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※↑エフェソス遺跡です。前方は古代は海でしたが、堆積作用により陸地になってしまいました。This file is licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 Unported license.
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イオニアの海を見渡す
その頃、ポリュクセニダス艦隊はエフェソスに停泊していた。
「そうか…海賊たちは四散してしまったか」
提督ポリュクセニダスは顔も上げなかった。
イオニア地方沿岸の海図を凝視したままだ。
「はい。レギルスの猛烈な追撃にテオスの船が大破されるのを見て肝を潰した模様」
報告していたのはニカンドロス。
確かに、陸上の戦いそのまま船から船へ飛び、駆け回るローマ兵の勇猛ぶりを目のあたりにすれば、海千山千の海賊どもも仰天するに違いない。
海賊に牽制させ、ローマ艦隊を忙殺させ消耗させる、これがポリュクセニダスの意図であったが、それは見事に空を打ったといえよう。
「ふん、そうか」
それほど期待を掛けていた訳でもないのか、ポリュクセニダスは鼻先であしらった。
「戦局の焦点は絞られたな」
提督はぽつりと言った。
確かに、それははっきりして来た。
ローマ艦隊はテオスに、ロードス艦隊はサモス島に、さらにペルガモン艦隊がキオス島西岸沿いを南下しているという。つまり、引き寄せられるように、全ての海上勢力がこのイオニアの海域に集結しつつあった。
「先に動かねばなりません、提督」
そう勧めたのはマニアケスであった。
三方より迫る勢力を待っていては、このエフェソスを前に戦うしかなくなる。母港に追い詰められる格好になり、窮屈な戦いを強いられるのは必然。何よりも味方の士気も奮わぬことになろう。
「うむ…」
提督の視点は地図上のある地点を見詰めていた。
「ここにおびき寄せるには、どうすれば良いと思う?」
巨漢の提督は、そんな風に訊いた。
「テオスに攻めかかる、そのように装うが宜しかろうと存じます」
マニアケスは答えた。
「ふむ…そなたもそう思うか。ならば海賊どものしくじりも…」
「物怪の幸いかと存じます」
女密偵は妖しい笑みを浮かべた。元々、逆境に鍛え抜かれた女。失敗をばねに次の勝機を窺うことは彼女の本能。
「うん」
ようやくポリュクセニダスは顔を上げた。
そこには自身の笑みが戻っていた。
「では、陛下にそのようにご説明申し上げるとしよう」
そう。アンティオコス大王は、サルディスから再びここエフェソスに行幸していた。
ただ、それは『行幸』という体の良いものではなく、居ても立ってもいられなくなり、サルディスから駆けつけて来たというのが実相。来る海上決戦が、この大戦の帰趨を決する、否、帝国の命運を左右する事態となるのは、大王軍の首脳たちの誰にも分かっていたからだ。
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