|
https://www.blogmura.com/ にほんブログ村
↑
ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)
革命成る
「今宵、決起する」
クレオメネス王は、集まった同志を前に決意を表した。
同志といっても、僅か十人程であった。が、王は、これで十分だと思っていた。
「まず、テリュキオンにフォイビス」
「はっ!」「はい」
二人はセラシアにとどまっていたが、王の命により、密かに都に戻って来ていた。それはこれからの役回りのためであった。
「その方らは、伝令に扮し監督官どもの許に参れ」
「伝令…でございますか?」
「そうじゃ。その方らは、戦陣の姿そのまま。監督官どもも信じよう」
「なるほど」
「油断しているところを襲い、皆討ち取れ。一人も取り逃がすな」
「ははっ」
「他の者は、その間、人を寄せ付けぬよう政庁の出入り口を固めよ」
クレオメネスは、ついに動き出した。
人々が発奮して出動する様を見ながら、彼は、亡き父に語りかけていた。
(父上、御心に背いた行動をとり申す。が、これは、父上のためでもあるのです。アギス王を殺したあなたの息子が、アギス王の志を実現することで、父上も地下で歴代の王の前で面目が保てましょう)
監督官たちは、閣議を開催した後に慣例として開かれる会食を楽しんでいた。
昔は、豚の血と塩で作られた黒スープ、硬いパン、そんな粗食ばかりが並べられていたものだ。が、贅沢が習慣となった今、分厚く切られた肉やその他の御馳走が食卓を埋め、海外から取り寄せた葡萄酒が彼らのグラスを満たしていた。
「いや、それにしても安堵したわ」
「左様。クレオメネスに野望あるのではと戦々恐々でしたからな」
「そこはレオニダスの息子よ。一度覚えた贅沢の味は簡単に捨てられるものではない」
「アルキダモスも、殺すことはなかったかも知れんな」
「なんの。やつはアギスの弟。いずれ何を企むことやら。芽は早く摘んでおくものだて」
血塗られた話を、肉を切り分けながら楽しそうに話していた。
「我らに従順なる王。我らに恵み与える大地。まさしく、この世は春ですな」
監督官たちは高笑いした。
その時、衛兵が現れて告げた。
「メギストヌス将軍より伝令が参っております」
メギストヌスも富裕者の一人。監督官たちからすれば、仲間のようなもの。
従って、何の疑いもなく、監督官たちは、
「おう。すぐにこれへ通せ」といった。
そう。この時のため、こういう時のため、クレオメネスは母を嫁がせてまでメギストヌスを味方につけたのだ。
現れたはテリュキオンとフォイビスの二人。
二人は、戦場そのままの埃っぽい姿だった。
「メギストヌス将軍の伝令として参りました」
「おう、何事が起った」
「我が軍は、またもアカイア軍に対して勝利を収めました。その喜びを、一刻も早く国の長老たちに報告せよと」
偽りである。が、勝利の報告に、監督官たちはやんやとざわめいた。
「ご苦労だったな。酒でも飲むがよい」
監督官アギュライオスが鷹揚に勧め、給仕に彼らに酒盃を与えるよう命じた。
「では…」
二人は、酒盃を押し頂くと、ちらりと視線を合わせ、前ににじり寄った。
何気ない所作であるが、心中、必死だった。
僅かな距離、僅かな空間の広狭こそが死命を分かつのだ。
|
クレオメネス王は、役者ですね。
あくどい監督官等をうまく騙しているのですから・・・。
メギストヌス将軍に母を嫁がせていたり用意周到です。
昔のスパルタで並べられていた豚の血と塩で作られた黒スープは
なんか不味そうですね。私自身、固いパンは嫌いだから
腐敗した監督官達に近いかも・・・です。
2010/2/26(金) 午前 1:50
彼には、老練なメギストヌス、
智勇兼備のエウリュクレイダス
優れた側近が固めていました。
さらに、アギス王の不幸を目にして
事を慎重に運ぼうとしたものでしょう
黒スープは、おっしゃるとおり、極めてまずく
現代人が飲める代物ではとてもないようです。
が、それがスパルタの伝統食でした。
物不足の折、強靭な肉体を育て上げるために
限られた食べ物から考えられたものでしょう
2010/2/26(金) 午前 7:23