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負傷(さらにさらに続き)
「父上!大丈夫ですか!」
プブリウスは馬から飛び降りると、崩れそうになる父の体を支えた。
「矢を抜きますぞ」
ぐいと引き抜くと、血が溢れてきた。
出血のため、スキピオの顔がみるみる青ざめていく。
プブリウスは、袖を千切ると、それを包帯代わりに父の足をきつく巻き止血した。
「父上、こうなっては退却するほかありませぬ」
「…うむ」
スキピオも頷くしかなかった。足に重傷を負っては打ちもの振るうこともできない。
プブリウスは、父を馬に押し上げると、自身も馬上に戻り、自分と父の手綱をとりつつ駆け始めた。
ローマ軍は、執政官スキピオ以下、僅かな手勢だけを連れ、東の方角指して逃れるしかなかった。
こうして、ローマとカルタゴの緒戦は、ハンニバル軍の圧勝に終わった。
「ハンニバル閣下万歳!」
「カルタゴ国家万歳!」
カルタゴ兵の凱歌が野に轟いた。
ハンニバルは、将兵の歓呼の中を悠然と進んだ。
だが、その顔には笑みはない。明日の戦いを、はや心に描いていたものであろう。
(ここから…ここから本当の戦いが始まる)
交戦した両軍の兵力から見るに、これは小さな遭遇戦に過ぎない。
だが、この勝利の意味は小さくない。
カルタゴ軍勝利の報は、瞬く間に北イタリア全土に広まったからだ。
「ハンニバル強し」
カルタゴ軍総司令官たる彼の名声は否応なしに高まったのだ。
パドゥス川流域のガリア人がこぞってハンニバルの許に駆け付けて来ることとなった。
そして、ハンニバルの言葉通り、これからが本当の戦いの始まりであった。
第5章アルプスの章終り。第6章カンネーの章へ続く
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