新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 ミュオンネソス前夜 
 紀元前190年九月。とある夜。
 レギルス率いるローマ艦隊はテオスに留まり、日々調練を繰り返し、戦機を虎視眈々窺っていた。そして…。
「なに。ポリュクセニダス艦隊が出撃したと」
「はっ、全艦隊、こちらに向かっております」
 急を告げていたのはミルト。
「よし、直ちにロードス艦隊に合図を送れ」
 エウダモス率いる艦隊も、今か今かと待ち詫びている筈だ。
 だが、ロードス艦隊は南のサモス島にあり、ここテオスから四十km程離れた地点にある。合図とは一体…。




「『あの地点』で合流ですね」
「…もう隠す必要もあるまい」
 レギルスは苦笑いを浮かべた。
 スキピオの秘命、レギルスの粒々辛苦の工夫、ミルトの探索、エウダモスら同盟国将士の協力、それら全精力を一箇所に集中するのみだ。
「我らが向かうはミュオンネソス岬」
「はっ、かしこまりましてそうろう」
 ミルトは駆け出し、山上に向かい合図を送った。
 すると、山頂に火がぼうと灯り、点滅し出した。




 エウダモス率いるロードス艦隊は、サモス島の西へ迂回し、北岸に出ていた。
 島の東に回ると、エフェソスの眼前に出てしまうことになる。当然、その海域は大王軍の警戒が厳しいからだ。
「すぐさま駆けつけるようにしておかねばならぬ」
 戦場は、サモス島からまっすぐ北に進んだ海域。
 当時、船は陸地沿いに航行する。内燃機関など想像の片隅にもないこの時代、船の航行は専ら風力人力に頼るに過ぎず、遠洋航海など不可能。荒波を越えて、というのは命取りになりかねない。
(だが…今は違う)
 ミュオンネソス岬に最短距離で到達することこそ先手必勝。名将ポリュクセニダスの機先を制することとなる。
(ポリュクセニダス…祖国に仇なす男よ。今度こそ貴様を倒す!)




「提督!合図です!」
 水兵が叫んだ。
「光ったか!」
 エウダモスも舳先に走った。すると、大陸の一点で光が明滅している。
 そう。伝令が来るのではない。灯火信号である。遠くにあっても、水兵の彼方、何も遮るもののない海が隔てているだけであることからできる通信手段。
「全艦隊出撃だ!」


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