいものに変わっていくのが、
手に取るようにわかった。
「Oh, how I dream I might be like the morning sun to you...」
(ああ、こんなにも夢見ている… あなたを照らす優しい朝陽になれたら、って…)
わたしも、歌詞を何度も読んで、思い入れが強くなっていたので、
歌いながらところどころで涙がこみあげそうになったりして…
とても優しい、そして切ないラブソングなので、その歌の世界にみんなをうまく、
導き入れることができたのかな〜と思う。
拍手は、しばらく鳴り止まず。
一緒に歌ったメンバーが、メロディを歌ったわたしを一歩前に出させてくれたりして。
歌を歌い、何かを伝えて、それが伝わって、小さくても温かな感動を呼び起こす、
そういう瞬間をかみしめることができて、本当に幸せだった…
そして3曲めの「Could you believe」ではもー、精一杯コーラスで盛り上げた。
とてもドラマティックな曲で、メロディだけでなくコーラスにも迫力が必要だったので、
ソプラノ・アルトの2人と視線を交わしながら、一体感を出しながら歌った。
感動的な歌詞もあいまって、ホール全体に興奮がみなぎるのがわかった。
最後の音が消えて、静寂が戻って、そして… 大歓声が!
この曲でもまた、しばらく鳴り止むことのない拍手をもらえた。
スモールグループでルネサンスを一緒に歌ってるメンバーも、みんな聴きにきてた。
彼らには、不出来な一面ばっかり(初見力がイマイチ、発声もクラシカルじゃない、など)を
見せて、なかなかグループに溶け込めなかったふわりだったが…
コンサート後、みんなが次々に笑顔を向けて、声をかけてくれるように!
「すごかったね〜! あんなに歌えるなんて羨ましいよ」
「君のジャズでのパフォーマンス、素晴らしかった。感動したよ」
「あなたの声、好きよ」… などなど…
やっと、一人前として認めてもらえたのかな… と、心の底でじわーんと感動。
そして、最高のごほうび。
別のグループの人で、全く言葉を交わしたことのなかった女性に、声をかけられた。
彼女自身も本当に美しいソプラノで、わたしも「素敵だな〜」って思っていた人で、
お話ししてみたいな〜と思っていたので、声をかけてもらっただけでも嬉しかったのに。
彼女がわたしにくれた言葉:
「You're radiant!!」
ラディアント? 最初意味がわからなかった。
前後の話の流れとしては、「あなたの歌そのものはもちろん、歌っているときの
姿や表情がとても素敵だった、radiantだった」という感じ。
たぶんすごーく褒めてくれてるんだと思って、丁寧にお礼を言ったあとで、
辞書で意味を調べたら…
radiant : 光を放つ、輝くばかりの、燦然たる、嬉しそうな、にこやかな
ですって… なんという、嬉しい言葉…!
歌うことの喜び、みたいなものが、たぶんにじみ出ちゃってるのかな、と、
それを言い表すのに、「radiant」という言葉をくれた彼女に、本当に感謝…!
その後も、同じ言葉ではなかったけれど、でも同じような意味の言葉を、
本当にたくさんの人からかけてもらった。
驚いたのは、それから2日後の最終日、最後のコンサートが終わった後にも、
それまで一度も話す機会のなかった人たちが次々とわたしのところに来て、
「あなたの歌は素敵だった」「心を動かされた」「本当にいい声してるよね」
「日本で頑張って歌い続けてね」などなど、
ただそれだけが言いたくて、と声をかけてくれたこと…
ああ、歌い続けてきてよかった、そして、はるばるここまで歌いにきてよかった!
歌い手冥利に尽きるとは、このこと…
歌えることに、そして聴いてくれるすべての人に、改めて、感謝。
いつまでも「radiant」な自分でいられるように、
これからも、ずっとずっと歌っていけたら… と心から願ってやまない、
ふわりなのでした。
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