新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 スキピオの要求(さらに続き)
 ヘラクレイデスは、最後に、ギリシア人らしく歴史の教訓を添えた。
「何人も、人間の身でありながら過度に運命を試すべきではないと存じます。なぜならば、そのような野望を抱いた国々は、いずれも破滅の憂き目を見たからにございます。ペルシア帝国は、ペルシアから遠く離れたギリシアへの野心を抱いたばかりに、衰亡を辿ることとなりました。今やペルシアの全てはギリシア人の支配下に置かれております」
 要は、ローマ国家は、領分の果てとしてヨーロッパの端までとせよということ。即ち、トラキア以西、ヘレスポントスから西の領域に留まれ、という意味である。
「ですが、陛下はこうも仰せでした。それでもローマの人々が、アジアのどこかを掴み取りたいと希望するならば、その場所を明示してほしい、と。その希望を叶えるため、努力を惜しむまい、と」
 即ち、イオニアの一部ならば割譲しても差し支えないという申し出であった。




 ルキウスは、ちらと兄スキピオを見て確かめると、ヘラクレイデスに向き直った。
「折角の申し出ながら…」
 ルキウスは微笑した。
「まず、戦費についてであるが…。今回の戦いがアンティオコス大王が引き起こしたことは万人承知の事実。それゆえ、半額ではなく全額でなければならない。また、戦費だけでは足りぬ。ローマ人将兵、同盟国の将兵の犠牲も少なからず。賠償金の支払もなければならない」




 噛んで含めるように述べてから、
「そして、都市の解放の範囲であるが、イオニア地方やアイオリス地方だけでは全く不足である。タウロス山脈以西全てから撤退すべきである」
「タウロス以西…」
 ヘラクレイデスは絶句した。エフェソスのあるイオニアはおろか、サルディスを含むリュディア全土を失うことを意味する。
 その顔に向かって、ルキウスは大きく頷いた。
「なぜならば、その地域にはあなた方の支配の下、苦しんでいるギリシア人の都市が多くあるのだから」
 ローマ軍の遠征の大義名分がギリシア諸都市の解放にある以上、これは正当な要求である、だからこそギリシア人諸国がローマに味方しているのだと付け加えた。




 提案とあまりにかけ離れた要求に、ヘラクレイデスは反駁する言葉もなく、しばし呆然としていた。
「…ともかく貴国の要求は陛下に申し伝えます。ですが…」
 ヘラクレイデスは、スキピオ・アフリカヌスの方を見た。
「そちらにおわすアフリカヌス閣下は、かつて寛容を旨としてカルタゴと和平を結ばれたとか。まことに英傑の振る舞い」
 口を極めて称揚し、
「是非とも、このたびもその寛容をあらんことを。ならば、我が陛下もきっと感謝し、以降、ローマの友人となり、ローマの利益のために終生図ることでございましょう」
 精一杯、愛想を述べておいた。
 スキピオは、それに対して軽く会釈してみせただけであった。


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