新しいギリシア・ローマの物語2

190年ローマ・ロードス連合艦隊、ミュオンネソス岬で、大王軍の艦隊を撃破。スキピオ兄弟はリュシマケイアに進軍。

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 神出鬼没(続き)
 その頃、テバイとの国境にほど近いアテネの要害デケレイアには、密かにアテネの大軍が集結していた。
「そうか。エパミノンダスは、密かにテバイを出てペロポネソスに向かったか」
「はい。僅か三百の兵を率いて」
 アテネの将軍カブリアスは、ほくそ笑んだ。待ちに待った時である。
 彼は、カリストラトスらに対して、こう主張していた。
『正面から戦えば、エパミノンダスの用兵の妙に後れを取るであろう。が、テバイの勢力が四方に拡散すれば、エパミノンダスの目も行き届かず、綻びを見せよう。その隙を見逃さず、すかさずテバイ本国に攻め入り、全てを覆すのだ』
 彼は、ペロピダスが大軍を率いて北上したと聞いたときから、兵の姿を農民や狩人に変えさせて、少しずつ国境地帯に移動させ、密かに大軍を集結させていた。そして、虎視眈々とテバイ本国を一挙に奪わんものと窺っていたのだ。
「よし!エパミノンダスはテバイにはいない。大軍で攻め込むぞ」
「しかし、閣下。カロンやメロンなどが、留守を固めていると聞いております。安易に攻め入って大丈夫でしょうか」
 フォキオンが心配した。
「わははは。エパミノンダスやペロピダスに比べれば、カロンなど怖るるに足りぬ。メロンに至ってはただの猪武者」

 カブリアスは自信満々、大軍を率いて出撃した。警戒の厳しい西のプラタイア方面を避け、国境の東端からボイオティアに侵入した。
 が、国境を侵し、山岳地帯まで進んだ時、突如、周囲の山々がどよめいた。
「うん、なんだ」
「閣下!」
 フォキオンが叫んで指を差した。一斉に兵が現れたのだ。テバイ軍だ。
 が、フォキオンが指さしたのはそれではなかった。その指先が示す方向を見たカブリアスの目は、これ以上ないほど見開かれていた。
 彼方の山の頂に、その人はいた。
 エパミノンダスだ。
「ば、馬鹿な!」
 カブリアスは驚愕した。
 アテネ軍に大きな動揺が走った。敵の裏をかくつもりが、完全に裏をかかれたのだ。
 その様子を見てメロンは笑った。
「はは。カブリアスめ、驚いておるわ」
 彼は剣を抜いて叫んだ。
「今こそ、空き巣のカブリアスに目にもの見せよ!」
 ラッパの音が鳴り響いた。左からメロン隊が、右からデモクレイデス隊が、喚声をあげて駆け下ってくる。
 左右から挟撃されてはいかなる精鋭も堪らない。アテネ軍の隊列はたちまち崩れた。
「閣下!このままでは軍が寸断されてしまいます!いったん退却を!」
 フォキオンが怒鳴ってもカブリアスは、よほどの衝撃を受けたのか、馬上固まったようになって動かない。
「閣下!早く退却を!」
「うむむむ、なにゆえエパミノンダスがここに…」
 いるはずのないエパミノンダスの姿に、彼の頭脳は混乱した。そのため、フォキオンの言葉が耳に届かなかった。
「御免!」
 フォキオンは、やむを得ず、持っていた槍でカブリアスの馬の尻を突いた。馬は、仰天して一散に駆け出した。彼方に消えるカブリアスの姿からは、言葉にならない叫び声が聞こえてきた。
「これで一安心」
 フォキオンは、その落ち延びていく様子を見届けると、自身は踏みとどまり、敵の攻撃を持ち支えた。そして、やがて彼も敵の追撃を振り切って退却していった。
 アテネ軍は敗北した。

 カブリアスは、デケレイアの砦に逃げ戻ると、砦の守りをしっかりと固めた。ここを破られれば、背後からアテネの街が脅かされることになる。
「閣下、エパミノンダスが現れた理由が分かりましたぞ」
 フォキオンは、自身も不思議に思っていたため、密偵を送ってエパミノンダスの現れた理由を探さらせていたのだ。
「おう、どういうことだ。なにゆえ、ここに現れた」
 カブリアスは身を乗り出した。背筋に冷たいものすら覚えていたのだ。
「あれは人形です」
「な、なにっ!」
「テバイ一の陶工に大理石で作らせたとのこと。エパミノンダスここにありと思わせ、我らを驚かせる策略です」
「し、しかし、遠目から見ても生きた人間の肌の色であったぞ」
「大理石に肌の色を塗ってあったとのこと」
 カブリアスは絶句した。
 分かってみれば何ということもない。
(そこまで用意していたのか…。なんと周到な)
「まんまとしてやられたわけか…。で、エパミノンダスは今どこにいる」
「スパルタ軍をあっという間に蹴散らして、もうテバイに帰国しているとのこと」
(何たる神速…)
 彼は、だんだんおかしくなってきた。敵の裏をかくつもりで、まんまと敵に裏をかかれ驚かされた自分が滑稽に思えてきたのだ。そして、敵ながらエパミノンダスを天晴れと思わざるをえなかった。
「ふ。絶好の機を逸してしまったようだな。そうと分かれば長居は無用だ。わしは帰る。フォキオン、後の守備は任せたぞ」
「ははっ!」
 カブリアスは、デケレイアの守備をフォキオンに任せると、自身はさっさとアテネに帰還した。

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大理石人形!考えましたね。
わが街も大理石が採れます。

2008/3/4(火) 午前 6:05 川又まこと 返信する

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カトレアさん、いらっしゃいませ。
ありがとうございます。
美しい彫像が多く作られた、この時代ですからね。

2008/3/4(火) 午後 8:35 Dragon 返信する

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