新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

第12章アジアの章

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※↑ハンニバル・バルカの胸像です。

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 待ち人来る(続き)
「陛下」
 艦隊司令官ポリュクセニダスが現れた。
 ロードス出身の彼は、大王の進出を渋るロードス相手に、地縁血縁にもの言わせ、大艦隊をエーゲ海域に引き入れる事に成功し、大王のイオニア攻略に多大な貢献をした。
「あの御仁がやって来ましたぞ」
 ポリュクセニダスは頬を紅潮させていた。




「来たか」
 大王の瞳も輝いた。
 それは待ち人である。密かに招請していた人物が、帝都アンティオケイアを経て、こちらに海路やって来たという。都にいる次男セレウコスより先に通報が届いていた。
(見知らぬ人との出会いに、このように胸ときめくのはいつ以来であろうか…)
「謁見の間に通せ」
「ははっ」




 大王はディアデマ(王環)をきりりと巻き直すと、謁見の間に入り玉座に着いた。
 やがて、その人物が入口に立った。
 隻眼である。深紅のマントをまとい、一人の美貌の人物を連れている。
 すっすっと前に歩んで来る。
(これがあの著名な…)
(大ローマを滅亡の淵に追い詰めた…)
 重臣たちも興味津々の視線を注いだ。
 その人物は大王の前に来ると跪いた。
 これが、ヘレニズム王朝の君主の前に出る作法。ペルシア宮廷の流儀を、アレクサンドロス大王がそのまま取り入れたものである。




「ハンニバルにございます」
 その人物は言った。
「早速の拝謁を賜り、ハンニバル、恐悦至極に存じます」
 流暢なギリシア語で挨拶した。




「顔を上げられよ」
 大王は玉座の上に優渥な笑みを浮かべた。
「貴殿の英名、地中海世界に轟いておる。先の戦いは敗戦に終わったが、それは祖国の後押しの少なさによるもの。余はそなたに必要なもの全てを与えるであろう」
 アンティオコスは、いきなり絶大な信任を見せた。
 その言葉に、ハンニバルも隻眼を僅かに見開いた。
「ありがたきお言葉。これよりハンニバルは陛下の臣。微力を尽くし、御国のために邁進する所存」
 それは、アレクサンドロス再来と謳われるアンティオコス、そしてアレクサンドロスに劣らぬ稀代の名将ハンニバル、両者が手を携えた瞬間であった。



第12章アジアの章終わり。第13章世界帝国の章へ続く。


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