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マニアケス帰る(続き)
「残念だな」
文字通り残念そうに言うスキピオの視線は、この時、早くも東方に向いていた。
というのも、対カルタゴ戦終結の頃と前後し、マケドニア王フィリッポス五世が、アジア方面で着々と勢力を拡大しているとの報が入って来ていたからだ。
(これからは東方が戦いの舞台となる)
アレクサンドロス大王の後継者たち、即ちヘレニズム諸大国との戦いであった。
事実、友邦のペルガモン王国や、ギリシア本土でフィリッポスに抵抗するアイトリア同盟から、援軍の要請が頻々と入って来ていたのだ。
(この者がいれば)
そう思ったに違いない。
だが、今は諦めるしかない。
「ならば、そなたに土産を取らせよう」
スキピオは、いつものからっとした笑顔を見せた。
「土産?」
マニアケス、怪訝な顔をした。
和平成ったとはいえ、敵国の使者に土産まで与えるとは、ということだろう。
「ティロ、あの者たちを呼んで参れ」
「は」
執事は頷くと、扉の陰に隠れ、やがて、二人の者を連れて戻って来た。
「ささ、こちらへ…」
二人は、異国の人なのか、通訳を介して頷き、動きもぎこちなく、どことなく怯えた風であった。
だが、その姿を認めると、
「あっ!」
マニアケスが素っ頓狂な声を上げた。
現れたのは、ハンニバルの妻イミリケとその子ハミルカルであったからだ。
「奥方様!御曹司!」
思わず叫んでいた。
「え…」「あ…」
二人は、思いがけぬ再会に唖然とした。
が、ハンニバル股肱の臣の姿を間近に認めると、途端にぽろぽろと涙をこぼした。異郷に久しくあって、ようやくハンニバルの身近な人と再会したからだ。
「マニアケス殿…」
イミリケはよろよろと近づき、マニアケスとひしと抱き合った。
しばらく喜びに浸るマニアケス、涙に濡らした顔で振り向いた。
「閣下、これは…」
「驚いたか」
スキピオ、にやりとした。
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