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その後クレオメネス-下(続き)
その夜、クレオメネスは臣下を集めた。全員で十三人。
「諸君。四世王の心は分かった。いや、その取り巻きの重臣や女どもというべきか。とにかく、彼らは、いずれ、この余を誅殺するつもりぞ」
十三人は蒼白い顔のまま、身じろぎもしなかった。
「余は、このまま閉じ込められ、犠牲獣の如くに肥太らされ、殺されるのをいたずらに待つつもりなど、さらさらない」
そう。神に捧げられる犠牲獣は、供え物にふさわしいものとするため、それと決まってから餌をふんだんに与えられ、肥太らされていく。
「…して、王の御心は」
ヒッピダスが家臣を代表して問うた。
「我が剣を振るい、四世王の傍に巣食う悪臣どもを討ち倒し、王室の不正を正し、このエジプト王国に光を取り戻す。どうだ!諸君!」
ここにいるのは、終生クレオメネスと運命を共にすることを誓った者たちばかり。セラシアの激闘にも奮迅を見せた強者どもだ。臆する色を見せる者など一人もいない。
「我ら、王の御心に従い行動するのみ。よろしくお指図くだされ」
その言葉に、王は満足げに頷き、人々の顔を見詰めた。
「余の考えを申す」
クレオメネス王は、とある策を人々に囁いた。
それから数日後、重臣プトレマイオスの使者がクレオメネスの前に現れた。
「我が主人が陛下にクレオメネス王の赦免を願い出たところ、陛下は宥免のお心に傾き、近々赦免なされるとのこと」
「ほう。それはありがたきこと」
クレオメネス、笑っていたが、その声はどこか乾いていた。
「つきましては、王室より、これらのものが下賜されました」
といって、彼が合図すると、酒の瓶に、羊やら果物などなどが山と運び込まれた。赦免の前には、慣例として下賜品が与えられることとなっていたのだ。
これは、プトレマイオスの策謀で、赦免の噂を流してクレオメネスを油断させておく手であった。が、彼は、相手があのアンティゴノスを土壇場に追い詰めた猛者であることを忘れていたようだ。
そのためか、クレオメネスの顔には、冷ややかな笑みが浮かんでいた。
だが、言葉の上は、あくまでも慇懃であった。
「これはこれは…。プトレマイオス殿にはよろしくお伝えあれ。クレオメネスはいたく感謝しておったと」
使者が出て行った後、クレオメネスは、傍らのパンテウスを見て笑った。
「ふふふ。この有様では、本当に犠牲獣にされるようだな」
その言葉にパンテウスは笑わなかった。運命の日が刻々近付いているに他ならないからだ。
「急がねばなりませんな」
「うむ。武器を集めねばならん」
「屋敷の周囲は兵で囲まれております。どうやって…」
「この下賜品を利用するのだ」
「これを?」
「耳を貸せ」
王はパンテウスの耳元に囁いた。
数日後。クレオメネスは、神事を行い、下賜品を用いて犠牲を捧げ、儀式の終わった後にそれを人々に振舞った。
「そなたらも相伴いたせ」
そういって、監視する兵にも肉と酒を勧めた。
兵たちは、最近監視が厳しくなったとはいえ、クレオメネスと会話を交わし、いつも笑いあう間柄になっている。また、赦免が予定されているとの噂に、気持ちが緩んでいた。ために、勧められるがまま、
「ありがたきお言葉。喜んでいただきます」と舌鼓を打ち、酒もごくごく呑んだ。
やがて、彼らはぐでんぐでんに酔っ払い、正体不明となった。
それを見届けたクレオメネス、臣下の者たちに合図した。そう。彼らは少しも酔っていない。酒の如くに見せた水を飲んでいただけであったのだ。
クレオメネスの家臣たちは、眠り込んだ監視兵から剣と槍を奪い、さらに鎧も頂戴して、自身の体を固めていった。
彼ら臣下が武装し終えた時、既に、クレオメネスはラケダイモン王家伝来の鎧兜に身を包み、剣を握り締めていた。
「いくぞ!」
「おおっ!」
クレオメネス、大胆にも、このアレクサンドリアの都のど真ん中で、僅か十三人を率いて決起したのだ。
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下賜品で、兵士を買収するのかと思ったら・・・。
酔わせて、眠っている間に武器を奪うとは・・・。
わずかの人数でうまくいくのか
気になります。
2011/8/3(水) 午前 11:06
これは、覚悟の上での決起
ラケダイモンの王としての意地ですね。
2011/8/4(木) 午前 7:18