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※パルミラ(シリア)のバァル神殿遺跡です。神殿の建築がヘレニズム期以降のようで、様式はギリシアの影響を強く受けています。
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新天地へ(続き)
馬車はやがてバァル神殿に着いた。
巨大なバァルの立像が出迎えた。
ちなみに、この像の前には、無数の子どもの骨が積み上げられている。ギリシア人やローマ人は、これを証拠にカルタゴ人が野蛮な風習に染まっていると非難した。
「カルタゴ人は子どもを生贄に捧げている」
が、この時代、嬰児の生存率は高くない。親が遺体を神に捧げ、供養の代わりにしたとも考えられる。地中海文明に早くから浴しているカルタゴ人が、未開の野蛮に執着していたとは考えにくい。彼らのライヴァル、ギリシア人やローマ人のプロパガンダ、即ち、悪意の喧伝と見るのが妥当であろう。
ハミルカルは、出迎えた神官と親しげに挨拶を交わした。神官は、有力家系から輩出されるのが常なので、バルカ家などの有力家門とは縁続きが多いのだ。
「本日は、いかなる儀でお越しになられましたか」
「それがし、三年余戦地に過ごし、ために神への務めを怠っておりまして…」
「御貴殿は、カルタゴ国家の命運を背負い戦っておられたのです。神も咎めることなどありますまい」
「いやいや」
ハミルカルは手を振った。
「神を忘れていたのも事実。お詫びせねばなりません。また、心中期するところあり。ついては、バァルの神に請願奉らんと思い立った次第」
「それはそれは…まことに御奇特な申し出」
神官はたいそう感心したようだ。
内乱収束の立役者となり、今や飛ぶ鳥落とす勢いのハミルカル。それが得意になることなく、慎ましやかに神の加護を祈ろうとするのだ。
早速供犠に移った。
ハミルカルの従者が牛三頭を連れてきた。犠牲として捧げるためだ。
神官がその牛を殺し、神前に供えられた。
やがて、厳かな言葉が神殿に響き始めた。
その間、ハミルカルは、目をつむったまま身じろぎ一つしない。
一通りの儀式が終わると、神官は退出した。
ハミルカルは、いつまでも動かなかった。
つき従うハンニバル、もじもじし始めた。
子どもは、こんな所で、じっとしていられるものではない。
「父上」
たまりかねて呼びかけた。
が、ハミルカルは祈願に集中していたためか、何も応えない。
「父上父上」
「なんじゃ」
ハミルカルはようやく応えた。が、目はつむったままだ。
「まだでございますか」
「今、神にお祈り申し上げているところ。黙っておれ」
「でも…」
「黙っておれというのに」
「せめて私にも、父上の願いをお聞かせくださいませ。さもないと、体がむずむずしてたまりませぬ」
「願い…か」
ハミルカルは目を開けた。そして、息子の顔を見た。
「ハンニバルよ」
「はい」
「父はカルタゴから出ていく所存」
「えっ、どうしてでございます!」
少年は驚いた。
「このままではいけない」
「なにが…でございます」
「このままではこの国は滅んでしまう」
「この国が滅ぶ…」
「手をこまねいていれば、間違いなくローマに滅ぼされよう」
「ローマとの戦いは終わったのではないのですか」
「これからだ」
「これから…」
「これから始まるのだ」
ハミルカルは確信を言葉に込めた。
彼の目には何が見えていたのか。少なくとも、彼の中では戦いは終わっていない。
しかし、カルタゴ人が彼の言葉を聞けば、暗澹となったに違いない。平和を喜び、これから平和を楽しもうとしている矢先なのだ。
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「ポンペイ1 ポンペイ展 〜世界遺産 古代ローマ文明の奇跡〜 シルクロードの西の起点・ローマ帝国(イタリア5)
」をアップしたらあなたの記事が紹介されました。
興味があるのでやってきました。
'''「道をゆく 〜シルクロードと遍路道〜」'''というブログをほぼ毎日公開しています。
私は文明や歴史のある場所を中心に、世界各国を旅しています。
2004年と2008年に西安からトルコ・イスタンブールまでの10カ国を2度にわたって、自転車・バス・ラクダ・馬、時にはヒッチハイクもして旅しました。あわせて248日の'''「シルクロード取材ひとり旅」'''です。
シルクロードの延長線のイタリア、エジプト、中近東も訪れました。
また、四国歩き遍路を三度結願しました。
その様子を'''7万枚'''以上の中から選んだ写真とエッセイでリアルタイム的にくわしく紹介しています。
テレビや雑誌等では観られない写真や情報もたくさんあります。ぜひ訪問してみてください。お待ちします。
2011/3/6(日) 午後 2:41 [ moriizumi arao ]
ご訪問ありがとうございます。
御自身で歴史上の舞台となった地に赴かれるとは、素晴らしいことですね。また羨ましい事であります。
私も、ギリシアはまわりましたが、とてもそこまで身軽ではありません。
折りをみて、訪問させていただきます。
2011/3/7(月) 午前 7:40
カルタゴを離れる前に、思い残す事なきよう、祈りを捧げているという感じでしょうか・・・。
イベリア(スペイン)に行くんでしたね。
2011/10/19(水) 午後 8:59
イベリアに向かいます
2011/10/20(木) 午前 8:10