|
https://www.blogmura.com/ にほんブログ村
↑
ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)
その後-アンティゴノス(続き)
元来、イリュリア人は強敵であった。
後代のゲルマン人やモンゴル人もそうであるが、飢寒の地に耐える部族は、豊かな国に育つ兵に比べると、断然強兵である。貧しいため、近隣と常に争い、鍛え抜かれているからである。
しかし、今回、駆け向かったマケドニア軍は違う。この数年、大敵クレオメネスの軍勢と戦い続けてきたのだ。無敵を誇るマケドニアをとことん追い詰めた軍勢と。従って、マケドニア兵は、心身ともに鍛え抜かれていた。
ために、イリュリア人との戦いにあっても、マケドニア軍は連戦連勝であった。
アンティゴノスは祝宴を張った。
「どうじゃ、メガレアス、我が軍の強さは」
「左様。何やら呆気ないぐらいですな」
「ふふふ。クレオメネスに感謝せねばならぬな」
「そうかもしれませんな。あの戦いを経ることで、我らは一段強くなりました」
メガレアスも感慨ひとしおのようであった。
「まったく、この世の中、何が幸いするか分からんな」
アンティゴノス、愉快そうに笑った。
「明日はよい日になりそうじゃな」
王はしみじみと呟いた。
「それより陛下」
「なんじゃ」
「お体のお加減は…」
メガレアスは、あたりの家臣に聞こえぬよう、声を潜めた。
「ふ。忘れておった。あまりの愉快さに」
「そうでしたか…それはよろしゅうございました」
メガレアスは安堵の息をついた。
「はは。案外、もう少しこの世の春を楽しめるのかも知れんな。ははは、神もときに味のあることをなされるではないか。のう」
「まこと、その通りにございます。陛下は、ギリシア世界の秩序を定めるという大業を成し遂げたのでございます。神がどうして嘉しないことがありましょうや」
「明日はよい日になりそうじゃな」
王は、杯をぐいとあおると、再び同じことを呟いた。
翌日、マケドニア軍は、再びイリュリア人と交戦した。
既に占領地の殆どから追われ、イリュリア人も必死であった。彼らは、故郷が貧しいために攻め寄せるのだ。生きるために他の土地を侵すのだ。故郷には、戦利品を、首を長くして待つ家族がいるのだ。
ために、激戦となった。
「ええいっ!引くな!踏みとどまれいっ!」
アンティゴノスは陣頭で采配を振り続けた。彼の周囲にも矢が降り注いだが、そんなものお構いなしに、何かに取り付かれたかの如く、兵の士気を鼓舞し続けた。
ために、士気上がったマケドニア軍は、次第に押し返し、ついにはイリュリア人の大軍を撃破した。イリュリア人は、遠く故郷の地に退散していった。
野にマケドニア兵の凱歌が轟き渡った。そして、馬上進むアンティゴノスの頭上に、歓呼が降り注いだ。
「陛下!勝ちましたぞ!」
アペルラスなど駆け寄る将たちも、感激を見せていた。
人々の喜ぶ顔に、アンティゴノスも感極まった。
「ああ!今日は良き日だ!」
王は、天を仰いで気持ちよく叫んだ。
が、その時。
「ごふっ」
王はくぐもった声を上げると、途端に、大量に吐血した。
そして、体の支えを失い、どうっと落馬した。
「あっ!」「陛下!」
人々が駆け寄った時、アンティゴノスは、もう虫の息であった。
アンティゴノスは、駕籠に乗せられ運ばれていった。周囲の人々の嘆き悲しむ顔とは対照的に、王の顔は穏やかな笑みに満ちていた。
その日、懸命な手当ての甲斐なく、アンティゴノス三世はついに死去した。享年四十二歳であった。
ときは、紀元前222年も暮れる頃であった。
|
42歳とは意外と若かったんですね。
でも、勝った後で、亡くなったから
気持ちのいい最期ですね。
2011/8/2(火) 午後 9:52
そうですね。
ギリシア制覇、イリュリア征討に成功した後ですから、
きっと本望だったに違いありません。
2011/8/3(水) 午前 6:45