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アレクサンドロスの帰服(続き)
「アレクサンドロスよ」
「はい」
「このたびは、どうして降伏する気になったのだ?過去に二度、そなたは敗れたが、決して降伏しなかった。形ばかりの誓書を差し出してやり過ごそうとしおった。が、今回は、唯々諾々と降伏してまいった。なぜだ?」
アレクサンドロスは小さく笑った。
「それは当然でしょう。フェライの城下まで、閣下の大軍で攻め寄せられては抗することなどできませぬ」
「ふん。そなたならば、何か企んでもおかしくはあるまい。が、このように我が本陣に出向いてきた。激高した我が将兵に殺されるかもしれないのに、だ。今までのそなたの振る舞いを考えれば、不思議に思うのが当然であろう」
「ははは」
アレクサンドロスは、からからと笑った。
「閣下は、我が妻同様、私を見誤っておられます」
「どういう意味だ?」
「私にも大きな望みがありました。テッサリア全土を支配し、ギリシア世界を制覇するという夢です。これは叔父イアソンから受け継いだものでもあります。その我が夢を実現するために、それを妨げるテバイと戦ってまいったのです」
テバイの諸将は、彼の話に耳を傾けた。一つの真実の響きがあったからだ。
「しかし、三度戦い敗れました。もういけませぬ。帰服し、テバイの天下取りに協力すべきであると思ったのです。野心家にも、それなりの信条があるものでございます」
「なるほど。が、そのような野心家、油断ならぬゆえ、やはり殺すことにするといったら、どうするつもりだ?」
「それはお止めになられた方がようございます。今、私を殺すのは損でございます」
アレクサンドロスは、しゃあしゃあと答えた。
「なぜだ?そなたのような奴、許してはならぬという意見も多く出されたのだ」
「はははは」
アレクサンドロス、緊迫した空気の中、愉快そうに笑った。
「私さえ降伏したということは、テッサリアで今後、野心を抱いて閣下に刃向かう者は誰一人出てこないことになるのです。あのアレクサンドロスでさえ帰服したのだ、我らに何ができようか、という按配です。いわば、この私が重石になるのです。テバイに反旗を翻す者は、この私が率先して討ち平らげましょう。その私を殺すなど、テバイの国益に反することでございます」
エパミノンダスは苦笑した。
(あれだけ刃向かってきておいて…薄気味悪い奴だ)
「そうか。ならば、これからはそなたを酷使するぞ。覚悟せよ」
「勿論、そのつもりで参りました。ご存分に」
「よし!食事が済んだら、とっとと帰れ!我が将兵に斬られないうちにな!」
切りつけられるような言葉を浴びたアレクサンドロス、深々と一礼した。
「ありがたきお言葉」
こうして、エパミノンダスは、フェライを完全に平定した。
事実、アレクサンドロスは、エパミノンダスの存命中、二度とテバイに背かなかった。いや、それからは同盟国として積極的に協力するようになるのである。
テバイの軍勢は凱旋した。しかし、ペロピダスの遺体を守っての凱旋。将兵の顔に明るい色はなかった。紀元前364年の春も終わりのことであった。
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これからの展開にも注目します!!
2008/10/1(水) 午後 6:57
ありがとうございます。
間もなく本章は終わりとなります
2008/10/2(木) 午前 6:59