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ミュオンネソス岬の海戦−セイレーン再び
耳をつんざくような喚声、断末魔の叫び。大王軍の艦隊司令官ポリュクセニダスは、まさしく阿鼻叫喚の渦中にあった。
「これまでか…」
彼は呟いた。
彼を守る精鋭たちは、押し寄せるローマ兵、ロードス兵と激しく斬り結んでいる。
「む…」
彼は目を見開いた。
いつの間にか眼前に一人の者が跪いていたからだ。
「そなたは…」
「マニアケスにございます」
妖しい美貌を輝かせた彼女の顔が現れた。
「ふふ」
ポリュクセニダスは苦笑いを浮かべた。
「そなたも逃げ遅れたのか。…だが、汝ならばどうにでもなるであろう。速やかに退散しハンニバル殿の許に帰るがよい」
提督は、絶望の極みにあって悠然と諭した。後事をハンニバルとマニアケスに託す想いなのであろう。
「いえ」
マニアケスは首を振った。
「提督をお救いするため参上しました」
「ほう…まだ逃げる道は残っているか」
「はい。こちらに」
彼女がいざなって歩きかけたその時、ローマ兵数人がわらわらと立ちふさがった。
グラディウス剣の切っ先をびしと向けた。
「総大将ポリュクセニダスであろう!潔く降伏せよ!」
その途端である。
真っ白な煙が急に辺りに立ち込めた。
「な、何だ!」
次の瞬間、
「うっ」「げっ」
ローマ兵は当て身をくらい、その場に倒れた。
煙はあっという間に甲板全体に立ちこめた。しびれ薬が仕込まれていたらしく、ローマ兵にロードス兵、そして大王軍の兵も区別無く倒れていく。
マニアケス、一部始終を冷然と見詰めていた。
「味方には悪いが…今はやむを得ませぬ。提督、袖で鼻を塞ぎこちらに」
「うむ」
ポリュクセニダスは袖で口元を押さえ、マニアケスの後に続いた。
こちらロードス艦隊エウダモスの旗艦。
「なにっ、ポリュクセニダスを取り逃がしたと!」
「はっ、どうやらどさくさに紛れ逃げ出した模様」
「うぬ、あの国賊め。なんと逃げ足の速いやつ…」
その時、エウダモスの瞳を大きく広がった。
視線の先に、小船がすうっと通過し、それに二人。
一人は体躯堂々、絢爛豪華な鎧兜に包まれている。
「いた!ポリュクセニダスだ!」
舷側に駆け寄ると、
「弓兵!右舷に集まれ!」
命令にロードス兵は舷側に居並び、弓に矢をつがえた。
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