新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 議員たる者商売するべからず 
 紀元前218年晩秋。ローマ。
 北方でハンニバルと対峙している戦時下にも拘らず、ローマの市民は、普段と変わらぬ日常を送っていた。
 いや、話題となっていたのは、戦争のことではない。
「フラミニウス殿が、また、ぶち上げられたぞ」
 平民大衆は、おらが頭領の挙に興奮していた。
 とある法案を巡り、市井は沸騰していたのだ。
 その内容は、以下の如き簡素なものであった。
『元老院議員とその子は、300アンフォラ(8000リットル)以上積載できる船舶を保有してはならない』



 ガイウス・フラミニウスは、監察官(ケンソル)退任後も、一向衰えることなく、活発に活動していた。
 フラミニウスは、祖先に有力者を持たない『新人(ホモ・ノウス)』である。
ローマ政界において、新人の立身は容易でなかったが、彼は必死にのし上がってきた。
 そして、紀元前232年、護民官(トリブヌス・プレビス)に就任するや、常人離れした活躍を見せ始めた。
 まずは、念願の、平民の処遇改善に取り組んだ。
「プレプス(平民)が貧しいのは土地を持たぬため」
 そこで、貴顕市民(パトリキ)の反対を押し切り、ガリア人から奪った土地にプレプスを入植させた。
 土地問題は、平民階級長年の宿願。それに解決の道筋を示した格好だ。
 平民階級は彼を熱烈に支持した。
 護民官を務め上げた後、栄えある元老院議員となった。



 平民台頭の世とはなっても、元老院こそが政治の中心。
「ここで国政改革の実を上げよう」
 彼は意気込んだ。
 ところが、元老院では、まだまだ貴顕市民(パトリキ)が幅を利かせていた。名門一統が、それぞれ議場の一角を陣取っているのだ。
 フラミニウスら平民出身議員はごく少数で、場違いな感は否めない。
 露骨に白眼視してくる者も多かったし、事実、彼の提案は悉く強力な反対に遭った。
「これはどうにもならぬ」



 フラミニウスは思案した。
「パトリキの理解ある人々とも手を携えねばならぬ」
 民衆に理解あるスキピオやパウルスという中間派との提携に積極的に動いた。
 粘り強い交渉と提携の術を尽くし、フラミニウスは、元老院における多数派形成に成功した。結果、彼の前に栄進の道が大きく開かれることとなった。
 紀元前223年に執政官(コンスル)に就任し、ガリア討伐に功績を上げ、紀元前220年には、ついに最高官たる監察官(ケンソル)にまで登り詰めた。
 監察官フラミニウスは、どしどし政策を遂行した。
「戦いのためだけではなく、生活を豊かにするためにも道路を敷かねばならない」
 莫大な資金を投じ、ローマと北方の入植地を結ぶフラミニウス街道を整備した。紀元前220年のこと。
 そして、同じ年、市民の支持を確固たるものにすべく、首都ローマに巨大な娯楽施設である闘技場(キルクス・フラミニウス)を建設した。
 ここに、フラミニウスの権威は絶頂に達したといえよう。



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