新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

第5章アルプスの章

[ リスト ]


https://novel.blogmura.com/novel_historical/ にほんブログ村

ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)



 負傷(続き)
 ハンニバルは、戦局が勝勢に傾くと、二百騎ほどを連れて、小高い丘にあって全軍を采配していた。傍らには、ボミルカルの子ハンノンが、そして、マニアケスが何事もなかったかのように控えていた。
「やや!あれは!」
 ハンノンが異様な声を上げた。
「総司令!敵将が逃げていきますぞ!」
 眼下に、東の空へ急ぐローマ騎兵の一隊を、あざらかに捉えることができた。
 間髪容れず、指揮官は命じた。
「追え」
「は!」
 紅顔の将ハンノンは勇躍し、百騎を引き連れ、一散に駆け下った。



 ハンノン率いる騎兵隊は、二手に分かれ、逃げ行くスキピオの一隊の両側から迫った。
 挟み撃ちにして捕獲せんとの肚であろう。
「そこにあるは敵将スキピオであろう!我はカルタゴ行政長官ボミルカルの子ハンノン!勝負せよ!」
 ハンノン、ギリシア語で高々名乗りを上げた。
 だが、スキピオは、それに無視を決め込んだ。
 ならばと、ハンノンはさらに二の矢を放った。
「味方を捨て命惜しみ真っ先に逃げるが将の振る舞いか!恥を知るならば勝負せよ!」
 若者らしい熱情で嘲笑い、辛辣な毒を放った。
 そう。人に痛手を与えるは武器だけではない。
「むう…なんだと」
 思わず振り返ったスキピオの面には、明らかな血潮が差していた。
 傍から見るに、いたって大人しい人物の彼。その彼も名門の子。元来の名誉心が、むらむらと闘争心を掻き立てたに違いなかった。
「おのれ…小賢しや…」
 スキピオは、怒りをくわと見せ、手綱をぐいっと引いた。
「わっ!」「あっ!」
 急停止したため、後続の騎兵は、あわや執政官の馬にぶつかりそうになった。



「なりませぬ!父上!」
 先を駆けていたプブリウス、馬首巡らせ、急ぎ父の馬の許に寄せてきた。
「止めるな」
「ここで足止めを喰らっては!」
「懲らしめてやる。敵将と戦うは武人の誉れ」
「父上!今はそのような時ではありませぬ!」
「プブリウス、そなたはここで見ておれ」
 スキピオは、馬腹を蹴るとハンノンに向かって駆けだした。
「父上!」
 スキピオらしくないと言えば、これほど彼らしくないこともなかったろう。
 常に冷静沈着、かつ、大局を誤ることのなかった彼。
 その彼も、思わぬ遭遇戦、思わぬ敗戦に、平静を失ったものかも知れなかった。
「父上っ!お戻りくださいっ!」
 プブリウス、懸命に呼び止めたが、父スキピオは一散に突進した。


.
アバター
Dragon
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

Yahoo!からのお知らせ

友だち(3)
  • 時間の流れ
  • ダイエット
  • JAPAN
友だち一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事